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国際税務2024.05.15 【国際税務】タックスヘイブン対策税制⑤~租税負担割合の計算方法~

今まで、タックスヘイブン対策税制について4回に渡りブログに取り上げて参りました。
①納税義務者と加算対象となる外国関係会社
②課税対象所得の計算
③ペーパーカンパニーにおけるタックスヘイブン対策税制適用除外要件
④外国関係会社が連結納税等を導入している場合

 

今回はタックスヘイブン対策税制Blog第5回として、外国関係会社の「租税負担割合」の考え方を整理したいと思います。

 

特定外国関係会社(会社ごと合算課税対象)は租税負担割合が30%(令和6年4月1日以後開始事業年度より27%に改正)、部分対象外国関係会社(受動的所得が合算課税対象)は租税負担割合が20%で取扱が変わることから、租税負担割合の考え方は非常に重要です。この機会に是非ご確認下さい。

 

 

1.租税負担割合


 

タックスヘイブン対策税制における租税負担割合とは、「外国関係会社の『所得』に対する『租税』の割合」を指します。

租税特別措置法上は下記のように記載される形で「租税負担割合」が登場します。

 

租税特別措置法第66条の6第5項第1号括弧書き
「外国関係会社の各事業年度の所得に対して課される租税の額の、当該所得の金額に対する割合として、政令で定めるところにより計算した割合」
少し読みづらいので、読点を二つ挿入しています。

 

つまり外国関係会社の「租税÷所得」により計算されます。

この租税や所得が、現地の法令に基づいて計算した税額や所得をそのまま用いれば良いのであれば話はシンプルなのですが、実際は異なります。

決算書上の「法人税等÷税引前利益」でもありません。

 

具体的には現地の税務申告書を入手した上で、税額や所得に必要な調整を加えた上で租税負担割合を計算します。

以下、所得(分母)・租税(分子)に区分してそれぞれの調整計算を掘り下げていきます。

 

 

2.所得(分母)


 

繰り返しになりますが、分母(外国関係会社の所得)については、外国子会社における当該外国での税務申告書における課税所得をそのまま用いのではなく、一定の調整が入ります。

具体的には下記算式により分母を計算します。

『外国法令により計算した所得金額+(外国法令における)非課税所得※+損金算入配当金+損金算入外国法人税-益金算入外国法人税+保険準備金に係る調整』

 

一番のポイントは「外国法令における非課税所得を加算」すること、つまり外国独自の法令により外国法人税の課税標準に含まれないこととされる所得は加算する点です。

分母が大きくなるので租税負担割合は小さくなり、租税負担割合は減少方向での調整です。

なお非課税所得からは「(収受した)配当金は除く」こととされているため、現地法令で非課税扱いとなっている配当金については、租税負担割合計算上の分母に含める必要がありません

「外国法令における非課税所得」はその例示として下記が挙げられます(租税特別措置法通達66の6-25)。
・外国関係会社の本店所在地国へ送金されない限り課税標準に含まれないこととされる国外源泉所得
・措置法第65条の2(収用換地等の場合の所得の特別控除)の規定に類する制度により決算に基づく所得の金額から控除される特定の取引に係る特別控除額

 

なお、分母の所得金額が無い場合又は欠損となる場合には、「外国関係会社が行う主たる事業に係る種入金額から所得が生じた場合にその所得に対して適用されるその本店所在地国の外国法人税の税率」が租税負担割合となります(措置法施行令第39の17の2第2項第5号イ)。

 

最後に課税標準計算がコストプラス方式による場合について説明します。
国によって、法人税の課税標準計算を経費から類推してみなし所得金額を計算する方法により課税するケースがあります(出張所等として補助的・支援的な活動に限られているケースなど)。
その場合の所得計算は、その外国関係会社の当該事業年度の決算に基づく所得金額につき(つまりコストプラス方式では無く、です)外国法令の規定を適用して算出した所得金額によることとなります。

 

 

3.租税(分子)


 

分子(外国関係会社の租税)についても、分母と同様、現地税額をそのまま用いるのでは無く、一定の調整が入ります。

具体的には下記算式により分子を計算します。

 

『外国法令に基づいて課される外国法人税+本店所在地国以外において課される外国法人税(源泉税等)+外国法令に基づく間接外国税額控除-非課税国外配当等に係る源泉税』

 

対象となるのは「その年度の所得に対して課されるもの」なので、場合によっては外国法令に基づいて納付すべき税額を計算する必要があるためご留意下さい。
またこの外国法人税には「外国関係会社の所得に対して課される日本の法人税・所得税・地方法人税・道府県民税・市町村民税等」も含むことが出来ます(措置法通達66の6-24)。

また、外国において政策的な税額控除が認められる場合における分子(外国租税)は「実際に納付すべき税額」つまり減税後の税額)となります。

更に少しマニアックな話ですが、外国関係会社がタックススペアリングクレジットの適用を受けている場合においては、当該みなし外国税額部分は外国法人税に含まれません。

 

算式の最後において「非課税国外配当等に係る源泉税」を分子から控除しているのは、同算式分母において非課税配当を所得から控除していることとの整合性をとるものとご理解下さい。

 

最後に、複数税率を採用しているケースについて説明します。

日本のように所得の多寡に応じて複数税率を採用している場合の租税負担割合(分子)計算は「最も高い税率を適用して算定した税額とすることが出来るようになっています(措置法施行令39条の17の2第2項4号)。具体的には最高税率による税額と実税額との差額を分子に加算できる制度です。注意を要するのが「所得の多寡」に応じて複数税率がある場合の措置である点で、例えば「所得の種類」に応じて複数税率がある場合は本特例の適用がありません

 

如何でしょうか。

タックスヘイブン対策税制は奥が深い税制だと感じます。

現地法令に基づいて税額を試算する必要があるケースなど、準備に時間を要するため、外国子会社の決算時期~日本親会社の決算時期までの間に少しずつ準備を進めることが肝要だと思います。

 

 

あすか税理士法人

【国際税務・国内税務担当】高田和俊

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