


令和8年4月1日以後開始事業年度より、外形標準課税課税対象法人(以下、「対象法人」)の範囲が拡大されました。
今回は当該改正の内容と判定のポイント、実際に対象法人となった場合の軽減措置などについて解説します。
1.外形標準課税の概要・改正の内容
外形標準課税とは、事業税の計算にあたって所得以外の外形的な要素(報酬給与額・純支払利子・純支払賃料、資本金等の額)を考慮する制度です。
平成16年度に資本金1億円超の大法人を対象に導入され、その後段階的に対象法人の範囲は拡大されてきましたが、実際の対象法人数は平成18年度をピークに減少傾向で、令和2年度時点では全法人のうち0.76%のみとなっております。

(https://www.soumu.go.jp/main_content/000828250.pdf)
対象法人数減少の背景にあるのは、資本金を資本剰余金に振り替える「項目型振替減資」とされており、その対策として2年連続で改正がなされました。
令和7年4月1日以後開始事業年度の改正(以下、「前年改正」)では、“既に”対象法人であった法人が外形標準課税回避のために項目型振替減資を行うことへの対策で、
前事業年度に対象法人である、かつ、払込資本の額が10億円を超える場合は、資本金が1億円以下であったとしても対象法人に含まれれることとされました。
対して、今回の改正はこれまで対象法人となったことがない法人も射程に収めたものになっており、払込資本の額(会計上の資本金と資本剰余金の合計額)が50億円を超える親会社(特定法人)との間に完全支配関係がある法人のうち、事業年度末日において払込資本の額が2億円超の法人が対象法人に加えられました。
【特定法人との間の完全支配関係 具体例】

(https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/tax/gaikei_kaisei2)
ケース1は判定対象となる法人の親会社1社が特定法人に該当する場合、
ケース2は複数の親会社すべてが特定法人に該当する場合が例示されています。
法人税法上の完全支配関係がある“親会社”が特定法人であるかによって判定されるため、ケース1右側の親会社・ケース2のP社は適用対象外となります。
また、ケース2の場合において、仮にA社・B社のいずれかが特定法人に該当しないときは、特定法人との完全支配関係はないため、本制度による外形標準課税の適用はないこととなります。
2.「払込資本の額」とは
本改正の特徴として、判定基準となる「払込資本の額」が会計上の資本金と資本剰余金の合計額とされており、資本金等の額といった税法特有の資本の概念が登場しないことが挙げられます。(前年改正も同様)
(地方税法72条の2第1項1号ロ(1)→地方税法施行令10条の2→地方税法施行規則3条の13の4→会社計算規則76条2項3号または3項3号)
会計ベースで判定することの是非については地方法人課税に関する検討会でも議論がなされ、租税法律主義の観点から会計上の概念をそのまま採用することを問題視する声もありました。
しかし、本検討会では「項目型振替減資」への対応が大きなテーマとなっており、そのテーマから考えると、会計上の資本金+資本剰余金・資本金等の額のいずれも妥当であること、納税者及び課税庁の事務負担が考慮すると会計の金額をそのまま使う形が好ましいことから、最終的には資本金+資本剰余金を基に判定されることとなりました。
3.外国法人への適用
本改正における「特定法人」から外国法人を除く規定は存在しないため、外国親会社の日本支店で、外国親会社の払込資本の額が50億円超である場合は本改正の対象となります。
外国法人の場合、払込資本の額は資本金+資本剰余金に準ずる金額を円換算して計算することとなります。資本剰余金に準ずる金額については、「当該外国法人の本店又は主たる事務所若しくは事業所の所在する国の法令に定めるところを勘案して判定すること」とされていますが、それ以上の記載はありません。
(地方税取扱通知 83頁~)
ただ上記2の通り、払込資本の額は会計上の資本金と資本剰余金の合計額とされていることから、外国法人についても内国法人と同様に会計上の金額をそのまま利用して差し支えないと考えられます。
なお、外国法人の日本支店において外形標準課税の適用がある場合にはいくつか特有の論点があるため注意が必要です。(過去ブログ)
4.負担変動軽減措置(2年間限定)について
令和8年4月1日から令和10年3月31日の間に開始する事業年度については、本改正により新たに対象法人となった場合の負担変動軽減措置が設けられています。
内容としては、外形標準課税を適用した場合の事業税額が、外形標準課税の適用しなかった場合の事業税額(比較法人事業税額)を超える場合に、その超える部分の一定割合が控除されるというものです。(改正法附則第8条第2項・3項)
令和8年4月1日~令和9年3月31日開始事業年度・・・(令和8年度基準法人事業税額-比較法人事業税額)✕ 3分の2
令和9年4月1日~令和10年3月31日開始事業年度・・・(令和9年度基準法人事業税額-比較法人事業税額)✕ 3分の1
外形標準課税は通常の所得計算とは異なる外形的な要素で税額を算出する制度であるため、申告に当たっては事前の準備が必要となります。
「払込資本の額」がポイントとなりますので、まずは自社・親会社の決算書を確認し、本制度の対象となるかをチェックすることが重要です。
なお、前事業年度が外形標準課税の対象法人である場合には、法人税において中間申告義務がない法人であっても中間申告の義務が発生することとなります。
そのため、本改正により外形標準課税の対象法人となった場合は、令和9年度以降の中間申告に注意が必要です。
あすか税理士法人
松本 大和