


令和8年4月、消費税法等の一部が改正されました。
今回の改正には、インボイス制度に関する経過措置の見直しをはじめ、輸出免税の適用要件、暗号資産等の取扱い、不動産取引の仲介手数料に関する変更が含まれています。
事業者の消費税申告や日常的な取引に影響する内容もあるため、適用開始時期とあわせて確認しておきましょう。

インボイス制度に関しては、主に次の2つの経過措置が見直されました。
・小規模な個人事業者を対象とする「3割特例」
・免税事業者などからの仕入れを対象とする「7・5・3割控除」
内容については以前ご紹介させていただきましたがおさらいいたします。
1.小規模な個人事業者を対象とする「3割特例」
インボイス制度の開始をきっかけに、免税事業者からインボイス発行事業者となった小規模事業者については、納付税額を売上税額の2割とする「2割特例」が設けられていました。
この2割特例の終了後、一定の個人事業者を対象として「3割特例」が設けられます。
3割特例を適用すると、消費税の納付税額を売上税額の3割として計算できます。
例えば、売上げに係る消費税額が100万円の場合、納付税額は原則として30万円となります。実際の仕入税額を一件ずつ集計する必要がないため、対象となる個人事業者の申告負担を軽減できる制度です。
3割特例の主な対象者
3割特例の主な適用要件は、次のとおりです。
・個人事業者であること
・基準期間の課税売上高が1,000万円以下であること
・インボイス発行事業者の登録を受けていること
・インボイス登録を受けたことにより消費税の課税事業者となっていること
法人は3割特例の対象になりません。
また、基準期間の課税売上高が1,000万円を超える場合など、インボイス登録とは関係なく課税事業者となる課税期間については、原則として適用できません。
3割特例の対象期間
3割特例は、個人事業者の令和9年分と令和10年分の消費税申告が対象です。
事前の届出は必要なく、消費税申告書に3割特例の適用を受ける旨を記載することで適用できます。
ただし、3割特例の終了後は、一般課税または簡易課税によって申告することになります。将来的に簡易課税制度へ移行する場合は、届出書の提出時期にも注意が必要です。
2.免税事業者などからの仕入れに関する「7・5・3割控除」
インボイス制度では、原則として、インボイス発行事業者以外の者から行った課税仕入れについて、仕入税額控除を受けることができません。
ただし、制度開始後の負担を緩和するため、免税事業者などからの課税仕入れについても、仕入税額相当額の一定割合を控除できる経過措置が設けられています。
今回の改正では、この経過措置が2年間延長され、控除できる割合と期間が次のように見直されました。
| 対象期間 | 控除できる割合 |
| 令和5年10月1日~令和8年9月30日 | 80% |
| 令和8年10月1日~令和10年9月30日 | 70% |
| 令和10年10月1日~令和12年9月30日 | 50% |
| 令和12年10月1日~令和13年9月30日 | 30% |
| 令和13年10月1日以後 | 控除不可 |
当初は、令和8年10月から控除割合が50%になる予定でした。改正後は、まず70%へ引き下げ、その後50%、30%と段階的に縮小されます。
ただし、基準期間が1億円以下等の事業者につき1万円未満の取引をインボイス不要とするいわゆる少額特例については延長はなく予定通り令和11年9月30日で終了いたします。
年間1億円を超える仕入れには制限
7・5・3割控除については、同一のインボイス発行事業者以外の者から行った課税仕入れの年間合計額が税込金額1億円を超える場合、その超過部分には経過措置を適用できません。
改正前の上限額は10億円でしたが、今回の改正により1億円へ引き下げられました。
この制限は、令和8年10月1日以後に開始する課税期間から適用されます。
例えば免税事業者である方から事業用賃貸建物などを仕入れを行う事業者は、注
意が必要となります。
商品の輸出や国外への貸付けなど、一定の輸出取引には消費税が免除されます。
改正前は、輸出許可書などの書類を保存することが、輸出免税を適用するための主な要件とされていました。
今回の改正では、輸出代金を次のような方法で受け取る場合、追加の書類保存が必要になります。
・現金で代金を受け取る場合
・支払者が取引相手であることを明確に確認できない方法で受け取る場合
該当する取引については、従来の輸出許可書等に加えて、輸出先の国における輸入許可書に相当する書類を保存しなければなりません。電磁的記録による保存も認められます。
一方、銀行振込や荷為替手形など、支払者が取引相手であることを確認できる決済方法は、原則として今回の追加要件の対象になりません。
この見直しは、令和8年10月1日以後に行われる資産の譲渡等について適用されます。
現金で輸出代金を受け取っている事業者は、決済方法や保存書類を早めに見直しておく必要があります。
暗号資産と電子決済手段についても、消費税上の取扱いが変更されます。
暗号資産等の貸付けが非課税に
暗号資産の譲渡は、すでに消費税の非課税取引とされています。一方、暗号資産や電子決済手段の貸付けについては、改正前は消費税の課税対象でした。
改正後は、次の取引が非課税となります。
・暗号資産の貸付け
・電子決済手段の貸付け
暗号資産のレンディングなどを行っている事業者は、課税売上げと非課税売上げの区分を見直す必要があります。
課税売上割合の計算方法も変更
暗号資産の譲渡については、課税売上割合の計算上、これまで譲渡対価を算入しない取扱いとなっていました。
改正後は、暗号資産の譲渡対価の額の5%を、課税売上割合の分母へ算入します。
課税売上割合は、仕入れに係る消費税のうち、どの程度を仕入税額控除できるかを判断するための重要な割合です。
暗号資産の売買金額が大きい事業者では、仕入税額控除の金額に影響する可能性があります。
暗号資産等に関する改正は、事業者に一定の準備期間が必要となることを踏まえ、金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律の施行の日の属する年の翌年の 1 月 1 日(以下「施行日」といいます。)以後に国内において行う資産の譲渡等及び課税仕入れについて適用されます。具体的な適用日については、最新情報を確認する必要があります。
国内不動産の売買や賃貸借に関する仲介手数料についても、消費税の取扱いが見直されます。
改正前は、事業者が非居住者から依頼を受け、その非居住者が国内に所有する不動産を売却した場合の仲介手数料などについて、輸出免税が適用されることがありました。
改正後は、国内に所在する不動産等について行う次のような役務の提供は、依頼者が国内居住者か非居住者かにかかわらず、消費税の課税対象となります。
・不動産の売買に関する代理・媒介
・不動産の交換に関する代理・媒介
・不動産の賃貸借に関する代理・媒介
つまり、海外在住の所有者から国内不動産の売却を依頼された場合でも、その仲介手数料は輸出免税の対象にならず、国内で消費税が課税されることになります。
この改正は、令和8年10月1日以後に行われる資産の譲渡または貸付けに関する役務の提供から適用されます。
不動産仲介会社や不動産管理会社は、海外居住者との契約、見積書、請求書などにおける消費税の取扱いを確認しておきましょう。
まとめ
令和8年度の消費税法改正では、インボイス制度の経過措置を中心に、複数の重要な見直しが行われました。
制度ごとに適用開始時期が異なるため、自社に関係する取引を整理し、経理処理や請求書、契約書、保存書類を事前に見直すことが重要です。
あすか税理士法人
白川達也