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国際税務国内税務2022.03.02 輸入消費税の取扱い~税関調査での指摘事項と更正の請求~

物品を輸入する際に課税される輸入消費税。

貿易取引が多い会社様の税務トピックの一つとして『税関調査』が挙げられます。税関調査は指摘事項無しで終えるケースをあまり聞かないほど、何かしら指摘を受けているイメージがあります。

本日はそんな税関調査(事後調査)の概況や主な誤りのご紹介をしつつ、税関調査後に残念ながら修正申告をした際の輸入消費税の取扱いについて確認したいと思います。
 
 

1.税関調査の概況


 

税関調査での指摘事項関税や輸入消費税に関する税関による事後調査は、令和2年7月~令和3年6月までの一年間で715者に対して実施されています。
一年前は3,361者ですので、調査件数は激減しており、コロナが調査にも影響していることが明らかです。

調査対象715者のうち、申告漏れ等が600者とのことなので、84%が何らかの指摘を受けていることになります。
法人税の指摘率(非違件数÷実地調査件数)が75%程度であることを鑑みると、税関調査は指摘を受ける可能性が相対的に高いことになります。

申告漏れに係る課税価格が630億円(前年は1,231億円)、追徴税額が67億円(同116億円)に及びます。
 
主な申告漏れ事例が財務省HPに掲載されているのでご紹介します。
 
(1)自ら作成した低価インボイスによる輸入申告
正規の価格より低い価格のインボイスを自ら作成し、輸入申告しているパターンです。重加算税が課される可能性がある事案です。
 
(2)低価であることを知りながら是正せずにした輸入申告
輸入者は取引先から交付されたインボイスが正規の価格より低いことを知りながら、是正することなく税を免れる意図をもって輸入申告しているパターンです。こちらも重加算税の対象になり得ます。
 
(3)輸入者が提供した部材の金型費用の申告漏れ
これは難しいので事例で説明します。
A社(日本)はB社(外国)から自動車部品を輸入。その部品に組み込まれる部材はA社がB社に有償支給していたが、部材の金型費用についてはB社に請求していなかった。
B社から自動車部品を仕入れる際に、A社が負担していた部材の金型費用も含めて輸入申告すべきですが、当該金型費用を課税価格に含めずに輸入申告してしまうパターンです。
 
(4)非居住者からの委託を受けて輸入される貨物の申告誤り
C社(日本)は非居住者から家具を輸入。非居住者は日本に拠点を持たず、日本のECサイトで販売するために輸入手続き等をC社に委託。
C社は非居住者からのインボイスを基に輸入申告したパターン。
 
この(4)は何がいけないのか分かりますでしょうか?もう少し掘り下げてみます。
 
 

2.原則的な課税価格の決定方法が使えない場合


 

原則的にインボイスの価格=課税価格となりますが、インボイスの価格等が使えない場合があります。下記をご覧下さい
 
(1) 輸入貨物に係る輸入取引に関し特別な事情がある場合
① 買手による輸入貨物の処分又は使用についての制限がある場合
② 輸入貨物の課税価格の決定を困難とする条件が輸入取引に付されている場合
③ 買手による輸入貨物の処分又は使用による収益で、直接又は間接に売手に帰属するものの額が明らかでない場合
④ 特殊関係者間における輸入取引で取引価格がその影響を受けている場合
 
(2)輸入貨物が輸入取引によらないものである場合
「輸入取引」とは、本邦に拠点(住所、居所、本店、支店、事務所、事業所その他これらに準ずるもの。)を有する者(個人であるか法人であるかを問わない。)が買手として貨物を本邦に到着させることを目的として売手との間で行った売買であって、現実にその貨物が本邦に到着することとなったものをいい、通常、現実に貨物を輸入することとなる売買をいいますので、次のような輸入貨物は輸入取引によらない輸入貨物となります。
① 無償貨物
② 委託販売のために輸入される貨物
③ 売手の代理人により輸入され、その後売手の計算と危険負担によって輸入国で販売される貨物
④ 賃貸借契約に基づき輸入される貨物
⑤ 送り人の所有権が存続する貸与貨物
⑥ 同一の法人格を有する本支店間の取引により輸入される貨物
⑦ 本邦で滅却するために、輸出者が輸入者に滅却費用を支払うことにより輸入される貨物
 
(3)輸入貨物の課税価格について疑義が解明されない場合
例えば、輸入貨物の課税価格を計算するために提出された書類に疑義があるが、輸入者の補足説明及び追加資料でもその疑義が解明されないもの、又は補足説明及び追加資料の提出がされず、現実に買手により売手に対し又は売手のために支払われた価格等が確認できなかったものをいいます。
 
上記1,(4)の取引は『委託販売のために輸入される貨物』に該当する為、インボイス価格に基づく課税価格計算(原則的取扱い)が出来ないことに基づくミスとなります。
 
 

3.原則的な課税価格計算以外の計算方法


 

原則的な課税価格の決定方法が適用されない場合には、次の方法により輸入貨物の課税価格を決定することになります。
 
(1)同種又は類似の貨物の取引価格による課税価格の決定方法
輸入貨物の生産国からほぼ同じ時期に我が国に輸出された同種又は類似の貨物の取引価格があるときは、その取引価格に基づいて課税価格を決定します。
この場合、同種又は類似の貨物の取引段階、取引数量及び運送距離又は運送形態等が輸入貨物のものと異なる場合には、必要な調整を行うことになります。
 
(2)国内販売価格又は製造原価に基づく課税価格の決定方法
上記(1)の方法により課税価格の決定ができない場合には、次のいずれかの方法により、輸入貨物の課税価格を決定します。
① その輸入貨物又はこれと同種若しくは類似の貨物の国内再販売価格から、国内における販売に係る通常の手数料又は利潤及び一般経費、輸入港到着後の通常の運賃、保険料等の運送関連費用並びに関税その他の公課を控除して課税価格を決定する方法
② 輸入貨物の製造原価に、輸入貨物と同類の貨物の我が国への輸出のための販売に係る通常の利潤及び一般経費、輸入貨物の輸入港までの運賃等を加算して課税価格を決定する方法
この方法は、上記①の方法により輸入貨物の課税価格を計算できない場合に適用されますが、輸入者が希望する旨を税関長に申し出た場合には、上記①の方法に優先してこの方法を適用することができます。
 
(3)特殊な輸入貨物に係る課税価格の決定方法
上記(1)及び(2)の方法でも輸入貨物の課税価格を決定できない場合には、原則的な課税価格の決定方法又は上記(1)及び(2)の方法において必要とされる要件を満たさない事項につき合理的な調整を加えて、これらの規定に規定する方法などで課税価格を決定することになります。

 

税関HPに分かりやすいフローチャートがありましたので貼付下記貼付致します。

4.税関調査による修正申告後の更正の請求


 

税関調査により残念ながら誤りを指摘され、修正申告に応じるケースがあり、関税や消費税及び加算税等を納税することになります。
法人税法上、関税は損金算入、加算税等は損金不算入であることはご理解いただけると思いますが、輸入消費税はどのように取り扱うかご存じでしょうか。
 
その年に支払った通常の輸入消費税と同じ扱いで、輸入仮払消費税として全て仕入税額控除、、は出来ません。
 
その進行期中の輸入消費税を修正する場合は、その事業年度の輸入仮払消費税として普通に仕入税額控除できます。
しかし、過年度分の輸入消費税を修正する場合は、原則5年以内に更正の請求をしないと、追徴で支払った輸入消費税は仕入税額控除を受けるチャンスを失うこととなります。
※更正の請求期間について当初のBlogから訂正を入れさせて頂いております。
 
一般的に、輸入消費税の申告を乙仲業者へ依頼されているケースが多いと思います。
輸入消費税の修正申告を依頼する場合は、極力急ぎ輸入消費税の修正申告書を入手し、顧問税理士へ情報提供することをお勧めいたします。

 

 

 

あすか税理士法人

【国際税務担当】高田和俊

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