お問い合わせ

BLOGブログ

国際税務2022.07.27 タックスヘイブン対策税制④~外国関係会社が連結納税等を導入している場合~

今回も引き続きタックスヘイブン対策税制(CFC税制)についてBlogを書きたいと思います。

今回は外国子会社にて「連結納税制度」や「パススルー課税」の適用を受けている場合の取扱いについてです。

タックスヘイブン対策税制の適用有無を判断する租税負担割合や、実際に加算する場合のその適用対象金額の計算方法など、基本的な考え方を確認したいと思います。
今回のBlogは、国税庁HPで公開されている“連結納税規定等が適用される外国関係会社の適用対象金額等の計算方法等の改正に関するQ&A”に基づいています。

 

 

1.対象となる外国関係会社と基本的考え方


 

今回のBlogの対象となる外国関係会社は、企業集団等所得課税規定の適用を受ける外国子会社等となります。

企業集団等所得課税規定とは下記三つを総称したものです。

(1)連結納税制度規定(本店所在地国規定)
A国の連結納税制度の適用をうけるA国法人(外国関係会社)を指します
例えば米国法人Aと米国法人Cが連結納税を適用している場合の、米国法人AとCが該当します。
ここで言う連結納税制度は「企業集団の所得に対して法人税を課することとし、かつ、当該企業集団に属する一の外国法人のみが連結納税申告書に相当する申告書を提出する制度」を指します。
アメリカやフランスの連結納税制度は基本的にこれに該当し、また賦課課税方式による連結納税制度もこれに該当し得ます。
一方で、イギリスのグループ・リリーフ(損益通算は行うが申告は各社で実施)やドイツのオルガンシャフトは企業集団等所得課税規定に該当しない点に留意が必要です。

 

(2)第三国における連結納税制度規定
B国法人(無税国等)がA国法人(有税国)とみなされ、A国の連結納税制度の適用を受けるB国法人(外国関係会社)を指します
例えばバミューダ法人が米国税法により米国法人として取り扱われたうえで米国の連結納税の対象となるケースがあり、この場合のバミューダ法人が該当します。
これは無税国等に所在する外国法人が属する企業集団の所得に対して、第三国(有税国、アメリカ等)が企業集団所得について集団に属する一の外国法人のみが納税申告書を提出する場合等が該当します。
他の二つに比べるとよりレアかもしれませね。

 

(3)パススルー課税
外国法人の所得を当該外国法人の株主等である者の所得として取り扱うこととする当該外国法人(外国関係会社)を指します。
例えばアメリカで株主等が納税義務者となるパススルー課税を選択したLLC(外国関係会社)が該当します。
米国ではパススルー課税を活用した節税策があり、特にLLCを組み込んだM&Aスキームが実施されるケースもあり、CFC税制判定時には注意が必要です。
これらの企業集団等所得課税規定の適用をうける外国関係会社について、タックスヘイブン対策税制に関する判定や計算を行う際は「企業集団等所得課税規定の適用がないものとみなして」計算します。

これが今回のBlogの結論です。
ただ、「適用がないものとみなして」と言われても実務的には色々な疑問が出てくるはずです。
以下、実務的に気になる点をQ&Aの内容を踏まえながら確認したいと思います。

 

2.租税負担割合


 

租税負担割合計算における分母、つまり当該外国関係会社の課税所得については、外国関係会社の各事業年度の決算に基づく所得金額につき、その本店所在地国の外国法人税に関する法令の規定により計算した所得金額に一定の加減算を加えた金額とされています。
もうお分かりかもしれませんが、「外国法人税に関する法令の規定により計算した所得金額」について企業集団等所得課税の規定適用が無かったものとした場合の所得となります。

一方分子ですが、こちらも企業集団等所得課税の規定適用がなかった場合の単体納税での法人税額を計算した金額となります。この場合に、その適用が法人の選択によることとされている税額控除規定については、適用せずに計算しても良いこととなっています(措通66の6-24の3)。

理論的には違和感ないかもしれませんが、実際は大変な作業ですね。

 

3.適用対象金額


 

タックスヘイブン対策税制において、内国法人において加算される可能性がある適用対象金額計算は、日本法令基準又は現地法令基準により基準所得金額を計算し、そこから繰越欠損金や納付法人税額を控除した金額とされます。
この「現地法令基準」により基準所得を計算する際に「企業集団等所得課税規定」を除くことになりました。
例えばパススルー課税が適用されている場合、パススルー課税が無かったものとみなして、株主ではなく実際に所得が生じた法人にて課税等が行われたと想定して計算します。
企業集団課税による計算を取りやめ、単体納税制度の規定により計算し直すイメージです。
ゼロから計算し直すのが原則ですが、合理性がある計算が出来る場合にはその方法も認められています(措通66の6-21の4)。
「合理性がある」とは、企業集団等所得課税申告書に記載された企業集団等所得計算の基礎となる書類等に記載された金額を基準に必要な調整を加えるような方法が考えられます。
なお、ゼロから計算し直す場合に選択肢がある制度の適用については、企業集団等所得課税で選択した規定は単体所得課税計算でも選択したものとして計算することになります。

また、適用対象金額計算において基準所得金額から納付法人税額を控除しますが、この納付法人税額も企業集団等所得課税が無かったものとした場合の法人税額を控除することになります。

 

4.外国税額控除


 

タックスヘイブン対策税制の適用を受け、外国関係会社の所得が日本親法人にて合算課税される場合は、当該外国関係会社が支払った外国法人税額について二重課税排除のため外国税額控除が出来ることになっています。
この外国法人税額について企業集団等所得課税の適用がある場合には、その適用が無いものとした場合に(単体法人とした場合に)課税されるであろう外国法人税額と読み替えることになります。
実際に納付した外国法人税額ではなくなる点に注意です。

 

5.適用対象金額の具体例(米国法人)


 

米国で連結納税を導入している場合、連結子法人の所得計算を行ってCFC税制の適用有無判定や計算を行う必要があります。

その際の連結子法人の所得はゼロから計算が原則となりますが、連結申告の数値を使って必要な補正を加える簡便法も認められています(措通66の6-21の4)。

その具体例が冒頭で挙げた国税庁Q&AのQ2に載っているので内容をアレンジしてご説明します。

 

【前提】

・内国法人P社の外国関係会社である米国法人S1社が、そのS社の子会社である米国法人S2社と連結納税を実施

・S1社は連結申告書にS1社とS2社の所得金額をそれぞれ計算した計算明細書(Supporting Statements)を作成、Form1120(連結申告書)に添付

 

【問い】

P社にてCFC税制の適用有無判断と計算を行う際、S1・S2の各社所得をゼロから計算する代わりに簡便法を使いたい場合、計算明細書の各社所得をベースにどのような調整を加えれば合理的な方法として認められるか?

 

【答え】

Q&Aでは下記のような調整を行うことで合理的な方法と認められると記載があります。あくまで例示なのでこれらを満たせば全てOK、ではございません。あくまでイメージをつかむための答えとご理解下さい。

・付属計算明細書でS1、S2の所得金額を算出した上で、連結法人間取引の除去(Eliminations)や連結ベースの調整計算(Adjustments)を行った上で連結所得を計算しているので、P社で計算する際には、連結法人間取引除去等前の金額を利用

・米国連邦税法における非課税所得にかかる規定(受取配当等の所得控除額等)及び繰越欠損金控除の規定を適用したものとする調整を加える

・企業集団等所得課税規定の適用にあたり選択された規定に相当する規定は、その規定の適用要件等からその外国関係会社が適用を受けることが出来ないものを除き、その規定の適用を受けたものとする調整を加える

 

6.まとめ


 

最後におさらいします。

日本親会社でタックスヘイブン対策税制の適用を考える場合、海外子会社で連結納税やパススルー課税などの企業集団等所得課税の規定適用がある場合、それらの適用がないものとみなして考えます

また、実際に計算等をするには上記具体例を見て頂ければ分かるように、基本的に、適用対象金額をゼロから計算するよりは、連結申告書の数値等を利用する方が簡便ですが、それでも現地の税制を理解しておく必要があります

 

CFC税制は海外子会社の期末から2ヶ月後を含む内国法人の事業年度で取り込まれるため、仮に決算月がグローバルに揃っていれば1事業年度後の申告作業に影響を及ぼすことになります。余裕をもって準備しておくことが肝要です。

 

あすか税理士法人

【国際税務担当】高田和俊

プロフィールはこちらをご覧下さいませ。