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国内税務2026.04.15 節税商品じゃなくなる⁉

 

 

ここ数年、相続税対策の世界では「貸付不動産」や「小口化不動産」が大きな注目を集めてきました。
理由はシンプルで、“評価額が下がる=相続税や贈与税が減る” という構造が明確だったからです。

 

しかし、令和8年度税制改正で状況は一変することとなります。

令和8年度税制改正で「貸付不動産」「小口化不動産」は財産評価方法が変わります。

今回は「貸付不動産」や「小口化不動産」の改正について確認したいと思います。

 

 

1.改正の背景


 

なぜ今回の改正が行われたのか

 

 

背景①:相続税対策としての「過度な節税スキーム」が急増

 

貸付不動産や小口化不動産は、本来は資産運用の手段です。

 ところが近年は、

 

 ・取得直後に相続や贈与

 ・評価額が市場価格より大幅に低くなる

 ・借入を使って“評価差”を最大化

 といった「節税目的の利用」が急増。

 国税庁としては、“実態に合わない評価差による節税” を問題視していました。

 

背景②:小口化不動産の市場が急拡大

 

 1口100万円から投資できる商品が増え、相続税対策としての利用が一気に広が 

 りました。

 

 例えば、3,000万円で購入された物件の相続税評価額が500万円ほどになること

 もあるそうです。

 実際の市場価格と相続税評価額の乖離が大きく、この乖離を利用し生前に贈与

 し次の代に財産を移したり、贈与を受取った方が売却することにより資金へ換

 金することにより少ない税金で大きな財産を移すことも可能でした。(取得費

 を引き継ぐので所得税等の負担も低くなります。)

 そのため「節税のためだけに買われている!」という批判が強まっていました。

 

背景③:税制の公平性の観点

 

 同じ1億円の資産でも、

 

 ・現金で持つ人

 

 ・小口化不動産で持つ人

 

 で相続税が大きく変わるのは不公平だ、という議論が取り上げられました。

 こうした背景を踏まえ、今回の改正では次のような方向性が明確に示されまし

 た。

 「節税目的の不動産取得は認めない。実態に即した評価を行う」

 

 では、実際にどれほど税負担が変わるのか次の前提条件を基に確認していきた

 いと思います。

 

 

前提条件(相続人:配偶者+子1人)

 

相続財産 評価額
現金  

8,000万円

 

土地(小規模宅地特例適用後)  

1,000万円

 

家屋  

2,000万円

 

 

基礎控除:[ 3,000万円 + 600万円 × 2人 = 4,200万円 ]

 

を前提として貸付用不動産・小口化不動産の税負担を確認していきたいと思います。

 

 

2.貸付用不動産の税負担


 

 

貸付用不動産(土地家屋)の税負担

 

1億円の貸付不動産(土地家屋)を全額金融機関等で融資を受け購入した場合

相続時の借入れ残高9,000万円とする)

 

改正前

 

 評価額:5,000万円(家屋については固定資産税評価額や借家権割合、土地に

 ついては路線価、貸家建付地などを考慮)

 

改正後

 

 評価額:10,000万円※

 

※改正後は「取得後5年以内の相続」は 時価に変動がなければ1億円で評価(時

価が不明であれば取得価額×80%)

※2 貸付用不動産については小規模宅地等の特例、債務控除等や配偶者の税額

軽減などについては考慮しておりません。

 

 

①改正前の相続税(評価額5,000万円で計算)

 

課税価格

8,000 + 1,000 + 3,000 + 5,000 - 9,000 = 8,000万円

  

 課税遺産総額

 

 8,000万円 − 4,200万円 = 3,800万円

 

  相続税総額(概算)

 

  約 470万円

 

②改正後の相続税(取得価額1億円で評価)

 

 課税価格

 

  8,000 + 1,000 + 3,000 + 10,000 - 9,000 = 1億3,000万円

  

 課税遺産総額

 

  1億3,000万円 − 4,200万円 = 8,800万円

 

 相続税総額

 

  約 1,360万円

 

③税負担の増加額

 

  1,360万円 − 470万円 = 890万円

  → 税負担が890万円増える。

 

 

3.小口化不動産の税負担


 

 

小口化不動産を4,000万円で購入

改正前評価額:600万円

 

改正後評価額:4,000万円

※改正後は「相続時は常に取引価額で評価」

 

① 改正前に相続した場合

 課税価格

  5,000 + 1,000 + 3,000 + 600 = 9,600万円

 課税遺産総額

  9,600万円 − 4,200万円 = 5,400万円

 相続税総額

  約 710万円

 

② 改正後に相続した場合

 

 課税価格

  5,000 + 1,000 + 3,000 + 4,000 = 1億3,000万円

 課税遺産総額

  1億3,000万円 − 4,200万円 = 8,800万円

 相続税総額

  約 1,360万円

 

③ 改正前に贈与後、相続発生した場合

 

 贈与税(特例税率により計算)

  課税価格

   600 – 110 = 490

  贈与税額

   68万円

 相続税

  相続財産合計

   5,000 + 1,000 + 3,000 = 9,000万円

  課税遺産総額

   9,000万円 − 4,200万円 = 4,800万円

  相続税総額

   620万円

  贈与税・相続税合計

   688万円

 

④ 改正後に贈与後、相続発生した場合

 贈与税(特例税率により計算)

  課税価格

   4,000 – 110 = 3,890万円

 贈与税額

  1,530万円

 相続税

  相続財産合計

   5,000 + 1,000 + 3,000 = 9,000万円

 課税遺産総額

  9,000万円 − 4,200万円 = 4,800万円

 相続税総額

  620万円

 贈与税・相続税合計

  2,150万円

 

税負担の差

ケース 贈与税 相続税 合計税負担
①改正前に相続(600万円評価) 0万円 710万円 710万円
②改正後に相続(4,000万円評価) 0万円 1,360万円 1,360万円
③改正前に贈与 → 相続 68万円 620万円 688万円
④改正後に贈与 → 相続 1,530万円 620万円 2,150万円

 

 

→ 小口化不動産は改正前に贈与しておくかどうかで約1,500万円近くの差が出る。

 

■結論

今回の改正は、
「節税目的の不動産取得を排除する」
という国の強い意思が反映されています。

 

その結果、

 

・貸付不動産

→ 取得後5年以内の相続では節税効果ゼロ
→ むしろ 1,000万円近くの税負担増

 

・小口化不動産

→ 相続時は常に取引価額で評価
→ 贈与しておくかどうかで最大1,500万円近くの差

 

となる可能性がございます。

 

暦年贈与は相続開始前7年以内の贈与については相続税を計算する際に一度加算

することとなりますが贈与された時の評価額で加算することとなりますので税負

担の影響は大きくなることはないです。

 

贈与税の納税資金が足りない場合は、相続時精算課税制度を利用し一旦非課税の

枠まで贈与されるのも一案かと存じます。

 

小口化不動産については名義変更などに時間要するので令和8年末ではなくお早

めの検討をお勧めします。

 

あすか税理法人

白川 達也