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会計制度2020.09.23 JICPA「上場会社等における会計不正の動向(2020年版)」を公表

日本公認会計士協会(JICPA)は、経営研究調査会研究資料第7号「上場会社等における会計不正の動向(2020年版)」(以下、研究資料)を公表しています。今回は、この研究資料の内容を通して、会計不正の傾向や内部統制等の問題点について考察してみたいと思います。

 

 

1.会計不正の公表会社数の推移

 

研究資料では、2016年3月期から2020年3月期までの5年間を対象に調査が行われていますが、2017年3月期以降公表会社数は増加傾向にあります。

 

会社の業種別や上場市場別の内訳推移についても、分析がなされていますが、特定の業種・市場に大きな偏りは見られないという結果が出ています。この点、他社事例を「他山の石」として、自社での会計不正対応に活かすという姿勢が重要ではないかと思われます。

 

 

2.会計不正の類型別の推移

 

会計不正は、大きく「粉飾決算」と「資産の流用」に分類されますが、全体の約80%が「粉飾決算」であるという調査結果が出ています。これは、一般的に「粉飾決算」の方が影響額が大きくなる傾向があり、外部公表に至っているケースが多いのではないかと推察されます。よって、未公表のものも含めると、全体の傾向は異なっている可能性があるという点には留意が必要です。

 

では、どのような粉飾決算が行われたのかという点ですが、やはり収益関連(売上の過大計上など)に関するものが一定数を占めています。しかし、在庫やその他の資産の過大計上、経費の繰延、架空仕入・原価操作など広範囲に及んでいることが分かります。先にも述べた通り、1社で複数の会計不正が発生するケースも増えており、それだけ不正が発見しずらくなっているということが言えるかと思います。

 

 

3.会計不正の発生場所

 

これは、私が関心のあるテーマでもありますが、過去5年間の推移を見てみると、本社(親会社)と子会社(国内・海外)では約50%ずつという傾向が出ています。2018年3月期あたりから、海外進出の増加に伴って海外子会社での発生件数に増加傾向が認められますが、2020年3月期は国内子会社での発生が非常に多かったというのも特徴的であると言えます。

 

子会社自体の内部統制や本社(親会社)の管理部門及び内部監査部門のモニタリング(監視)体制をどのように構築していくかという検討が重要になってきていると言えそうです。詳しくは、こちらのブログもご覧ください。

 

 

 

4.会計不正の関与者

 

内部統制は、経営者等による無効化(無視)や複数の担当者による共謀があった場合に機能しなくなると言われており、これを内部統制の固有の限界とよんでいます。

 

2016年3月期から2020年3月期までの5年間の事案をその関与者(実行者)と共謀者の有無で分類した場合に、役員及び管理職が関与者(実行者)となり、共謀者を伴って会計不正を引き起こしているケースが全体の50%以上に及んでいることが分かります。また、その中でも3分の2は共謀者が企業内部にいたことが分かっています。

 

日本企業の場合、パワーハラスメントに代表されるように、部下が上司の理不尽な命令に逆らえないといった状況が多く見られるところであり、内部通報制度のような非公式なレポートラインを通じてこのような状況を早期に発見する取り組みも重要であると考えられます。

 

 

5.会計不正の発覚経路

 

2016年3月期から2020年3月期までの5年間の事案について、発覚に至った経路を分析した結果、内部統制等による発見の件数が最も多くなっています。一般的に不正は通報により発見される割合が最も高いとされており(※)、日本においては、会計不正の発見に内部統制がある程度寄与しているということが言えるかと思われます。

 

一方で、当局の調査、公認会計士監査、取引先からの照会等外部からの指摘により会計不正が発覚しているケースが約40%となっています。この点は、会計不正の公表と同時に内部統制報告書の訂正報告(開示すべき重要な不備が開示されていなかった)を行った事案が全体の約50%となっていることと一定の相関関係があると考えられます。このような場合では、会計不正の発覚=内部統制の重大な不備=会社のレピュテーションリスクの顕在化というような深刻な状況に繋がることも懸念されます。

 

 

 

2020年版においては、それまでに公表されたものと傾向的に大きな相違は認められなかったものの、発生会社数の増加傾向や類型別にも発生場所別にもより広い範囲に会計不正が及んでいることが見て取れました。内部統制(管理体制)の定期的なチェックによって、会計不正の未然の防止あるいは早期発見という取り組みが一層重要になってきていると考えます。

 

(※)公認不正検査士協会(ACFE)が公表している「2018年度版 職業上の不正と濫用に関する国民への報告書」によれば、不正全体の約40%は通報により発見されているという結果が示されています。

 

 

あすかコンサルティング株式会社

【会計コンサルティング担当】津田 佳典

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