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国際税務2022.02.09 「デジタル課税」とは?「恒久的施設」とは?ざっくりと解説

2021年10月8日、OECDで、加盟136の国・地域で国際課税に関する最終合意がなされ、製造業が中心だったおよそ100年前からの国際課税ルールが大きく転換されることになりました。

合意の内容には大きく「デジタル課税」と「ミニマムタックス」の2つの柱があります。

 

デジタル課税」と「ミニマムタックス」に関する記事はこちら!

 

今回は主に前者の「デジタル課税」について、そもそもなぜこのような転換が必要なのか?転換の結果どうなるのか?についてざっくりと書きたいと思います。

 

この転換については、100年前からの恒久的施設についての考え方が大きく関わっています。

 

 

恒久的施設とは?


 

簡単に言うと、事業拠点のことです。

Permanent Establishmentの略で一般的にPEと呼ばれています。

PEは現在大きく以下の3種類に区分されています。

・支店PE→支店・事務所・工場などの場所

・建設PE→建設作業などの役務提供を、1年を超えて行う場所

・代理人PE→外国企業などが国内に置く代理人で、事業に関して契約を締結する権限のある者のこと

建設作業等の「サービス」や代理人等の「人」もPEに該当する点に注意が必要だといえます。

 

 

「PEなければ課税なし」の大原則


 

PEの最も重要な原則として、PEがなければ、その国で行った事業所得に対して、課税されないというものがあります。

「PEなければ課税なし」は、その原則を表現した格言です。

この原則は、現在の国際課税の最も基本的な原則として世界共通のルールとして認識されています。

 

 

IT技術の発展→「PEなければ課税なし」の限界→「デジタル課税」


 

従来は企業が海外進出をする場合、現地に工場や営業所を作ってモノを製造・販売するような形態が当たり前でした。

このようなとき、上述の「PEなければ課税なし」の原則通りその進出先の国はPEの存在を根拠に、進出企業に課税することが可能となるわけです。

 

しかし100年後の現在はどうでしょうか?インターネットの発展により、音楽・映像・サービスなどをネットで買える時代になりました。また、インターネットで販売するデジタル的商品は1度作ってしまえば繰返し販売することが可能で、配送が不要で手間がかからないため原価が低く在庫リスクがありません。その結果、GAFAをはじめとした超大手IT企業が出現してきたのです。

 

このようなIT企業は各国に営業所などのPEを置くことなく、インターネットを通じて全世界のユーザーにサービスを提供しています。そのため莫大な利益を得ているにも関わらず、消費者のいる国にPEを持たないから課税できないということが大きな問題となっていました。

 

このような巨大グローバル企業の新たなビジネスモデルに対応する課税制度が、「デジタル課税」です。

 

 

「デジタル課税」とは?


 

デジタル課税は、「市場国への課税権の付与」と言えます。

 

要するに、あなたの会社のサービスの消費者がいる国に税金を納めなさいということです。これはPEの有無に関係なく市場国(消費者のいる国)に課税権を認めることになるため、「PEなければ課税なし」の大原則が崩れることになります。

 

対象会社は、全世界100社程度の巨大グローバル企業となる見込みで、日本企業はわずかとなる見通しです。(「全世界売上が200ユーロ超かつ、利益率10%超の多国籍企業」が対象です。)

 

しかし、今後この制度の運用結果次第では、さらに多くの企業が対象となることも予定されており、今後の動向を注目していく必要があるといえます。

 

 

「デジタル課税」で日本はどうなる?


 

日本の税収が増加する可能性があると指摘されています。

現時点で、デジタル課税の対象となる巨大グローバル企業はアメリカ企業が多くを占め、日本企業は数社程度とみられています。

 

すなわち、日本はデジタルサービスの消費国といえるのです。

 

アメリカの巨大企業のサービスを日本で消費することでアメリカ企業が日本での納税義務を負うこととなるため、日本の税収が増える可能性があるという理屈です。

 

OECDによると、日本のような消費国に対して毎年日本円で14兆円を超える利益が課税対象として配分されると推計しており、税収の面でプラスが大きいと評価する専門家の指摘があります。

 

 

まとめ


 

現時点では日本企業では対象は数社に絞られるため、あまり影響がない事項ではありますが、今後この制度の運用次第では、さらに多くの企業が対象となることも予定されており、制度内容の動きや法改正について、注目していくべきかと思います。

それでは、今回のまとめです。

 

・今までの「PEなければ課税なし」の原則が崩れる

・「デジタル課税」は消費者のいる国で課税される。

・「デジタル課税」は当面は世界の超大企業が対象、日本企業は数社の見込み。

・日本の税収が増える可能性がある。

 

 

あすか税理士法人

【スタッフ】西浦翔太