


海外子会社等の国外関連者と取引を行う場合、その取引価格は自由に決めて良いわけではなく、独立した第三者間であれば成立したと考えられる価格(独立企業間価格)に基づいて所得を計算する必要があります。これが移転価格税制です。
独立企業間価格の算定方法には、CUP法(独立価格比準法)、RP法(再販売価格基準法)、CP法(原価基準法)、TNMM(取引単位営業利益法)等があります。
実務では、単に算定方法を知っているだけでは足りず、「自社の取引にはどの方法が適しているのか」「TNMM法を採用する場合、どの利益率を使えば良いのか」といった点が問題になります。
今回はTNMM法を中心に、CUP法・RP法との違いや使い分け、さらにTNMM法を理解する上で重要となるPLI(Profit Level Indicator)やNCPM(Net Cost Plus Margin)について確認したいと思います。
CUP法・RP法・TNMM法の大きな違いは「何を比較するのか」という点にあります。
| 算定方法 | 着目点 | 考え方 |
|---|---|---|
| CUP法 | 取引価格 | 比較可能な非関連者間取引の価格と比較 |
| RP法 | 売上総利益 | 再販売価格から通常の売上総利益を控除して計算 |
| TNMM法 | 営業利益 | 比較可能な取引における営業利益水準と比較 |
単純化すると、CUP法は「価格」、RP法は「売上総利益」、TNMM法は「営業利益」に着目する方法と考えると分かりやすいと思います。
この違いは、比較可能性を考える上でも重要です。CUP法は価格そのものを直接比較するため、商品・役務や取引条件の違いが価格に与える影響を慎重に検討する必要があります。一方、TNMM法は営業利益水準を比較するため、商品そのものの差異にはCUP法ほど敏感ではない場合がありますが、機能・資産・リスクや会計処理等の違いを無視できるわけではありません。
なお、以前はCUP法・RP法・CP法のいわゆる「基本三法」を優先し、これらを用いることができない場合にその他の方法を用いるという考え方でした。しかし、平成23年度税制改正によりこの仕組みは見直され、現在は国外関連取引の内容等に応じて「最も適切な方法」を選定することとされています。
したがって、「CUP法→RP法→TNMM法」という機械的な優先順位があるわけではありません。一方で完全に横並びでもなく、CUP法と他の方法を同程度の信頼性をもって適用できる場合には、取引価格を直接比較できるCUP法が望ましいとされています。
それぞれの算定方法について、適用を検討しやすいケースを整理すると次のようになります。
| ケース | 検討される方法 | 理由 |
|---|---|---|
| 海外子会社への販売商品と同一・類似の商品を、同様の条件で第三者にも販売している | CUP法 | 非関連者間取引の価格を直接比較できる可能性があるため |
| 海外販売子会社が親会社から商品を仕入れ、大きな付加価値を加えず第三者へ再販売している | RP法 | 再販売価格と通常の売上総利益から仕入価格を検討しやすいため |
| 海外販売子会社が比較的単純な販売機能を果たし、類似する独立企業の営業利益率を把握できる | TNMM法(売上高営業利益率等) | 価格や売上総利益の直接比較が難しくても営業利益水準を比較できる場合があるため |
| 海外子会社が定型的な役務提供や製造活動を行い、発生する費用と機能との関連性が高い | TNMM法(NCPM等) | 費用を基礎とする利益水準が機能を適切に反映する場合があるため |
| 取引当事者の双方がユニークで価値ある無形資産を使用するなど、双方が重要な価値を創出している | TNMM法以外も検討 | 片側だけを検証するTNMM法が適切でない場合があり、利益分割法等を検討する可能性があるため |
この表でご注意いただきたいのは、「販売会社だからRP法」「役務提供だからNCPM」といったように、取引形態だけで機械的に判断するものではない点です。実際には取引内容、機能・資産・リスク、利用可能な比較対象情報等を踏まえて最も適切な方法を選択します。
例えばCUP法では、商品が同じであっても販売数量、地域、取引段階、契約条件、市場環境等が異なれば価格にも影響するため、比較可能性の検討が特に重要です。
またRP法では、海外販売子会社が独自のブランド構築や大規模なマーケティング活動等を行っている場合には、単純な販売会社とは機能が異なります。さらに、売上総利益を比較することから、比較対象との売上原価・販売管理費の区分等、会計処理の違いにも注意が必要です。
TNMM法についても、価格や売上総利益率の比較が難しいからという理由だけで自動的に採用するわけではありません。比較対象となる利益水準について信頼できる情報が得られるか、どの当事者を検証するのか等を併せて検討する必要があります。
TNMM(Transactional Net Margin Method:取引単位営業利益法)は、一の国外関連取引又は一定の場合には関連する複数の国外関連取引について、売上高、費用、資産等の適切な基準に対する営業利益の水準を比較する方法です。
例えば、海外販売子会社の売上高営業利益率が3%で、比較可能な取引を行う独立企業の売上高営業利益率が2%~5%であった場合には、海外子会社の利益水準が独立企業間の水準として妥当かどうかを検討していくことになります。
ここで重要になるのがPLI(Profit Level Indicator:利益水準指標)です。TNMM法では単に営業利益額を見るのではなく、「何に対して、どれだけの営業利益を得ているのか」を比較します。
| PLI | 計算イメージ | 使用が考えられるケース |
|---|---|---|
| 売上高営業利益率 | 営業利益 ÷ 売上高 | 販売活動等 |
| NCPM | 営業利益 ÷ 関連する費用 | 役務提供・製造活動等 |
| 営業資産利益率 | 営業利益 ÷ 営業資産 | 資本集約的な活動等 |
PLIは自由に選ぶものではなく、検証対象者が果たす機能、使用する資産、引き受けるリスク等を踏まえ、その活動から生じる価値を適切に反映する指標を選択します。
例えば、販売活動については売上高、役務提供や製造活動では費用、資本集約的な事業では営業資産が、その機能から生じる価値を捉えるための適切な基準となる場合があります。したがって、同じTNMM法を採用する場合でも、取引内容によって使用するPLIが異なることがあります。
NCPM(Net Cost Plus Margin)は、その中でも費用を基礎として営業利益水準を分析する指標です。
例えば、役務提供に関連する費用が100、比較対象となる取引のNCPMが5%であれば、「関連する費用100 × NCPM5% = 営業利益5」として、当該国外関連取引における営業利益の水準が適切かどうかを検討することができます。
ここで注意したいのが、NCPMの分母となる費用の範囲です。単純にすべての営業費用を分母とするのではなく、対象となる国外関連取引に直接又は間接に関連する費用を特定し、他の活動に関する費用を除外するなど、対象取引に対応する損益を適切に切り出して分析する必要があります。
また、費用を分母とすること自体が適切かどうかも重要です。費用の多寡と会社が果たす機能の価値との間に十分な関連性がなければ、NCPM以外のPLIの方が適切となる場合があります。
TNMM法では「誰を検証対象者とするのか」が重要です。例えば、日本親会社が重要な無形資産を使用して複雑な機能を果たし、海外子会社が比較的単純な販売機能を果たしている場合には、海外子会社を検証対象者とすることが考えられます。
一般的には、機能分析を行った上で、より複雑性が低く、信頼できる比較対象を見いだすことのできる当事者を検証対象者として選定します。複雑性の高い会社では、独自の技術、ブランド等の無形資産や特殊な機能が利益に大きく影響し、比較可能な独立企業を見つけることが難しくなる場合があるためです。
ただし、取引当事者の双方がユニークで価値ある貢献を行っている場合には、どちらか一方だけの利益水準を検証するTNMM法が適切でない場合があります。そのようなケースでは、利益分割法等を含めて別の算定方法を検討する必要があります。
また、比較対象については、同じ納税者が比較可能な非関連者間取引を行っている場合、その取引を「内部比較対象」として利用できるかを検討します。適切な内部比較対象がない場合には、比較可能な取引を行う独立企業等を「外部比較対象」として利用することが考えられます。
内部比較対象は、自社の取引であるため取引条件や会計情報等を詳細に確認しやすいという特徴があります。ただし、第三者との取引が存在するだけで比較対象になるわけではなく、取引内容や市場、契約条件等について十分な比較可能性があるかを確認する必要があります。
TNMM法はCUP法と比べると商品や役務そのものの差異による影響を受けにくいという特徴がありますが、比較可能性の検討が不要になるわけではありません。機能、使用資産、引き受けるリスク、会計処理等の違いが営業利益率に影響を与えるためです。
如何でしょうか。現在の移転価格税制では算定方法に機械的な優先順位があるわけではなく、個々の国外関連取引について最も適切な方法を選択する必要があります。
特にTNMM法については、単に類似企業の営業利益率と比較するだけではなく、「誰を検証対象者とするのか」「どのPLIを使うのか」「内部比較対象を利用できないか」「どの企業・取引を外部比較対象とするのか」まで一連の分析として検討することが重要です。
海外子会社との取引価格の設定、TNMM法による利益率の検証、比較対象企業の選定、ローカルファイルの作成等、移転価格税制への対応でお困りの場合は、国際税務を担当する当法人までお気軽にご相談ください。
あすか税理士法人
【国際税務・国内税務担当】代表社員税理士 高田和俊

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