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国際税務2026.06.17 米国IRAの日本での確定申告

退職や相続など生活環境の変化により米国から日本へ居住地を移される方が一定数いらっしゃいます。

その際によくご質問を受ける中に米国で加入しているIRAは日本でどのように確定申告すればよいか、というものです。
今回はこの米国で加入しているIRAの日本での確定申告について解説したいと思います。

 

1.米国IRAとは


 

米国IRAとは、「Individual Retirement Account」といい税制優遇のある退職年金制度です。

日本のiDeCoやつみたてNISAの仕組みに似ており、IRAはアメリカで働くビジネスパーソンにとっては401kと並び老後の資金を作るための最もポピュラーな税制優遇口座といえます。

 

IRAには主に以下の2つのタイプがあります。

〈Traditional IRA〉

拠出時に所得控除が受けられるため、米国において所得税の減額効果があります。ただし、将来退職して資金を引き出すタイミングで受給額に応じて所得税が課税される仕組みです。

 

(引き出しのルール)

引き出しはIRS(内国歳入庁)によりルールが設けられています。

59歳半未満の早期引き出し→原則ペナルティがあります(原則10%の追加税額。※一定の免除規定あり)

59歳半~73歳→自由に引き出しが可能。引き出した金額に対して、所得税率が課税されます。

73歳以上→義務的な引き出しがスタート。米国籍やグリーンカード保有などの米国居住者の場合73歳に達すると必須最低分配金の計算に基づき、毎年一定額を引き出す必要があります。引き出し不足はペナルティの対象となります。

 

〈Roth IRA〉

拠出時は税金が控除された後の資金にて積立を行いますが、将来資金を引き出す際は運用益も含めて非課税となります。

 

(引き出しのルール)

元本部分→年齢に関係なく、自分が積み立てた元本部分はいつでも引き出し可能です。

運用益の引き出し→利益部分の非課税での引き出しは、

①59歳半以上であること並びに

②最初に口座開設して拠出してから5年以上経過していること

という2つの要件を満たす必要があります。

 

なお、日本に生活の拠点を移した米国非居住者であってもForm W-8BENの提出など一定の手続きは必要ですが受け取ることが可能です。

 

2.米国IRAは日本の公的年金に該当するか


 

米国IRAは日本の法制度によるものではないことから日本の税制上明確な規定はありません。

従いまして、日本の税制に当てはめて検討を行う必要があります。

IRAの引き出しが公的年金に該当する場合は公的年金控除が利用できることから定期的に引き出しを行い、公的年金扱いとして申告するケースもあるようです。

この点、所得税法35条において公的年金控除は公的年金に該当するものにのみ適用可能とされています。

公的年金の範囲は所得税法35条において列挙されていますが、米国IRAのよな年金積立は政令で定めると規定されています。

 

政令には次のように規定されています。

所得税法施行令第82条の2第2項第1号において、これらの年金というのは「第72条第3項第1号又は第9号(退職手当等とみなす一時金)に規定する制度に基づいて支給される年金」と記載されています。

 

そして、所得税法施行令第72条第3項第9号においてはじめて、「外国の法令に基づく保険又は共済に関する制度で法第三十一条第一号及び第二号に規定する法律の規定による社会保険又は共済に関する制度に類するものに基づいて支給される~」という外国の年金に係る規定が出てきます。

 

この条文でいう法第三十一条第一号及び第二号というのは国民年金法や厚生年金法といった国の社会保険制度に基づく年金を指しています。

 

つまり、米国の年金制度でこの規定に該当するものは米国政府が管轄する「ソーシャル・セキュリティ(Social Security:社会保障年金)」と考えています。

 

以上より、IRAは民間の金融機関等に口座を開設して個人の自助努力で老後資金を形成する「私的年金」の性質を持つことから、日本の法令でいう公的年金には該当しないと考えられます。

 

 

3.米国IRAの日本での課税方法


 

上記の通り、米国IRAは日本の公的年金には該当せず、通常の「雑所得」の区分になると考えられます。

私的年金に該当する場合は一般の雑所得という扱いとなることから、その年の受取額から、その受取額に対応する元本部分(過去に拠出した掛金など)を「必要経費」として差し引いた残りの利益部分が課税対象という一般的な取り扱いとなります。

なおこの規定上、外国で所得控除を受けている場合には控除できないといった規定が存在しないので、米国で税制優遇を受けていたとしても日本ではあくまで拠出した金額を控除することが妥当と考えています。

 

いかがでしょうか。

同様の制度はその他の諸外国にもあります。

例えばイギリスのSIPP(Self-Invested Personal Pension)、カナダのRRSP(Registered Retirement Savings Plan)、オーストラリアのSuperannuationなどは有名ではないでしょうか。

各国で制度は微妙に異なるので毎回精査は必要ですが、日本居住者としてこれらの資金を引き出す場合は所得区分はしっかり検討を行った上で申告を行ってください。

 

 

あすか税理士法人

【国際税務担当】街 有帆

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