


外国の取引先、外国子会社へ支払う使用料について源泉徴収が必要か否かという相談を受けることがよくあります。
使用料は日本の国内法、OECDモデル租税条約、各国と日本間の租税条約によって取り扱いが異なり混乱することが要因だと感じます。
今回は使用料の取り扱いについて解説したいと思います。
国内法に規定する使用料の範囲はこちらのブログに詳細を記載していますのでご確認ください。
このブログでも記載がありますが、使用料は所得税法第161条1項第11号において、国内において業務を行う者から受ける次に掲げる使用料又は対価で当該業務に係るものは国内源泉所得に該当するとされ、所得税法212条1項においてこれらの所得は源泉徴収の対象となることが規定されています。
「国内において業務を行う者から受ける者から受ける使用料で当該業務に係るもの」と規定されていることから、使用料が日本国内で使用された場合に国内源泉所得に該当するという「使用地主義」を採用していることがわかります。
日本国内で使用料のやりとりを行う場合は源泉徴収をしないケースがほとんどだと思いますが、非居住者(外国法人を含む)へ使用料の支払を行う場合は20.42%(租税条約による減免あり)の源泉徴収が必要となります。
OECDモデル租税条約12条の冒頭において、「Paragraph 1 lays down the principle of exclusive taxation of royalties in the State of the beneficial owner’s residence. 」と記載されています。
この内容からOECDモデル租税条約では受益者の居住地国による排他的課税を原則としていることが読み取れます。
また、Paragraph5において、「The Article deals only with royalties arising in a Contracting State and beneficially owned by a resident of the other Contracting State.」と記載されています。
つまり、使用地(源泉地)ではなく、権利者の居住地国に課税権を認める内容となっています。
OECDモデル租税条約はページ数が多いですが、使用料の条項を確認する限り使用料がどこで発生したか(源泉地)を定義する規定が見当たらない点も重要と感じます。
このことから、OECDはモデル租税条約では支払者が源泉徴収を行うという概念がないという判断となります。

例えば、日本法人が外国で登録されている特許権の使用料をアメリカ法人へ支払う場合と香港法人へ支払う場合に取り扱いがどのように変わるかを理解することが重要です。
日米租税条約12条1項
「一方の締約国において生じ、他方の締約国の居住者が受益者である使用料に対しては、当該他方の締約国においてのみ課税することができる」
日香港租税協定12条1項
「日米租税条約と同内容となっています」
日香港租税協定12条2項
「1項の使用料に対しては、当該使用料が生じた一方の締約者においても、当該一方の締約者の法令に従って租税を課することができる。その租税の額は、当該使用料の受益者が他方の締約者の居住者である場合には、当該使用料の額の5%を超えないものとする」
日香港租税協定12条5項
「使用料は、その支払者が一方の締約者の居住者である場合には、当該一方の締約者内において生じたものとされる。」
上記を比較して頂ければわかりますが、日米租税条約には日香港租税協定の2項、5項の規定がありません。
つまり米国ではOECDはモデルにならう形で特許権を所有する者の居住地国でのみ課税されることとなり、日本法人がアメリカ法人へ特許料を支払う際に源泉徴収が不要という判断ができます。
一方で香港法人へ支払う場合は12条2項の規定により使用料が生じた国(支払国)においても課税権が生じることになります。
この場合日本に課税権が生じることになりますが、日本は使用地主義を採用しているため特許の使用地が外国であれば日本国内法では2項のみでは課税ができません。
ですが5項において「使用料が支払者の居住地国で発生したものとみなす」という規定が置かれていることから、使用料が支払国(日本)において生じたものとみなされ(置き換え規定)、国内源泉所得として日本で源泉徴収を行う必要が生じることとなります。
いかがでしょうか。国内法、OECDモデル租税条約、各国の租税条約それぞれで内容が微妙に異なることが理解できたと思います。
特に日香港租税協定のように、日本の国内法を置き換える規定を設けている租税条約が非常に多いです。
使用料を海外へ支払う場合には必ず租税条約の規定を確認し、源泉徴収の有無をご判断ください。
あすか税理士法人
【国際税務担当】街 有帆

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