


既にご承知の方も多いと思いますが、2024年9月、企業会計基準委員会(ASBJ)は、「リースに関する会計基準」(企業会計基準第34号、以下「基準」)及び「リースに関する会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第33号、以下「適用指針」)を公表しました。最終回の今回は、新しいリース会計基準適用時の経過措置について確認したいと思います。
1.現行のリース会計基準適用時の経過措置の取扱い
現行のリース会計基準を新たに適用する際にも経過措置の取扱い(簡便的な取扱い)が設けられていました。今回、新しいリース会計基準を適用するにあたって、これらの経過措置が認められなくなると、リースの会計処理についてのコストが増加することが想定されます。そこで、従来認められていた簡便的な取扱いについては、引き続き認められることとされました(適用指針.BC163)。
(1) リース取引開始日が現行のリース会計基準適用初年度開始前である所有権移転外ファイナンス・リースに関する借手の取扱い
現行のリース会計基準(適用指針)の定めによって、現行のリース会計基準適用初年度の前期末における未経過リース料残高または未経過リース料期末残高相当額を取得価額とし、現行のリース会計基準の適用初年度の期首に取得したものとしてリース資産を計上する会計処理を行っている場合は、この処理を継続することが認められています。この場合、現行のリース会計基準適用後の残存期間における利息相当額については、新しいリース会計基準(適用指針)の定めによらず、利息相当額の総額をリース期間中の各期に定額で配分することができます【適用指針.113】。
また、現行のリース会計基準(適用指針)の定めによって、引き続き通常の賃貸借取引に係る方法に準じて会計処理を行っている場合は、新しいリース会計基準の適用後も当該会計処理を継続することが認められています。この場合は、リース取引開始日が現行のリース会計基準の適用初年度開始前のリース取引について、引き続き通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理を適用している旨及び所定の事項を注記する必要があります【適用指針.114】。
(2) リース取引開始日が現行のリース会計基準適用初年度開始前である所有権移転外ファイナンス・リースに関する貸手の取扱い
現行のリース会計基準(適用指針)の定めによって、現行のリース会計基準の適用初年度の前期末における固定資産の適正な帳簿価額(減価償却累計額控除後)を現行のリース会計基準の適用初年度のリース投資資産の期首の価額として計上している場合、新しいリース会計基準適用後もこの処理を継続することが認められています。この場合、当該リース投資資産に関して、現行のリース会計基準適用後の残存期間においては、新しいリース会計基準適用指針の定めによらず、利息相当額の総額をリース期間中の各期に定額で配分することができます【適用指針.115】。
また、現行のリース会計基準(適用指針)の定めによって、引き続き通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理を行っている場合は、新しいリース会計基準適用後もこの処理を継続することが認められています。この場合は、リース取引開始日が現行のリース会計基準の適用初年度開始前のリース取引について、引き続き通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理を適用している旨及び所定の事項を注記する必要があります【適用指針.116】。
2.新しいリース会計基準を適用する際の経過措置
(1)基本的な考え方
国際会計基準においても、適用初年度における実務上の負担を考慮して経過措置が設けられている点を考慮し、新しいリース会計基準においても同様の経過措置が可能な限り採り入れられています【適用指針.BC164】。
新しいリース会計基準の適用初年度においては、新たな会計方針を過去の期間のすべてに適用することを原則的な処理としていますが、適用初年度の累積的影響額を期首の利益剰余金に加減し、当該期首残高から新たに会計方針を適用すること(以下、「例外処理」とします)も認められています【適用指針.118】。また、この例外処理を適用する場合は、以下の方法が認められています【適用指針.119】。
・現行のリース会計基準を適用しているリース取引について、契約にリースが含まれているか否かを判断せずに、新しいリース会計基準を適用すること
・現行のリース会計基準を適用していないリース取引について、適用初年度における事実や状況に基づいて契約にリースが含まれているかどうかを判断すること
また、この例外処理を選択した場合のより具体的な取扱いとして、以下の項目が取り上げられています。
<借手の取扱い>
ファイナンス・リース取引に分類していたリース【適用指針.120~122】
オペレーティング・リース取引に分類していたリース等【適用指針.123~125】
セール・アンド・リースバック取引【適用指針.126】
借地権の設定に係る権利金等【適用指針.127~129】
建設協力金等の差入預託保証金【適用指針.130】
<貸手の取扱い>
ファイナンス・リース取引に分類していたリース【適用指針.131】
オペレーティング・リース取引に分類していたリース等【適用指針.132】
サブリース取引【適用指針.133】
この中で、主なものについて、確認していきましょう。
(2)借手の取扱い
① ファイナンス・リース取引に分類していたリース
適用指針.118の例外処理を選択する場合、現行のリース会計基準においてファイナンス・リース取引に分類していたリースについては、以下の取扱いが認められています(この取扱いは、リース1件ごとに適用することができます)【適用指針.120~122】。
・新しいリース会計基準の適用初年度の前期末におけるリース資産及びリース債務の帳簿価額を期首における使用権資産及びリース負債の帳簿価額とすることができる
・上記において、前期末におけるリース資産及びリース債務の帳簿価額に残価保証額が含まれる場合、当該金額は、期首時点における残価保証に係る借手による支払見込額に修正する
・新しいリース会計基準の適用初年度の期首からは、新しいリース会計基準を適用して使用権資産及びリース負債について会計処理を行う
※新しいリース会計基準の適用初年度の期首以後に使用権資産総額に重要性が乏しいと認められる場合の判断基準である10%を超える場合(適用指針.41参照)であっても、新しいリース会計基準の適用初年度の期首における使用権資産及びリース負債については、現行のリース会計基準(適用指針)において選択していた方法を継続して適用することができる
※現行のリース会計基準において、個々のリース資産に重要性が乏しいと認められる場合に通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理を行っていたリースについては、当該会計処理を継続することができる
② オペレーティング・リース取引に分類していたリース等
適用指針.118の例外処理を選択する場合、現行のリース会計基準においてオペレーティング・リース取引に分類していたリース及び新しいリース会計基準の適用によって新たに識別されたリースについては、以下の取扱いが認められています【適用指針.123】。
a. 新しいリース会計基準の適用初年度の期首時点における残りの借手のリース料をその時点の借手の追加借入利子率を用いて割り引いた現在価値によりリース負債を計上する
b. リース1件ごとに、次のいずれかの方法により使用権資産を計上する
・新しいリース会計基準がリース開始日から適用されていたかのような帳簿価額(ただし、新しいリース会計基準の適用初年度の期首時点の借手の追加利子率を用いて割り引く)
・aで算定されたリース負債と同額とする(ただし、新しいリース会計基準の適用初年度の前期末に貸借対照表に計上された前払または未払リース料の金額の分だけ修正する
c. 新しいリース会計基準の適用初年度の期首時点の使用権資産に固定資産の減損会計基準を適用する
d. 適用指針.22(少額リースに関する簡便的な取扱い)を適用して使用権資産及びリース負債を計上しないリースについては修正しない
※現行のリース会計基準に従ってファイナンス・リース取引に分類していた建物に係るリースについて土地と建物がそれぞれ独立したリースを構成する部分(適用指針.16)に該当しない場合にも適用することができる
また、適用指針.118の例外処理を選択する場合は、過年度遡及会計基準(企業会計基準第24号)で求められる注記に代えて、次の事項を注記する必要があります。
a. 新しいリース会計基準の適用初年度の期首に計上されているリース負債に適用している借手の追加利子率の加重平均
b. 新しいリース会計基準の適用初年度の前期末において現行のリース会計基準を適用して開示したオペレーティング・リースのaの追加借入利子率で割引後の未経過リース料と新しいリース会計基準の適用初年度の期首の貸借対照表に計上したリース負債との差額の説明
さらに、適用指針.123の方法を選択する場合は、次のaからdまでの方法の1つまたは複数を適用することができます(これらの方法はリース1件ごとに適用することができます)【適用指針.124】。
a. 特性が合理的に類似した複数のリースに単一の割引率を適用すること
b. 新しいリース会計基準の適用初年度の期首から12か月以内に借手のリース期間が終了するリースについて、リース負債及び使用権資産を計上せずに、借手のリース料を借手のリース期間にわたって原則として定額法により費用として計上すること(適用指針.20参照)
c. 付随費用を新しいリース会計基準の適用初年度の期首における使用権資産の計上額から除外すること
d. 契約にリースを延長または解約するオプションが含まれている場合に、借手のリース期間や借手のリース料を決定するにあたってリース開始日より後に入手した情報を使用すること
(3)貸手の取扱い
① ファイナンス・リース取引に分類していたリース
適用指針.118の例外処理を選択する場合、現行のリース会計基準においてファイナンス・リース取引に分類していたリースについて、新しいリース会計基準の適用初年度の前期末におけるリース債権及びリース投資資産の帳簿価額のそれぞれを期首におけるリース債権及びリース投資資産の帳簿価額とすることができます。これらのリースについては、新しいリース会計基準の適用初年度の期首からは、新しいリース会計基準を適用してリース債権及びリース投資資産について会計処理を行うこととなります【適用指針.131】。
ただし、現行のリース会計基準において、貸手における製作価額または現金購入価額と借手に対する現金販売価額の差額である販売益を割賦基準により処理している場合、新しいリース会計基準の適用初年度の前期末の繰延販売利益の帳簿価額は新しいリース会計基準の適用初年度の期首の利益剰余金に加算します。
② オペレーティング・リース取引に分類していたリース
適用指針.118の例外処理を選択する場合、現行のリース会計基準においてオペレーティング・リース取引に分類していたリース及び新しいリース会計基準の適用により新たに識別されたリースについて、新しいリース会計基準の適用初年度の期首に締結された新たなリースとして新しいリース会計基準を適用することができます【適用指針.132】。
原則的な会計処理を求めた場合、不動産契約におけるフリーレントやレントホリデーの会計処理に影響が生じると想定されたことから、この取扱いを設けることで、フリーレント期間が終了している不動産契約については、修正が不要となることを意図しているとされています【適用指針.BC171】。
以上、9回にわたって新しいリース会計基準の概要をご説明してきました。新しいリース会計基準は、2027 年 4 月 1 日以後開始する年度の期首から適用することとなっており、3月決算会社の皆さんにおいては、適用まで1年を切ったこととなります。基準や適用指針の文言を読み解くのが難しく、どこまで嚙み砕いたご説明になったか分かりませんが、これから準備を進められる皆様のお役に立てれば幸いです。
(おわり)
あすかコンサルティング株式会社
【会計コンサルティング担当】津田 佳典
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