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Others2026.08.19 「コーポレートガバナンス・コード」の2026年改訂

金融庁と東京証券取引所は、コーポレートガバナンス・コード(2026年7月版)を公表しました。新聞報道等でご存知の方も多いと思われますが、コーポレートガバナンス・コード(2026年7月版)と同時に公表された「成長投資の促進に向けたコーポレートガバナンス・コードの改訂について」を見ながら、今回の改訂のポイントについて確認していきたいと思います。

 

 

 

1.今回の改訂の狙いは?


 

「成長投資の促進に向けたコーポレートガバナンス・コードの改訂について」によると、以下の記述があります。

 

✔ 日本のコーポレートガバナンス改革は、一定の進捗が見られる一方で、形式的な対応にとどまることなく、企業と投資家の双方の取組みにおける実質化が重要であるとの指摘がなされている。

 

 

✔ 今般の改訂では、成長投資等の経営資源の適切な配分をはじめとして、企業が中長期的な価値向上に向けた本質的な取組みに注力できるように、「コンプライ・オア・エクスプレイン」の対象となる原則の内容を抽象的かつ概念的なものに限定し、各原則の実効的な実施を支援するための具体的な内容や趣旨及び背景を記載した「解約指針」を新設した。

 

 

✔ 今般の改訂は、コード策定時のプリンシプルベースの精神に立ち返るためのいわば「コードの実質化」を狙いとしている。また、上場会社には、各原則の趣旨・精神に照らしてコンプライまたはエクスプレインを選択するとともに、このいずれを選択する場合であっても、自らの取組みについて丁寧に説明することが望まれる。

 

 

特に、「コードの実質化」については、今回の改訂より、従来は基本原則(5)、原則(31)、補充原則(47)のすべてに対して「コンプライ・オア・エクスプレイン」を判断すべきとされていたものが、基本原則(4)と原則(26)に対して判断を行うこととされました。ただし、補充原則の多くは、新たに設けられた「解釈指針」の中に織り込まれており、「コンプライ・オア・エクスプレイン」の判断基準が大きく変わるものではないと考えられます。

 

 

 

 

 

2.今回の改訂のポイントは?


 

同じく「成長投資の促進に向けたコーポレートガバナンス・コードの改訂について」において、今般の改訂における留意事項等について、次の3点が挙げられています。

 

 

(1) 成長投資の促進

 

コーポレートガバナンス・コードは、企業におけるリスクの回避・抑制、不祥事の防止といった「守りのガバナンス」だけでなく、会社の意思決定の透明性・公正性を担保しつつ、会社の迅速・果断な意思決定を促すことを通じて、企業の稼ぐ力の向上を目指す「攻めのガバナンス」の実現を目指すものとされています。

 

そこで、今回の改訂版のコードにおいては、取締役会の役割・責務として、成長投資等に向けた以下のような取組みの重要性が明記されています。

 

 

① 会社の目指すところに向けた成長の道筋を構築すべきであること【基本原則4及び原則4-1】

 

 

② 成長の実現に向けて成長投資(設備・研究開発・人的資本・知的財産等の無形資産への投資等)や事業ポートフォリオの見直し等の経営資源の配分に関し具体的に何を実行するのかを説明すべきであること【原則4-1】

 

 

③ 経営資源の配分が、成長の実現を目指して策定・公表した経営戦略や経営計画に照らし適切なものとなっているかについて不断に検証を行うべきであること【原則4-2】

 

 

経営資源の配分にあたっては、資本収益性や資本コストとともに企業の成長フェーズや機会コスト等の要素も考慮し、さらには、多様な投資先や株主還元をも含めた資源配分戦略を検討する【原則4-1解釈指針】一方で、現金預金等の金融資産や実物資産頭の経営資源を成長投資頭に有効活用できているかを検証することが求められています【原則4-2解釈指針】。

 

 

(2) 取締役会の機能強化

 

上場会社の取締役会は、株主から負託された信任に応える受託者として、企業戦略等の大きな方向性を示し、独立した客観的な立場から経営陣・取締役に対する実効性の高い監督を行う責務を負い、会社及び株主共同の利益のために行動することが求められています。

 

今回のコード改訂においては、取締役会における独立社外取締役が占める割合が増加し、その主たる役割・責務である監督機能をより効果的に果たすための環境が整いつつあることを踏まえ、さらなる独立社外取締役の実効性向上という観点から、以下の点が強調されています。

 

① 独立社外取締役の役割・責務【原則4-8】

・経営陣の選解任及び取締役会での重要な意思決定を通じた経営の監督

・会社の経営陣及び支配株主等との間の利益相反の監督

・少数株主をはじめとするステークホルダーの意見の取締役会への適切な反映

・会社の持続的な成長を促し中長期的な企業価値の向上を図る観点からの助言

 

 

② 独立社外取締役の質及び数の確保【原則4-9、4-10】

独立社外取締役の役割・責務を果たすことができる資質を十分に備えた人物をプライム市場上場会社は取締役の3分の1以上(その他の市場上場会社は2名以上)選任すべきであること

※グローバルに活躍するプライム市場上場会社については、過半数の独立社外取締役を選任すべきとの指摘も

 

 

③ 独立社外取締役の独立性確保【原則4-11】

独立社外取締役の独立性をその実質面において担保することに主眼を置いた独立性判断基準を策定すべきであること

 

 

④ 取締役会を支援する重要な役割を果たす事務局(コーポレートセクレタリー等)の機能強化の推進により、取締役会の審議の活性化及び社外を含めた取締役・監査役への情報提供を含む的確な支援を行うこと【原則4-14解釈指針】 

 

 

 

(3) 有価証券報告書の定時株主総会前の開示

 

有価証券報告書には、投資家の意思決定に有用かつ信頼性の高い情報が多く含まれていることから、有価証券報告書が株主総会前に開示されていることが望ましいとの流れがありましたが、今回の改訂コードにおいて、有価証券報告書が株主総会前に提出されることが、株主総会における権利行使に係る適切な環境整備の重要な例として明示されました【原則1-2】。

 

また、株主総会開催日の3週間以上前に有価証券報告書が提出されていることがベストプラクティスであり、そのためには、株主総会開催日の後ろ倒しも検討されることが望ましいとされています【原則1-2解釈指針】。

 

この点については、現在法制審議会において審議されている会社法改正の中で、有価証券報告書と会社法上の事業報告等の一本化や、会社法監査と金融商品取引法監査の一元化等の動きにも留意する必要があると考えられます。

 

 

今回のコード改訂は、冒頭で述べた通り、詳細になり過ぎたコードの整理という側面が強いですが、昨今の上場企業を取り巻く状況の変化がコードに取り入れられている点に留意が必要と思われます。

個人的には、【原則4-4】取締役会の役割・責務Ⅲ:経営陣・取締役に対する実効的な監督②において「取締役会は、内部統制や全社的リスク管理体制を適切に整備すべきである。」ことが求められる中で、その解釈指針において、サイバーセキュリティリスク、地政学的要因によるサプライチェーン途絶リスク、情報流出リスク等への対応がその考慮事項に含まれると示された点は、まさに最新の環境変化が取り入れられていると感じました。

 

 

 

あすかコンサルティング株式会社

【会計コンサルティング担当】津田 佳典

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