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国内税務2022.03.30 所得拡大促進税制と人材確保等促進税制〜2022年3月決算法人向け〜

年度末に差し掛かり、3月決算法人の経理の皆様の中には決算準備をスタートされている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
本日は令和4年3月決算法人(令和3年4月1日以後開始事業年度法人)向けに、所得拡大促進税制や人材確保等促進税制のポイントを整理したいと思います。
 
 

1.所得拡大促進税制


 
所得拡大促進税制は、中小企業者等が前年度より給与等を増加させた場合に、その増加額の一部を法人税から控除額できる制度です。
 
(1)対象法人
中小企業者等が対象です。
中小企業者等とは、原則的に資本金額が1億円以下の法人で、大規模法人一社から2分の1以上の出資を受ける法人等は除かれます。
また、前三事業年度の平均所得金額が15億円を超える法人は本税制適用除外となりますのでご注意ください。
 
(2)適用要件
雇用者給与等支給額が前年度より1.5%増加していることです。
改正前は雇用者給与等支給額がパーセント問わず増加さえしていれば良かったのでこの点は厳しくなりましたが、継続雇用者給与等支給額を考えなくて良くなった点は要件が緩くなり、また実務負担も軽減されたと言えます。
雇用者給与等支給額のポイントは下記の通りです。
・国内雇用者(役員を除き、国内の事業所につき作成された賃金台帳に記載された者)に対する給与
・出向負担金など他の者から受けた金額を控除
・雇用安定助成金(雇用調整助成金等)は控除しない
また教育訓練費が前年度比で10%以上アップしていれば、上乗せ措置(下記税額控除率15%→25%)が適用されます。
 
(3)税額控除計算
控除対象雇用者給与等支給増加額の15%(上乗せ適用で25%)を法人税から控除します。
法人税の20%が税額控除上限であるのことは従来通りで、増加額は前事業年度との比較となります。
なお、控除対象雇用者給与等増加額は「調整雇用者給与等支給増加額」を上限とします。これがややこしいですね。
この調整雇用者給与等支給額とは「雇用者給与等支給額から雇用安定助成金(雇用調整助成金等)を控除」した金額となります。
整理すると
・雇用者給与等支給額:雇用調整助成金を控除しない
・調整雇用者給与等支給額:雇用調整助成金を控除する
となります。
 
最終的に『「控除対象雇用者給与等支給増加額」と「調整雇用者給与等支給増加額」のいずれか小さい金額×15%』が税額控除可能です。
 
 

2.人材確保等促進税制


 

人材確保等促進税制は、青色申告法人が前年度より新規雇用者給与等を増加させた場合に、新規雇用者給与等の一部を法人税から控除額できる制度です。中小企業に限定していない点がポイントです。
 
(1)対象法人
青色申告書を提出する全企業となります。大企業も使える税制で、見落としがちなのが「中小企業者も使える税制」であることです。中小企業者は所得拡大促進税制との選択適用となります。
 
(2)適用要件
新規雇用者給与等支給額が前年度より2%以上増加していることです。
「新規雇用者」は新しいルールで、新規雇用者給与等支給額とは「国内新規雇用者のうち雇用保険の一般被保険者に対してその雇用した日から1年以内に支給する給与等」を言います。
これは経済産業省のガイドブックに載っている表が分かりやすいので下記掲載します。

如何でしょうか。新規雇用から一年以内に支給した給与なので、前期と今期に新規採用した人だけではなく、前々期に新規採用した人に対して前期に支給した給与も判定に考慮する必要があります。
また前年度から増加しているかどうかを判定する際は、雇用安定助成金(雇調金等)は控除しない点もポイントです。これは所得拡大促進税制と同様ですね。
また教育訓練費が前年度比で20%以上アップしていれば、上乗せ措置(下記税額控除率15%→20%)が適用されます。
 
(3)税額控除計算
控除対象新規雇用者給与等支給額の15%(上乗せ適用で20%)を法人税から控除します。法人税の20%上限です。
税額控除計算時の注意点は下記二点です。
・国内新規雇用者を雇用保険の一般被保険者に限定しない点
・雇用安定助成金(雇調金等)を控除する点
 
 
 
『雇用安定助成金』の取扱いが理解を複雑にしてしまっているように感じますね。
また上記税額控除が受けられる場合は、教育訓練費の増加判定を行い上乗せ措置の適用漏れが無いようにご留意下さい。
 
 

あすか税理士法人

【国際税務担当】高田和俊

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