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会計制度2018.05.01 収益認識に関する会計基準等の概要③

5.返金不要な契約における取引開始日の顧客からの支払

契約における取引開始日(またはその前後)に、顧客から返金が不要な支払を受けることがあります。この場合、①その支払が約束した財・サービスの移転を生じさせるものか、②将来の財・サービスの移転に対するものかを判断する必要があります。

①の場合には、その財・サービスの移転を独立した履行義務として処理するかどうかの判断が必要となります。

②の場合には、将来その財・サービスを移転(提供)する時に収益を認識することになります。ただし、その支払によって契約更新オプションを顧客に付与する場合で、そのオプションが重要な権利を顧客に提供する場合には、この支払について、契約更新される期間を考慮して収益を認識することとされています。

 

 

6.ライセンスの供与

ライセンスの供与については、他の財・サービスを移転する約束と別個のものかどうかを検討する必要があります。別個のものでない場合には、それらを1つの履行義務として処理する必要があります。

別個のものである(独立した履行義務である)場合には、その約束の性質が次のいずれに該当するものかを判定します。

 

①ライセンス期間にわたり企業の知的財産にアクセスする権利を提供する

②ライセンスが供与される時点で存在する企業の知的財産を使用する権利を提供する

 

①の場合は、一定の期間(ライセンス期間)にわたり充足する履行義務として処理され、②の場合は、一時点(顧客がライセンスを使用してその便益を享受てきるようになった時点)で収益を認識することとなります。

①と②の判断基準については、次の3つの要件のすべてに該当する場合は、①に該当するものとされています。

 

・ライセンスにより、顧客が権利を有している知的財産に著しく影響を与える活動を企業が行うことが、契約により定められているか顧客により合理的に期待されている。

・顧客が権利を有している知的財産に著しく影響を与える企業の活動により、顧客が直接的な影響を受ける。

・顧客が権利を有している知的財産に著しく影響を与える企業の活動の結果として、財・サービスが顧客に移転しない。

また、知的財産に著しく影響を与える企業の活動として、次の2つが示されています。

・知的財産の形態(デザインやコンテンツ)または機能性を著しく変化させると見込まれること

・顧客が知的財産からの便益を享受する能力が、その活動により得られるかその活動に依存していること(例として、ブランドからの便益は企業がその知的財産の価値を補強・維持するための活動を行うことにより得られるか、その活動に依存している場合が多いとされています。)

 

さらに、知的財産のライセンス供与に対して売上高や使用量に基づくロイヤルティが、その知的財産のライセンスのみに関連しているか支配的な項目である場合には、次のいずれか遅い方で収益を認識することとされています。

 

・知的財産のライセンスに関連して顧客が売上高を計上する時または顧客が知的財産のライセンスを使用する時

・売上高や使用量に基づくロイヤリティの一部または全部が配分されている履行義務が充足(部分的な場合を含む)される時

 

 

7.買戻契約

(1)企業が商品等を買い戻す義務(先渡取引)または企業が商品等を買い戻す権利(コール・オプション)

このような場合、契約上の約束や企業の意思で商品等を企業が買い戻すことができるため、顧客はその商品等に対する支配を獲得していないと考えられます。そこで、以下のように取り扱うこととされています。

買戻価格が当初の販売価格より低い場合…その契約をリース取引として処理する

買戻価格が当初の販売価格より高い場合…その契約を金融取引として処理する

金融取引として処理するとは、商品等を企業が引き続き認識し、顧客から受け取った対価については金融負債(借入金等)として認識します。当初の販売価格と買戻価格との差の部分は金利(または加工・保管コスト)として認識します。

 

(2)企業が顧客の要求により商品等を買い戻す義務(プット・オプション)

当初の販売価格よりも低い価格で買い戻す義務がある場合には、取引開始日において、顧客がプット・オプションを行使する重要な経済的インセンティブを有しているかどうかを判断することとされています。

重要な経済的インセンティブを有していると判断される場合…その契約をリース取引として処理する

重要な経済的インセンティブを有していないと判断される場合…返品権付の販売として処理する

当初の販売価格よりも高い価格で買い戻す義務がある場合で、その買戻価格が予想される時価よりも高い場合は、金融取引として処理することとされています。

一方、その買戻価格が予想される時価よりも低い場合で、顧客がプット・オプションを行使する重要な経済的インセンティブを有していないと判断される場合は、返品権付の販売として処理することとされています。

 

<次回につづく>