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国際税務2017.03.22 【国際税務】無形資産に係る移転後の再課税(BEPS行動計画8-10)

先日の日経新聞に掲載されていましたが、財務省は日本企業が知的財産を軽課税国へ移転することによる節税策をとりにくくする方法を検討しています。

 

これは、BEPS行動計画8-10 に根ざしたもので、既に諸外国では実施されており、日本ではそれに追随するかたちでグローバルな協調姿勢を取った形となります。

 

具体的かつ簡潔に説明したいとおもいます。

 

例えばある特許を日本企業が取得し、その特許権を海外子会社(低課税国)に100で譲渡したとします。
当該特許は素晴らしい特許で海外子会社に莫大な利益をもたらした場合に問題が生じます。
そうしたときに疑問が一つ浮かんできます。

 


100で譲渡したことが適正であったかどうか
、です。

 

従前の法律では日本企業側(納税者)が100が妥当な数値である、とした場合に、その算定根拠資料は当然ながら納税者が保有しているものであり、税務当局はその後追いで合理性があるかをチェックすることしかできず、否認しづらい状態でした。

 

これが、今検討されている改正案では「5年の商業期間で実際に得る収益と、当初設定金額との乖離が20%以上」である場合には、差額分に対し課税されてしまうこととなります。

つまり特許権譲渡『』の実態数値に基づき、再課税が出来る仕組みへ移行されることが検討されています。

 

BEPSによれば、全ての取引について再課税するべきでは無いとされており、例えば

・当初収益予測を行った詳細な証拠
・当初予測と実態数値の乖離について予見不可能であったことを裏付ける証拠

がある場合などは、再課税すべきではないとなっています。
(BEPSでは『評価困難な無形資産(HTVI)』に関する「適用免除規定」として記載されています)

 

日本の税制がどのような措置を執るのか注目(2018年度改正予定)されますが、まずは第一段階として何よりも大事なのは

・無形資産の特定
・無形資産の開発・改良・維持・保護・使用に関する具体的で経済的に重要なリスクの特定

となります。

 

無形資産は必ずしも「所有者に重きを置かない」点に注意が必要です。

 


一番大事なのは誰が各リスクを負担するのか
、です。

 

まずはそのリスク負担を明確にし、その次に、再課税されない取引に該当するのかの検討が必要になるものと思われます。

 

無形資産課税は企業が予期せぬところにそのリスクがあるものだと思います。
まずはリスク把握を行い、そのリスクの大きさを検討し、そこから対処方法を検討することが重要だと思います。