お問い合わせ

BLOGブログ

国際税務2019.05.08 海外関連会社へ支払う利息は費用とならない?(過少資本税制)

新たに日本でビジネス(投資)をするための資金調達の手段は?と考えた時、一般的には以下の2通りの方法が考えられます。

 

どちらの方法が税務的にはメリットがあるでしょうか。

 

資金調達

 

1.海外の親会社から1億円の出資を受け、配当で還元する。

2.海外親会社から1億円借入、5年間元金と利息を支払う。

 

日本の税負担を軽くしたいという経営者なら、後者を選択し、利息を費用にしようと考える事は自然なことです。

 

ですが、当然、そのような租税回避行為はすべて容認されているわけではなく、3つの規制が設けられています。

 

3つの規制

一つは利率に対する”移転価格税制”の適用、二つ目は”過少資本税制”、三つ目は”過大支払利子税制”です。

 

今回はこのうち過少資本税制について、次回は過大支払利子税制について解説します。

 

過少資本税制とは

海外関連会社から過大な貸付を受け入れることによる企業の租税回避を防止するための制度で、出資と貸付の比率が一定の割合を超える部分の支払利息は費用として損金算入ができません。

 

簡単に言うと、海外関連者から資本の3倍を超える借入をすると、資本の3倍を超える部分に対応する海外関連者への支払利息の損金算入は認めない。という制度です。

 

設例
資本金等1千万円(海外親会社の100%出資)
海外親会社からの借入金1億円(期首から期末まで元金返済なし)
利息1千万円

 

この場合の損金不算入額は700万円です。

 

700万円=1千万円×(1億円-1千万円×3)÷1億円

 

少し複雑ですが計算式は下記のようになります。

国外株主等への総支払利子×(国外株主等に対する平均負債残高-国外支配株主等の資本持分×3)÷国外支配株主等に対する平均負債残高

 

〈用語〉

 

国外支配株主等とは
①当該法人が発行済み株式の50%以上の株式等を直接又は間接に保有される関係
②当該法人と外国法人が同一の者によってそれぞれその発行済株式等の50%以上を直接又は間接に保有される場合の両法人の関係
③当該法人の事業の方針の全部又は一部につき実質的に決定できる関係(資金、人事、権利関係で判断)

 

平均負債残高とは
日々、各月末、年間を通じた帳簿の平均残高など合理的は方法により計算した金額

 

国外支配株主等の資本持分とは
内国法人の自己資本額×国外株主等の内国法人に対する持分割合

 

自己資本額とは
内国法人の総資産の帳簿価額-総負債の帳簿価額

上記の金額が法人税に規定する資本金等の額に満たない場合は資本金等の額となる。

この場合の総負債とは、外部負債や内部負債を問わないので、貸倒引当金、税務上損金不算入の税金未払金、各種引当金も含まれます。

 

なお、個人については過少資本税制の適用はありません。