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国内税務2022.05.11 確定拠出年金と退職金

老後の生活を考えた時に、公的年金だけでは足りないのでは……と不安に感じている方も多いのではないでしょうか。

そのため老後に備え、企業型確定拠出年金や個人型確定拠出年金により資金準備をされている方も少なくないかと思います。

今回は、確定拠出年金をいざ受取るとなった時の課税関係について簡単に確認したいと思います。

 

1.確定拠出年金とは?


 

確定拠出年金には、従業員を加入者とし企業側が掛金を拠出する企業型確定拠出年金(企業型DC)と個人本人が掛金を拠出する個人型確定拠出年金(iDeCo)があります。

どちらの確定拠出年金であっても拠出された掛金を加入者自らが運用し、運用の結果に応じて決定された給付金を受け取ることができます。

さらに確定拠出年金には、税制メリットがあります。

・掛金拠出時:企業型確定拠出年金の場合には全額損金算入、個人型確定拠出年金の場合には全額所得控除の対象となります。

・運用時:通常、金融商品を運用する場合、その運用益に対して源泉分離課税により所得税・住民税が計算されますが、確定拠出年金の場合、運用益に対する課税はなく非課税となります。

・給付金受取時:①年金として定期的に受け取る方法を選択した場合は、雑所得に区分され公的年金等控除が適用されます。②一時金として一括して受け取る方法を選択した場合は、退職所得に区分され退職所得控除が適用されます。

 

 

 

2.退職所得控除の勤続年数とは?


 

一時金として一括で受け取り退職所得に区分された場合、退職所得控除が適用されますが、その退職所得控除を計算する際に重要となる勤続年数について整理していきます。

勤続年数について次のように記載されています。内容を一部抜粋しています。

 

【所得税法施行令第69条第2項】退職所得控除に係る勤続年数の計算

退職一時金等については、組合員等であつた期間(退職一時金等の支払金額の計算の基礎となつた期間(当該退職一時金等の支払金額のうちに次に掲げる金額が含まれている場合には、当該金額の計算の基礎となつた期間を含む。)をいい、……当該退職一時金等が第七十二条第三項第七号(退職手当等とみなす一時金)に掲げる一時金に該当する場合には、当該支払金額の計算の基礎となつた期間は、当該支払金額の計算の基礎となつた確定拠出年金法第三十三条第二項第一号(支給要件)に規定する企業型年金加入者期間……と、当該計算の基礎となつた同条第二項第三号に規定する個人型年金加入者期間……により勤続年数の計算を行う。

 

【所得税基本通達 31-2】退職一時金等に係る勤続年数の計算

(2) 当該退職一時金等の支払金額の計算の基礎となった期間が、例えば、休職若しくは停職の期間又は掛金等を負担しなかった期間等を除外するなど、一部の期間を全く除外して計算されている場合には、その除外された期間を除いて勤続年数を計算すること。

 

確定拠出年金における勤続年数は、企業型確定拠出年金・個人型確定拠出年金の加入者期間をいいます。つまり掛金を拠出した期間が勤続年数となります。

例えば、会社の退職を機に確定拠出年金の掛金の払込も終了した場合、一時金を受け取るまでの運用期間は、掛金を拠出していないため勤続年数の計算からは除かれることとなります。

 

 

 

3.確定拠出年金における勤続年数の重複期間の留意点


 

2022年4月以降、確定拠出年金の一時受取の最終年齢が70歳から75歳へ引き上げられました。それに伴い、退職所得控除の勤続年数の重複期間が「前年以前14年以内」から「前年以前19年以内」へ変更されています。

 

例えば、退職金を会社退職時の60歳、確定拠出年金の一時金を75歳で受け取るといったケースで考えてみましょう。

退職時60歳の時に受け取った退職金は、75歳の15年前に受け取ったものであるため、19年以内のものとなります。確定拠出年金の退職所得控除の勤続年数の計算をする際には、以前の退職所得控除を計算する際の勤続年数との重複期間を控除する必要があります。

つまり、この場合の確定拠出年金の退職所得控除の勤続年数は、退職後の掛金を拠出していた期間のみとなり、退職所得控除の優遇を最大に受けることができない可能性があります。

 

4.まとめ


 

確定拠出年金を一時金として受取る場合は、確定拠出年金の勤続年数の計算や、重複期間を考慮すると、少額であったとしても極力長く掛金を払い続けることにより、退職所得控除の額を最大にすることで、所得税・住民税の負担を最小限にすることができると考えられます。

 

 

あすか税理士法人

【スタッフ】渋谷優果