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会計・ファイナンス・監査2026.09.30 後発事象に関する会計基準を解説

2026年1月、企業会計基準委員会(ASBJ)は、「後発事象に関する会計基準」(企業会計基準第41号、以下「基準」)及び「後発事象に関する会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第35号、以下「適用指針」)を公表しました。

 

これまでは、日本公認会計士協会(JICPA)が公表していた「後発事象に関する監査上の取扱い」(監査・保証基準委員会 監査基準報告書560 実務指針第1号)が実質的に会計上の取扱いとなっていましたが、このうち会計に関する内容について、会計基準として定められたものとなります。

 

今回は、新しく設定された基準の解説を通して、実務においてよくご相談を頂く後発事象について解説させて頂きます。

 

 

 

1.後発事象とは?


 

後発事象とは、「決算日後に発生した企業の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす事象のうち、評価期間の末日までに発生した事象」と定義されています(基準.4)。

 

この評価期間の末日は、原則として、財務諸表の公表の承認日とすることとされていますが(基準.7)、この取扱いは、国際会計基準(IAS第10号)の取扱いと同様となっています(基準.BC15)。

 

また、財務諸表の公表の承認については、財務諸表の公表の承認日と財務諸表の公表を承認した機関または個人の名称を注記することとされていますが、これにより、具体的にいつまでの後発事象が反映されているのか等を理解することができると考えられます(基準.10・BC21・BC22)。

 

 

後発事象は、その内容から、「修正後発事象」と「開示後発事象」に分類されます。

★修正後発事象(基準.5)

決算日後に発生した事象ではあるが、その実質的な原因が決算日現在において既に存在しており、決算日の現在の状況に関連する会計上の判断または見積りをする上で、追加的またはより客観的な証拠を提供するものとして考慮しなければならない事象

 

★開示後発事象(基準.6)

決算日後において発生し、当期の財務諸表には影響を及ぼさないが、翌期以降の財務諸表に影響を及ぼす事象

 

 

修正後発事象の事例としては、決算日後に生じた貸倒が挙げられます。貸倒の事実が生じたのは決算日の後ですが、その貸倒の原因となる事由(債権先の経営状況の悪化等)が決算日に存在していたことについて、追加的またはより客観的な証拠が入手できたと考えられるため、それも考慮して財務諸表(貸倒引当金)を修正する必要があります(基準.8)。

 

一方、開示後発事象の事例としては、決算日後に生じた火災が挙げられます。通常、火災の原因となる事由は決算日に存在していた訳ではなく、決算日後の突発的な事由によって火災が生じたと考えられますが、これによって、翌期以降の財務諸表には大きな影響を与えることが考えられますので、開示後発事象としての注記を検討することになります。

 

重要な開示後発事象については、以下の開示目的と具体的な注記事項が示されています。

開示目的(基準.9)

開示後発事象が発生した場合に当該開示後発事象が将来の企業の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に及ぼす影響を財務諸表利用者が理解できるようにするための十分な情報を開示すること

 

開示目的を達成するための注記事項(基準.11)

① 重要な開示後発事象の内容及び影響額等

② ①の影響額の見積りができない場合、その旨及び理由

 

 

重要な開示後発事象に関する注記に記載する具体的な項目及びその詳細さの判断にあたっては、開示目的に照らして重要性を考慮することとなります(基準.BC20)。また、開示後発事象の内容としては、事象の概要、事象の発生の原因または目的、その後の進展の見通しまたはスケジュール等が挙げられています(基準.BC24)。

 

また、後発事象は「決算日後に発生した事象」と定義されていますが、この「発生」の時点については、事案の性質によって、以下のようになると考えられます(基準.BC29)。

① 企業の意思決定により進めることができる事象(例.新株の発行)

→ 当該意思決定があったとき

 

② 企業が他の企業等との合意等に基づいて進めることができる事象(例.合併)

→ 当該合意等の成立または事実の公表があったとき

 

③ 企業の意思に関係のない事象(例.災害事故)

→ 当該事象の発生日または当該事象を知ったとき

 

意思決定や他の企業との合意に基づいて進められる事象については、事案の発生よりも早いタイミングで後発事象が発生したと取り扱われるため、注意が必要です(この点、よく誤解が生じていると感じています)。

 

 

 

 

2.会計監査人設置会社(会社法監査がある場合)の取扱い


 

(1)後発事象の評価期間の取扱い

 

会計監査人により監査される計算書類等(計算書類及び附属明細書)または連結計算書類に関する評価期間の末日は、企業が一般に公正妥当と認められる会計基準及び会社計算規則に準拠して計算書類等または連結計算書類を作成する監査契約上の責任を果たしたことを確認した日(確認日)とされています(適用指針.4)。

 

基準においては、国際的な会計基準との整合性、実務上の配慮及びサステナビリティ開示基準との整合性を踏まえ、後発事象の評価期間の末日を財務諸表の公表の承認日と定めました(基準.7及び適用指針.BC2)。

 

ここで、会社法上の計算書類等及び連結計算書類について、その公表の承認日を後発事象の評価期間の末日とした場合、会社法における計算書類等及び連結計算書類に関する承認規定との関係から、以下の懸念が示されました(適用指針.BC4)。

① 取締役会による計算書類等及び連結計算書類の承認日が計算書類等及び連結計算書類の公表の承認日であると解釈されるおそれがある。

 

② ①のように解釈された場合、企業は取締役会による計算書類等及び連結計算書類の承認日まで後発事象を計算書類等及び連結計算書類に反映することとなり、会計監査人の会計監査報告の通知との順序が問題となる。

→(筆者注)会計監査人が会計監査報告を行った後にも計算書類等及び連結計算書類が修正されるリスクがあるという意味だと思われます。

 

 

このような懸念に対処するために、これまでの「後発事象に関する監査上の取扱い」に基づく実務を踏襲しつつ、企業の観点から会計監査人設置会社の後発事象の評価期間に関する指針が示されたものとなっています(適用指針.BC5)。

 

なお、一般に公正妥当と認められる会計基準及び会社計算規則に準拠して計算書類等または連結計算書類を作成する監査契約上の責任を果たしたことの確認は、通常最高経営責任者(または同等の者)または最高財務責任者によって行われることが想定されており、日本公認会計士協会(JICPA)が公表する「経営者確認書」(監査・保証基準委員会 監査基準報告書580)では、監査人が、経営者に対して、監査契約書に記載されたとおり、適用される財務報告の枠組みに準拠して財務諸表を作成する責任を果たした旨の経営者確認書を提出するように要請されていることから、確認日は通常経営者確認書の日付と同一になると考えられています(適用指針.BC6・BC7)。

→(筆者注)通常経営者確認書は、監査報告書と交換で提出される書類のため、経営者確認書の日付=会計監査人の監査報告書日付ということになるかと思います。

 

 

(2)修正後発事象の取扱い

 

また、基準.8の定めにかかわらず、以下の事象については、修正後発事象として取り扱わず、開示後発事象として注記を行うこととされています(適用指針.5・6)。

・計算書類等に関する確認日後、個別財務諸表の公表の承認日までに発生した修正後発事象に該当する事象

 

・連結計算書類に関する確認日後、連結財務諸表の公表の承認日までに発生した修正後発事象に該当する事象

 

 

会社法と金融商品取引法の開示制度が併存する状況の下で、「後発事象に関する監査上の取扱い」では、計算書類等との単一性を重視する立場から、金融商品取引法監査における財務諸表に関する以下の特例的な取扱いが設けられていました(適用指針.BC8)。

① 個別財務諸表に関する特例的な取扱い

修正後発事象が会社法監査における会計監査人の監査報告書日後に発生した場合には、金融商品取引法に基づいて作成される財務諸表においては、当該修正後発事象は開示後発事象に準じて取り扱う。

 

② 連結財務諸表に関する特例的な取扱い

親会社の計算書類等に係る監査報告書日後、連結財務諸表の監査報告書日までに発生した修正後発事象(連結子会社及び持分法適用会社に係るものを含む。)については、開示後発事象に準じて取り扱う。

 

 

国際的な会計基準とは異なるこのような特例的な取扱いをどのようにするかについては結論を出ず、これまでの取扱いを踏襲することが基本的な方針とされました。今後、有価証券報告書と事業報告等の一体開示の検討の状況等も踏まえて、今後抜本的な見直しを行うかどうかの検討時期が判断されることとなりました(適用指針.BC9)。

 

 

なお、後発事象に関する会計基準及びその適用指針は、2027年4月1日以後開始する年度の期首から将来にわたって適用する(遡及適用はなされない)こととされています(基準.13・14)。

 

 

 

あすかコンサルティング株式会社

【会計コンサルティング担当】津田 佳典

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