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国際税務2020.04.22 コロナウィルスがPE判定・越境労働者・居住地判定に与える影響~OECDガイダンス~

日本国内でのコロナウィルス感染者が1万人を超え、なかなか終息の糸口が見えない状態が続いています。

 

そんな中、コロナウィルスで苦しむ中小企業支援策が提案されています。自社に何が当てはまるのか、まずは検討するようにしてくださいね。

(支援策が気になる方は「コロナウィルスに関する中小企業支援策【まとめ】」もご参照下さい)

 

さて今日は国際税務の立場から、コロナウィルスがどのような影響を及ぼし得るのか検討してみたいと思います。

 

 

1、こんなこと、ありませんか?


 

たまたま来日しているタイミングでこのような事態になり、やむなく日本に滞在中の方。

海外勤務だったけれど一時的に日本に帰国し、それが長引いている方などなど。

 

様々な方がいらっしゃると思います。

こうなってくると、グローバル企業の方は気になることが出てきませんか?

 

「一時的に来日しているときに契約を結んだらPE認定受けるんじゃないか?」

「非居住者がコロナウィルスの影響で帰国したら居住者になってしまうのではないか?」

こんな疑問に対して、OECDがガイダンスを発表しているので、その中身を「PE判定」と「越境労働者」「居住地判定」にフォーカスして確認してみたいと思います。

(出展「TACKLING CORONAVIRUS (COVID-19) CONTRIBUTING TO A GLOBAL EFFORT  Version3 April 2020」)

 

 

 

2、PE(恒久的施設)判定


 

(1)普段勤務している国以外の国でテレワークしたらPEになるのか?

そもそもPEとは、例えば日本企業が外国に子会社や支店ほどではない小さな拠点を持っていたとして、その拠点に対して外国が課税できるのが「PE(恒久的施設)」という考え方です。

PEがあるなら外国にも課税権があるよね、って考え方です。

(PEの本来の考え方について不安がある方は「恒久的施設(PE)って何?~ホテルの一室が課税拠点に!?~」も併せててご確認ください)

 

そんなPEですが、例えば従業員が普段勤務している国以外の国に転居(例えば母国へ帰国など)し、コロナウィルス危機下において自宅から勤務する場合、その転居先の国でPE認定されるかも、、、といった疑問が生じます。

 

結論、原則としてPEにはなりません!

 

従業員が働く場所の「例外的かつ一時的な変更」はPEとはみなされないわけです。

継続的にその場所で働いているわけではなく、コロナウィルスという世界的に危機的な状況の中、「一時的に」自宅等で働いているに過ぎないからですね。

 

OECDはガイダンスの中で次のようにコメントしています。

“it is force majeure not an enterprise’s requirement.”

「コロナによるリモートワークワークは不可抗力だよね」と言っているわけですね。

 

(2)代理人PE(Agency PE)

次に代理人PEについてです。

代理人PEとは、企業名で契約締結する権利を有しかつ反復継続して契約行為をする代理人がいる場合、その代理人自体がPEとなり、代理人がいる国で課税される考え方となります。

 

では、コロナ危機下において、母国に帰国中に自宅で契約を結んだとしたら代理人PEとして課税されるのでしょうか?

 

結論、コロナ危機下において契約をたまたま結んだとしても、即代理人PEとして課税を受けるわけではありません。

 

ポイントは代理活動を「習慣的に」行っているかどうかです。

コロナ危機下でたまたまの契約は「習慣的」とは言えないですよね。

ここからは私見ですが、コロナの影響が長期化すると判断も変わってくることが予想されます。すなわち、企業によってはどこでも契約が出来るように積極的に整備することも考えられ、その場合は代理人PE認定課税を受けるリスクは相応にあると考えらえます。

例えばコロナ危機下における一時的な措置であることを役員会議事録に明記するなど、事後に説明ができる状態・資料整備が大切だと思います。

 

(3)建設現場PE(Construction site PE)

最後に建設工事現場PEです。

12カ月を超える建設現場をPEとみなして課税する考え方ですね。

※OECD Modelは12カ月ですが、UN Model(国連モデル)では6カ月となります

 

この12カ月判定について、OECDモデル租税条約では「材料や労働力の不足(a shortage of material or labour difficurlies)」による工事中断期間は除いて判断してOK、となっていました。

ではコロナによる中断はどうなるのでしょうか?

 

結論、コロナによる中断期間は12カ月判定に含める必要があります。

 

以下、OECDガイドラインの原文を引用させていただきます。

“The duration of such an interruption of activities should however be included in determining the life of a site and therefore will affect the determination whether a construction site constitutes a PE”

 

コロナによる中断は労働力の不足とほぼイコールな状態だと思うので、PE判定の期間から除くべきだと個人的には思います。

コロナの影響により予定よりかなり長期化してしまった場合にPE課税されるのは、不可抗力過ぎて厳しいなと。

コロナ危機が長期化してしまった場合、異なる取扱いが発表されるかどうか気になるところです。

 

 

3、越境労働者(cross border workers)


 

本来は居住地(住んでいる場所)で課税されますが、住んでいない国で働いた結果稼いだ所得は、働いた国にも課税権があると考えるのがOECDモデルの基本です。

 

では、コロナの影響により各国が行っている雇用刺激策はどうなるのでしょうか。

例えばA国企業で働いていた人が、コロナの影響によりB国に帰国(今はB国居住者とします)した後に、A国→A国企業→働く人の流れでお金をもらった場合、A国に課税権があるのかどうか疑問が生じます。

 

OECDガイドラインは、このお金はA国にも課税権があるよねと言っています。

 

かつてA国で働いたことに起因して得たお金だからだと推測されます。

その上でB国は、この所得を課税対象にしない、又は課税対象にしたうえで外国税額控除する流れとなります。

 

OECDガイドラインはこのセクションの最後の文書で次のように記されています。

“The OECD is working with countries to mitigate the unplanned tax implications and potential new burdens arising due to effects of the COVID-19 crisis.”

OECDは各国と協力して、コロナ危機により生じる想定外の税金負担の軽減のために働きかけてくれるそうです。

 

 

4、居住地判定


 

元A国居住者だった人が、仕事の都合でB国へ出国しB国居住者になっていたとします。

その後、コロナの影響でA国に一時帰国している場合に、この人がすぐにA国居住者になるのか?という問題が生じます。

 

OECDガイドラインでは、すぐにA国居住者に戻ってしまう可能性は低く、租税条約が適用される国であれば一時帰国によりA国居住者になることはない、と記されています。

 

ただし、そもそも「双方居住者」として租税条約のタイブレーカールール(the tie-breaker rules)に基づき居住地国をB国と確定させた方は注意が必要となります。

例えば、B国に保有する居住用不動産をコロナによるA国帰国中に、誰かに賃貸に出すケースなどはA国居住者とみなされるリスクが発生します。

 

慣習的な住居(habitual abode)により判定する場合は、2か国でどちらに多くの日数滞在していたかだけで判断するのではなく、一時的でない滞在の頻度や期間、規則性により判断すべきで、ある一時点だけ切り出して判断するものではない、とOECDガイダンスに記されています。

 

 

5、まとめ


 

コロナウィルスは特殊な事態ですが、基本的にPE判定や居住地判定に大きな影響は及ぼしません、というのが結論です。

「一時的な」という表現が多く使われており、今の時点では上記のようなガイダンスになっている、と理解すべきかと思います。

今後、コロナの影響が長期化した場合は、別の取扱いやガイダンスが出ることも想定されるので注視していく必要がありますが、とりあえず現時点では原則論として納税者に不利な扱いにはならない、と理解していただければよいかと思います。

 

あすか税理士法人

【国際税務担当】高田和俊

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