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国内税務2022.09.28 税額控除の上乗せ!教育訓練費について解説! ~賃上げ促進税制(※旧 所得拡大促進税制)~

1.賃上げ促進税制とは


 

中小企業向け「賃上げ促進税制」は、青色申告書を提出している中小企業者等が、一定の要件を満たした上で、前年度より給与等の支給額を増加させた場合、その増加額の一部を法人税(個人事業主は所得税)から税額控除できる制度です。

令和4年度の税制改正により、令和4年4月1日開始事業年度以降は、名称が中小企業向け「所得拡大促進税制」から中小企業向け「賃上げ促進税制」に変更となりました。

 

また、以前は、継続雇用者給与等支給額を考慮する必要がありましたが、令和3年度の税制改正により適用要件が「雇用者給与等支給額」のみに変更され、事務的負担が軽減されました。(令和3年4月1日開始事業年度以降)

 

令和3年4月1日~令和4年3月31日開始事業年度の「所得拡大促進税制」のポイントを押さえるにはこちら!

 

所得拡大促進税制と人材確保等促進税制〜2022年3月決算法人向け〜

 

近年、当該税制の改正が続いていることから、国としても力を入れており、是非活用してほしい税制であると感じられます。

 

では改正後の「賃上げ促進税制」は改正前の「所得拡大促進税制」からどのような内容が変更されたのでしょうか?

 

【令和4年度改正の変更点】

・上乗せ措置の要件を簡素化&控除率引き上げ(控除率最大40%)

・教育訓練費増加要件に係る明細書の「添付義務」を「保存義務」へ変更

・経営力向上要件は廃止

 

これらは全て、「所得拡大促進税制」の税額控除の上乗せ措置に係る改正です。

 

そもそも、「所得拡大促進税制」における上乗せ措置とは、雇用者給与等支給額が前年度と比べて2.5%以上増加しており、かつ次のいずれかを満たすと税額控除率が15%から25%に増加するというものです。

①教育訓練費が前年度と比べて10%以上増加していること

②適用年度の終了の日までに中小企業等経営力強化法に基づく経営力向上計画の認定を受けており、経営力向上計画に基づき経営力向上が確実に行われたことにつき証明がされていること

 

令和4年度の改正により、②は廃止され、①に関する要件が変更となったことが分かりますね。

 

①に関する要件については、教育訓練費が前年度と比べて10%以上増加していると控除額が10%増えるというものであり、これは改正後も同様です。更に改正後は雇用者給与等支給額が前年度と比べて2.5%以上増加していると控除額が15%増える、つまり税額控除率が15%から最大40%まで増加することになります。
「所得拡大促進税制では」、“雇用者給与等支給額の増加”という要件と“①or②”の要件がどちらも揃っていること必要で、ハードルの高いものでしたが、「賃上げ促進税制」では“雇用者給与等支給額の増加”という要件と“①”の要件、それぞれが判定の対象となり、適用の範囲が広くなったと言えます。

 

では①の教育訓練費とは一体何を指すのでしょうか?今回は教育訓練費について深掘りしていきます!

 

 

2.教育訓練費の意義とその範囲


 

教育訓練費とは、所得の金額の計算上損金の額に算入される、国内雇用者の職務に必要な技術又は知識を習得させ、又は向上させるために支出する費用の内一定のものをいいます。

また、教育訓練の対象となるのは、法人又は個人の国内雇用者(正社員・契約社員・パート・アルバイト等)に限られています。そのため、次の者に対する教育訓練費は、税額控除適用の対象外となり注意が必要です。

 

× 法人の役員or個人事業主本人及びそれらの者の特殊関係者(親族等)

× 使用人兼務役員

× 雇用関係のない者(例 内定者等の入社予定者)

 

【教育訓練費の具体例】

a:法人が教育訓練等を自ら行う場合の費用

b:他の者に委託して教育訓練等を行わせる場合の費用

c:他の者が行う教育訓練等に参加させる場合の費用

 

これらにはそれぞれ、対象となる教育訓練費の範囲が定められています。

 

[aの範囲]

☆法人等がその国内雇用者に対して、外部から講師又は指導員(外部講師等)を招聘し、講義・指導等の教育訓練等を自ら行う費用

※内容は座学研修や専門知識の伝授、技術・技能の現場指導などを行う場合も対象

※外部講師等は当該法人の役員又は使用人以外の者(子会社や関連会社等のグループ企業の役員又は使用人であればOK)

※契約により継続的に講義・指導等の実施を依頼する場合の費用も対象

 

☆外部講師等に対して支払う報酬、料金、謝金その他これらに類する費用

※外部講師等個人ではなく法人から講師等の派遣を受けその対価を法人に支払った場合の費用も対象

※外部講師等の招聘に要する交通費や宿泊費・食費等の旅費も対象

 

☆法人等がその国内雇用者に対して、施設、設備その他資産(施設等)を賃借又は使用して、教育訓練等を自ら行う費用

※当該法人の子会社や関連会社等のグループ企業の所有する施設等を賃借する場合も対象

※普段は生産等の企業活動に使われている施設等であっても賃借して使用する者が教育訓練等を行うために賃借等する場合は対象

 

☆施設・備品・コンテンツ等の賃借又は使用に要する費用

※教育訓練等のために使用されている契約期間であれば、その実際の使用期間に制約されない

 

[bの範囲]

☆法人等がその国内雇用者の職務に必要な技術・知識の習得又は向上のため、他の者に委託して教育訓練等を行わせる費用

※他の者とは、事業として教育訓練を行っている外部教育機関や一般企業、当該法人の子会社、関連会社等グループ内の教育機関や一般企業をいう

 

☆教育訓練等のために他の者に対して支払う費用

※講師の人件費、施設使用料等の委託費用をいう

 

[cの範囲]

☆法人等がその国内雇用者の職務に必要な技術・知識の習得又は向上のため、他の者が行う教育訓練等に当該国内雇用者を参加させる費用

※研修講座、講習会、研修セミナー、技術指導等をいう

※法人等が他の者に対し、直接又は国内雇用者を通じて間接に支払う費用

※国内雇用者が費用の一部を負担する場合には、その負担された金額を教育訓練費から控除する

 

☆他の者が行う教育訓練等に対する対価として当該他の者に支払う授業料、受講料、受験手数料その他の費用

※受験手数料は、教育訓練等の一環として各種資格・検定試験が行われる場合に対象

※法人等がその国内雇用者を国内外の大学院コース等に参加させる場合に大学院等に支払う授業料等聴講に要する費用、教科書等の費用(ただし所得税法上、学資金等として給与に該当するものは除く)

 

3.教育訓練費の注意点


 

教育訓練費の意義とその範囲を列挙しましたが、当てはまる費用についてイメージが湧きましたでしょうか?

ここからは、教育訓練費に関する注意点をお伝えいたします。

 

【教育訓練費の対象とならない費用】

・法人等がその使用人又は役員に支払う教区訓練中の人件費、報奨金等

・教育訓練等に関連する旅費、交通費、食費、宿泊費、居住費(研修の参加に必要な交通費やホテル代、海外留学時の居住費等)

・福利厚生目的など、教育訓練以外を目的として実施する場合の費用

・法人等が所有する施設等の使用に要する費用(光熱費や維持管理費等)

・法人等の施設等の取得等に要する費用(当該施設等の減価償却費も対象外)

・教材等の購入・制作に要する費用(教材となるソフトウエアやコンテンツの開発費も対象外)

・教育訓練の直接費用でない大学等への寄付金、保険料等

 

【教育訓練費の明細書の記載事項】

当該明細書は、作成の上保存義務があります(令和4年3月31日以前開始事業年度は確定申告時に当該明細書の添付義務があるため注意が必要です)。

 

・教育訓練等の実施時期

「年月」は必須、「日」は任意で記載

 

・教育訓練等の実施内容

教育訓練等のテーマや内容及び実施期間

 

・教育訓練等の受講者

教育訓練等を受ける予定又は受けた者の氏名等

 

・教育訓練費の支払証明

領収書の写し等(費用を支払った年月日、内容及び金額並びに相手先の氏名又は名称が明記されているもの)

(経済産業省 中小企業向け賃上げ促進税制 ご利用ガイドブックより)

 

なお、様式は自由とされています。

 

 

4.教育訓練費のまとめ


 

教育訓練費はあくまでも上乗せ措置のため、賃上げ促進税制(旧所得拡大促進税制)の適用要件に該当することが大前提にあります。

当該税制は改正の度に事務的負担は少なくなっており、今までは「よく分からないから・・・」と避けていた方もより適用しやすい傾向にあるのではないでしょうか?

従来、所得拡大促進税制の適用を受けられていた方や今後賃上げ促進税制の適用要件に該当しそうな中小企業者等の方は、上乗せ措置の適用も見越して対策されることをお勧めいたします。

 

対策としては

・支払証明となるものは必ず保存しておく

・氏名を記載の上、教育訓練の対象となる人か判断しておく

(例 役員なら×、従業員なら○というようなメモを残す)

abcいずれかの費用に当てはまるか?判断しておく

・対象外の費用ではないか?判断しておく

明確な判断は申告時になると考えられますが、期中はこれらを整理しておくことが大切であると言えます。

 

あすか税理士法人

【スタッフ】今西麻侑子