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会計制度2023.10.04 JICPA 内部統制監査上の留意事項に関する周知文書を公表

2023年9月、日本公認会計士協会(JICPA)より、内部統制監査上の留意事項に関する周知文書が公表されました。今回は、この内容について、ご紹介します。

 

 

1.公表の背景


 

既に、このブログでも、企業会計審議会内部統制部会から「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の改訂について(意見書)」が公表されたことを取り上げました。

※財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準・実施基準の改訂内容については、以下の記事も是非お読みください。

企業会計審議会 内部統制報告制度の改訂を公表(2023年5月17日)

企業会計審議会 内部統制報告制度の改訂案を公表(2023年1月25日)

 

また、これを受けて、日本公認会計士協会は、「財務報告に係る内部統制の監査」(財務報告内部統制監査基準報告書第1号)の改正を公表し、監査基準における対応を行っています。

※財務報告に係る内部統制の監査の改正内容については、以下の記事も是非お読みください。

JICPA「財務報告に係る内部統制の監査」の改正を公表(2023年9月6日)

 

今回、周知文書が更に公表された目的は、今般の内部統制報告制の改訂を踏まえ、改めてその背景や趣旨を十分に理解した上で適切に実務を行う際の参考とするために、特に留意すべき事項を取り纏めたものとなっています。なお、この周知文書は、一般に公正妥当と認められる監査の基準を構成するものではないことにご留意ください。

 

 

2.内部統制監査の留意事項


 

今回の財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準・実施基準の留意すべき改訂点を「内部統制の基本的枠組み」と「経営者による内部統制の評価範囲の決定」に分けた上で、内部統制監査の留意事項について、以下のように、纏められています。

 

(1)内部統制の基本的枠組み

 

留意すべき改訂点として、内部統制の目的と基本的要素が、企業を取り巻く環境の変化に合わせて改訂されていること、また、経営者による内部統制の無効化に関する記載の追加等が行われていることが挙げられています。具体的には、

・リスクの評価と対応において、不正に関するリスクを考慮することの重要性が示されました。

 

・情報と伝達において、情報の信頼性を確保するためのシステムの有効性についての重要性が示されました。

 

・ITへの対応において、サイバーリスクの高まり等を踏まえたセキュリティ確保の重要性が示されました。

 

・経営者または経営者以外の者によって内部統制を無視または無効化する行為対する適切な内部統制の例が示されました。

 

これを受け、内部統制監査における留意事項として、以下の点が挙げられています。

内部統制を整備・運用する際に準拠した内部統制の枠組みとして、改訂された財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準・実施基準が参照されることを前提として、

 

・監査人は改訂後の内部統制の基本的な枠組みに準拠して、経営者(企業)が内部統制の整備・運用・評価を行っているかどうかについて留意する必要がある。

 

・特に、全社的な内部統制の評価に当たっては、いわゆる42項目の評価項目が広く実務に利用されているが、監査人は、これらの評価項目が、必要に応じて、適切に見直しが行われているかどうかについて確認することが重要である。

 

 

(2) 経営者(企業)による内部統制の評価範囲の決定について

 

留意すべき改訂点として、経営者(企業)による内部統制の評価範囲の決定において、財務報告の信頼性に及ぼす影響の重要性を適切に考慮すべきことが改めて強調されていることが挙げられています。すなわち、数値基準を機械的に適用すべきではなく、全社的な内部統制のうち良好でない項目がある場合には関連する事業拠点を評価範囲に含める必要がある旨が示される等トップ・ダウン型のリスク・アプローチが再確認されているとしています。

 

これを受け、内部統制監査における留意事項として、以下の点が挙げられています。

・トップ・ダウン型のリスク・アプローチが適切に適用されるためには、全社的な内部統制の評価が適切に実施されることが肝要であり、監査人は、全社的な内部統制が、被監査会社の連結集団の規模に応じて十分かつ適切に整備・運用されているか、その実態の把握に努めること。

 

・特に、連結集団を構成する個々の会社単位で全社的な内部統制を評価するのみならず、企業集団全体の観点から全社的な内部統制の整備・運用状況の評価を適切に実施しているか。

(例.小規模な子会社について、親会社による子会社に対する管理体制など、当該子会社の内部統制の一部を補完するような全社的な内部統制が整備・運用・評価されているか。)

 

評価範囲の決定方法及び根拠が、トップ・ダウン型のリスク・アプローチに基づき、内部統制報告書に適切に記載されているか。

 

 

最後に、経営者(企業)の評価範囲の決定において、指導的機能の発揮が期待されていることにも留意するとされています。内部統制評価の計画段階だけでなく、状況の変化等があった場合や財務諸表監査の過程で内部統制の不備を識別した場合においては、必要に応じて、経営者(企業)と評価範囲について協議を実施することが求められている点にも留意することとされています。

 

 

あすかコンサルティング株式会社

【会計コンサルティング担当】津田 佳典

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