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国内税務2023.03.01 上場株式の確定申告で税金が返ってくる? ~株の確定申告の概要~

 

今年も確定申告の時期がやってきました。

 

 

「コロナ禍以降、株式投資を始めてみたけど株に税金がかかる仕組みがよくわからんなぁ。」

 

 

「確定申告で税金戻ってくるらしいけど、どういうこと?」

 

 

そのような疑問をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。

 

今回は上場株式の確定申告の仕組みについて概略を確認したいと思います。

 

 

 

株から得られる所得の種類


 

まず、株から得られる所得は

 

配当金を受けることで得られる配当所得(利益)

 

株の売買をすることで得られる譲渡所得(利益)

 

があります。

 

それぞれの所得に応じて課税の方法が変わってきますので、それぞれ確認したいと思います。

 

 

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①配当所得:そもそも源泉徴収されている→確定申告は必要ない

 

上場株式の配当金は、そもそも所得税が源泉徴収された(天引された)うえで支払われます。

 

納税が済んでいるため、基本的に配当金の確定申告はいらないということになります。

 

 

 

②譲渡所得:保有している口座によって確定申告の要否が変わる

 

株を売買している場合、そこから得た利益(所得)に税金がかかります。

 

この場合、基本的に株の売却益には所得税の源泉徴収がされていないので自身で確定申告を行う必要があります。

 

 

 

口座の種類については、以下で紹介します。

 

 

 

証券会社の口座の種類


 

株の譲渡所得は、どの口座で株式を保有しているかによって確定申告の要否や手続きが少し変わります。

 

口座の種類には主に下記の3種類があります。

 

①一般口座

株の譲渡所得と税金計算を自分で行う必要があります。

→株の配当所得と譲渡所得などを合わせて20万以上の場合、自分で確定申告が必要。

 

 

②特定口座(源泉徴収あり)

配当金、株の売買の税金計算と源泉徴収を証券会社が自動的に行ってくれます。

原則確定申告が不要。

 

 

③特定口座(源泉徴収なし)

証券会社で「年間取引報告書」を作成してくれますが、株の売買から生じた所得に対しては源泉徴収されていません。

ただ、この「年間取引報告書」を使うと確定申告が簡単にできます。

→一般口座の場合と同様に株式売買や配当の利益などの所得を合わせて20万以上の場合、自分で確定申告が必要。

 

 

 

特定口座(源泉徴収あり)を開設しておくのが税金手続き的には楽です!

 

 

 

配当所得は確定申告した方が得?→状況によりけり!


 

配当所得に関しては、原則確定申告は不要だということは前述したとおりです。

とはいえ、確定申告をすることもできます。

 

 

自身の状況と照らし合わせて、あえて確定申告したほうが得をするケースがあります。

 

 

上場株式等(大口株主等以外※)の配当所得の確定申告の選択肢は3つです!

※大口株主等→上場会社等の株式の3%以上を有する者

 

①「総合課税」を選択して確定申告

②「申告分離課税」を選択して確定申告

確定申告しない

 

 

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①「総合課税」で確定申告する

配当所得とその他の所得(給与所得など)を合計し、合計の課税所得金額に税率をかける課税方法です。

 

すでに払っている所得税があればそれと精算することになります。(多く払い過ぎの分は還付される

 

税率は累進税率ですので、合計の課税所得金額に応じて変化します。

 

メリット

配当控除を受けることができる。(配当金があるときの税額控除)

 

合計の課税所得金額が3,299,000円までの場合、税率が源泉徴収税率(15.315%)より低くなる

 

→所得税が還付される

 

デメリット

確定申告をすることにより、配当所得が本人の合計所得に含まれる

 

→・配偶者控除や扶養控除の判定に含まれる(103万の壁)

・社会保険料の計算対象に含まれ、保険料が増額する可能性がある

 

 

 

②「申告分離課税」で確定申告する

上場株の配当所得を総合課税に含めず、他の所得から分離して課税する課税方法です。

 

税率は所得税15%、住民税5%です。

 

メリット

上場株式の売却損が出た場合、その売却損と配当所得を相殺する「損益通算」が利用できる。

 

「損益通算」で控除しきれない損失は翌年以後3年間、確定申告をすることで上場株式譲渡所得や上場株式配当所得から「繰越控除」ができる。

 

株式の売却損がある年は、申告分離課税を選択すると節税が可能!

 

デメリット

配当控除が使えない

 

確定申告をすることにより、配当所得が本人の合計所得に含まれる

 

→・配偶者控除や扶養控除の判定に含まれてしまう(103万の壁)

・社会保険料の計算対象に含まれ、保険料が増額する可能性がある

 

 

★注意点

特定口座(源泉徴収あり)を保有しており、株の売却益が出た年に過去の「繰越損失」と相殺するために確定申告すると税金的には得になります!

ですが、株の売却益が社会保険の計算対象になって社会保険料が上がり、逆にトータルの負担が増えてしまうケースがあるので注意が必要です!!

 

 

 

③確定申告しない

既に所得税15.315%住民税5%の源泉徴収が完了しているので、確定申告しないのもあり!

 

メリット

確定申告しないので、配当所得は本人の合計所得に含まれない。

→・配偶者控除や扶養控除の判定に含まれることがない(103万の壁)

・社会保険料の計算対象に含まれず、保険料に影響を及ぼさない

 

デメリット

株式の売却損が出ていたり、合計の課税所得額が3,299,000円までの場合は所得税の還付や節税ができない。

 

 

自身の所得状況と照らし合わせる


 

このように、株には配当金や売買の儲けがありそれぞれの税金のかかり方が微妙に異なるのでややこしいです。

また、確定申告をするorしないの選択肢もあって難しい点が多いと思います。

 

特に社会保険との関連は、もし株の売却益の状態で申告すれば社会保険が増えるかもしれないな~と頭の片隅に置いておくことが大事かもしれません。

 

 

最後に、今回のまとめです。

 

☆株の配当金は原則確定申告の必要なし

 

☆株の売却益は原則確定申告の必要あり

 

☆特定口座(源泉徴収あり)を開設しておけば配当金も売却益も自動的に税金計算と源泉徴収をしてくれるので確定申告が不要

 

☆株の売却損がでたとき、分離課税で確定申告をすれば配当金と売却損を相殺でき、さらに翌年以降3年間損失を繰り越すことができる。

 

☆繰越損失と相殺するために株の売却益が出た年に確定申告するときは、配偶者控除や社会保険の観点から注意が必要になる

 

 

あすか税理士法人

【スタッフ】 西浦 翔太