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国際税務2024.01.10 国外関連者への寄附金

今回は、海外との取引を行っている日本の企業(海外に子会社がある法人等)が、税務調査でも指摘をされやすい論点となります。

 

 

国外関連者への寄附とは?


 

国外関連者に対する寄附金は、措法66条の4第3項にて規定されています。
国外関連者との取引を通じる所得の海外移転は、移転価格税制(親子会社間や兄弟会社間での取引価格が通常の価格と異なる価格に設定されている場合、
企業間の所得の移転が可能となるため、国外への所得移転を防止するために設けられた制度)によって規定されています。
しかし、国外関連者に対する金銭の贈与や債務の免除については、移転価格税制の規定の適用がなく、一部寄附金として損金算入が認められていました。
そこで、同じ所得の海外移転でありながら、両者の法人税法上のアンバランスを是正するために、国外関連者に対する寄附金は、全額が損金に算入されないこととなっております。

 

 

国外関連者寄附の取扱いとは?


 

先ほども記載しましたが、国外関連者への寄附金は全額が損金不算入となり、経費とはなりません
一定額の損金算入限度額が設けられていないことがポイントとなります。

 

 

国外関連者とは?


 

国外関連者とは、外国法人で法人と特殊関係にあるものをいいます。
特殊関係の有無を判定する際の基本は、資本関係と実質支配関係となります。

 

①発行済株式又は出資総数の50%以上を直接又は間接に保有し又は保有される関係(資本関係)

具体的には、、、
法人と外国法人とが親会社と子会社といったような支配従属関係にある場合(直接保有)
親子関係に限定されず、親会社と孫会社といったように間接的に支配従属関係にある場合(間接保有)

50%以上の出資関係がポイント

 

②同一の者により、それぞれの発行済株式又は出資総数の50%以上を直接又は間接に保有される関係(資本関係)

具体的には、、、
同一の親会社・個人(同一の者)により50%以上を直接又は間接に保有されている兄弟関係にある2つの子会社(内国法人・外国法人)
→この場合の子会社・外国法人は、子会社・内国法人にとっての国外関連者となります。
親子会社の関係でなくても、同一の者によって支配されていれば、結果的にコントロールする可能性が高いと考えられるためです。

 

※個人の場合、個人のみではなくその親族である個人の保有割合も合わせて50%以上であるか否かで判定する必要があります。

50%以上の出資関係がポイント

 

③一方の法人の事業の方針の全部又は一部を実質的に決定できる関係(実質的支配関係)
実質的支配関係があるかどうかの判定は?具体的には、、、

 

人的支配関係
他方の法人の役員の2分の1以上又は代表権を有する役員が、1又は2に該当すること。
1.一方の法人の役員若しくは使用人を兼務していること。
2.かつて一方の法人の役員若しくは使用人であった者であること。

 

取引支配関係
他方の法人が、事業活動の相当部分を一方の法人との取引に依存して行っていること。
例えば、国外関連者の売上先が、納税者である法人のみである場合や、納税者である法人が相当部分を占めている場合などが挙げられます。

 

金銭的支配関係
事業活動に必要とされる資金の相当部分の調達先が、一方の法人からの借入であること。一方の法人の保証を受けて資金調達をしていること。

 

50%以上の出資関係が存在しない場合であっても、納税者である法人が筆頭株主で、他は少数株主である場合には、結果的にコントロールする可能性が高いと考えられるため、必ずしも出資関係は必要とされず、実質的支配関係があるかがポイント

 

 

 

寄附金とは?


 

法人税法上の寄附金とは、その名義を問わず、金銭その他の資産または経済的利益の贈与又は無償の供与を指します。
内国法人への寄附であろうが、国外関連者への寄附であろうが寄附金の定義そのものは変わりません。
今回は、国外関連者の寄附金とされる可能性がある取引について具体的に確認していきます。

 

(1)人件費

 

【大前提】
日本親会社の社員が海外子会社に出向し、出向先の業務に従事する場合、その社員の給与は全額海外子会社で負担するのが原則となります。

 

【パターン①】海外子会社に出向した社員の給与を日本親会社が一部負担した場合
この一部とは、日本と現地の給与水準の較差を指します。
親会社が海外子会社との間の給与の較差を補填するために支給した金額については、親会社で損金に算入することが認められています。
「国外関連者への寄附金」とはならず、負担額は損金となります。

 

【パターン②】海外子会社に出向した社員の給与を日本親会社が全額負担した場合
親会社は、海外子会社が負担すべき金額以上の金額を負担していることとなり、全額損金の額に算入されません。
全額を負担していない場合であっても、給与較差以上の金額を負担している場合や、負担額に明確な根拠がない場合も寄附金と判断される可能性が高いと考えられるため、注意が必要です。
親会社が負担する金額の全額が「国外関連者に対する寄附金」とされ、損金の額に算入されません。

 

 

 

(2)海外子会社への貸付金利子

 

海外子会社の設立当初など、現地での資金調達が困難である場合には、親会社から資金を貸付けるケースはよく見られますが、
その際の貸付金に対する利息の金額に注意が必要です。
国外関連者に無利息または低い利率で貸付けを行った場合、適正な利息相当額との差額を寄附金とみなされる可能性があります。

 

適正な利率とは一体何なのか確認していきます。

移転価格事務要領の改正があり、2023年4月より貸付利子の算定方法が変更となっております。

 

改正以前は、海外子会社(借手)や日本親会社(貸手)が銀行から同様の条件(通貨、期間等)で借入を行っている場合の利率を採用できることとなっていました。

 

しかし、改正により海外子会社(借手)に同様の条件の既存借入がある場合には、その利率を使用できますが、既存の借入がない場合には、借り手である海外子会社の信用力(信用格付)を元に利率を計算する必要があり、その算定が非常に困難となりました。信用力を数値化するのはそう簡単なことではありません。

 

改正内容は、移転価格事務運営要領の3-7と3-8を参照してください。

 

 

 

(3)海外子会社の設立費用
進出先の市場調査費用、現地視察費用、設立登記費用、開業準備費用などさまざまな経費が海外子会社を設立する場合には発生します。親会社の経費になる費用なのか、子会社が負担すべき費用なのか判断に迷われることも多いかと思います。
そこで、その判断基準について確認していきます。

 

ずばり、判断基準は、

「子会社設立の意思決定より前にかかった費用か後にかかった費用か」

です!

 

具体的には、、、

市場調査費用や現地視察費用などの事前調査費用
子会社を設立する意思決定のための費用であるため、日本親会社が負担するのが合理的であると考えられ、国外関連者(海外子会社)への寄附金とはならず、親会社の経費となります。

 

設立登記費用や定款作成費用、ビザ発行費用などの設立に要する費用
子会社を設立する意思決定の後に要する費用であるため、子会社が負担すべき経費と考えられます。
つまり、これらの費用を親会社が負担した場合、「国外関連者への寄附金」とされ、損金の額に算入されません。

 

備品の購入や事務所の家賃など開業準備費用
②と同様、子会社を設立する意思決定の後に要する費用であるため、子会社が負担すべき経費と考えられます。
つまり、これらの費用を親会社が負担した場合、「国外関連者への寄附金」とされ、損金の額に算入されません。

 

 

子会社が持つべき以上の経費を親会社が負担すると寄附金となることがポイント

 

 

 

まとめ


 

いかがでしたでしょうか。
まず国外関連者を判定する際には、出資関係、実質的支配関係があるか否かにより判断します。
法人を支配する形態としては、50%以上の出資関係によるのが通常ですが、役員の派遣や、取引の依存状況、資金の貸付け状況により実質的に法人の意思決定をコントロールすることも可能であると考えられるため、50%以上の出資関係がない場合にも、注意が必要です。
次に「国外関連者への寄附金」と判断されるケースをいくつか紹介しましたが、他にも該当する可能性のあるケースはたくさんあるため、その都度確認するようにしましょう。

 

あすか税理士法人

【スタッフ】渋谷優果