納付すべき税金を正しく申告・納付していなかった場合、加算税が課されます。
加算税には①過少申告加算税、②無申告加算税、③不納付加算税、④重加算税の4つがありいずれも国税通則法において定められています。
実務上は税務調査で発覚した事実に基づきこれらのペナルティが課されることが多いように感じます。
どういった場合が対象となるのか、今回はこれらの適用要件まで確認したいと思います。
さらに次回のブログでは、④の重加算税の適用についてもう少し深掘りしたいと思います。
条文の主要な部分を確認すると次の通りです。
条文だとイメージが捉えにくいので過少申告加算税についてまとめると次の通りです。
◎申告は期限内に行ったが、申告内容に誤りがあり期限後に追加で税額が発生した場合に課されるペナルティ
○原則、追加税額の10%課税
○税務署等からの調査の事前通知後に自主的に修正申告をしたものについては5%課税へ軽減
○[追加税額]>[当初申告税額と50万円のいずれか多い金額]となる場合は、その超える部分については5%追加課税
○税務調査において、帳簿への記載が本来記載すべき金額の3分の2未満の場合は5%加算、帳簿の不提示や帳簿への記載が本来記載すべき金額の2分の1未満の場合は10%加算
○税務署等からの調査の事前通知の前に自主的に修正申告をしたものについては課されない
こちらも条文の主要な部分を確認すると次の通りです。
国税通則法第六十六条
【第一項】
次の各号のいずれかに該当する場合には、当該納税者に対し、当該各号に規定する申告、更正又は決定に基づき・・・納付すべき税額に百分の十五の割合・・・を乗じて計算した金額に相当する無申告加算税を課する。ただし、期限内申告書の提出がなかったことについて正当な理由があると認められる場合は、この限りでない。
一 期限後申告書の提出又は第二十五条(決定)決定があった場合
二 期限後申告書の提出又は第二十五条の規定による決定があった後に修正申告書の提出又は更正があった場合
(参考)国税通則法第二十五条
税務署長は、納税申告書を提出する義務があると認められる者が当該申告書を提出しなかった場合には、その調査により、当該申告書に係る課税標準等及び税額等を決定する。ただし、決定により納付すべき税額及び還付金の額に相当する税額が生じないときは、この限りでない。
【第二項】
前項の規定に該当する場合・・・において・・・納付すべき税額・・・が五十万円を超えるときは、・・・無申告加算税の額は、同項の規定にかかわらず、同項の規定により計算した金額に、その超える部分に相当する税額・・・に百分の五の割合を乗じて計算した金額を加算した金額とする。
【第三項】第一項の規定に該当する場合において、加算後累積納付税額・・・が三百万円を超えるときは、・・・無申告加算税の額は、前二項の規定にかかわらず・・・次の各号に掲げる税額に区分してそれぞれの税額に当該各号に定める割合・・・を乗じて計算した金額の合計額から累積納付額を当該各号に掲げる税額に区分してそれぞれの税額に当該各号に定める割合を乗じて計算した金額の合計額を控除した金額とする。
一 五十万円以下の部分に相当する税額 百分の十五の割合
二 五十五万円を超え三百万円以下の部分に相当する税額 百分の二十の割合
三 三百万円を超える部分に相当する税額 百分の三十の割合
【第五項】
第一項の規定に該当する場合において・・・納税者が、帳簿に記載し、又は記録すべき事項に関しその期限後申告書若しくは修正申告書の提出又は更正若しくは決定・・・があった時前に、当該職員から当該帳簿の提示又は提出を求められ、かつ、次に掲げる場合のいずれかに該当するとき・・・は・・・無申告加算税の額は、同項から第三項までの規定にかかわらず、これらの規定により計算した金額に、第一項に規定する納付すべき税額・・・に百分の十の割合(第二号に掲げる場合に該当するときは、百分の五の割合)を乗じて計算した金額を加算した金額とする。
一 当該職員に当該帳簿の提示若しくは提出をしなかつた場合又は・・・当該帳簿に記載し、若しくは記録すべき事項のうち、特定事項の記載若しくは記録が著しく不十分である場合として財務省令で定める場合
二 当該職員にその提示又は提出がされた当該帳簿に記載し、又は記録すべき事項のうち、特定事項の記載又は記録が不十分である場合として財務省令で定める場合(前号に掲げる場合を除く。)
【第六項】
第一項の規定に該当する場合において、次の各号のいずれかに該当するときは・・・無申告加算税の額は、同項から第三項までの規定にかかわらず、これらの規定により計算した金額に、第一項に規定する納付すべき税額に百分の十の割合を乗じて計算した金額を加算した金額とする。
一 その期限後申告書若しくは・・・修正申告書の提出(その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について更正又は決定があるべきことを予知してされたものに限る。)又は更正若しくは決定があった日の前日から起算して五年前の日までの間に、その申告又は更正若しくは決定に係る国税の属する税目について、無申告加算税・・・又は重加算税を課されたことがある場合
二 その期限後申告書若しくは・・・修正申告書の提出(その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について更正又は決定があるべきことを予知してされたものでない場合において、その申告に係る国税についての調査通知がある前に行われたものを除く。)又は更正若しくは決定に係る国税の課税期間の初日の属する年の前年及び前々年に課税期間が開始した当該国税・・・の属する税目について、無申告加算税・・・若しくは・・・重加算税・・・を課されたことがあり、又は・・・賦課決定をすべきと認める場合
【第八項】
期限後申告書又は第一項第二号の修正申告書の提出が、その申告に係る国税についての調査があっことにより当該国税について更正又は決定があるべきことを予知してされたものでない場合において、その申告に係る国税についての調査通知がある前に行われたものであるときは、・・・無申告加算税の額は、同項から第三項までの規定にかかわらず、当該納付すべき税額に百分の五の割合を乗じて計算した金額とする。
【第九項】
第一項の規定は、期限後申告書の提出が、その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について第二十五条の規定による決定があるべきことを予知してされたものでない場合において、期限内申告書を提出する意思があったと認められる場合・・・であり、かつ、法定申告期限から一月を経過する日までに行われたものであるときは、適用しない。
無申告加算税についてまとめると次の通りです。
◎申告を期限内に行わず、かつ、税額を納める必要があった場合に課されるペナルティ
○原則、納付すべき税額の15%課税
○税務署等からの調査の事前通知の前に自主的に修正申告をしたものについては5%課税へ軽減
○税務署等からの調査の事前通知後に期限後申告をしたものについては10%課税へ軽減(調査による決定を予知する前に限る)
○納付すべき税額うち、50万円を超え300万円までの部分については5%加算、300万円を超える部分については15%加算
○税務署等からの調査の事前通知の後に期限後申告(調査による決定を予知する前に限る)をした場合で、期限後申告の年度の前年・前々年に無申告加算税もしくは重加算税を課されたことがある(課されるべきと認められる)場合は更に10%加算
○税務署等からの調査後に期限後申告・申告納税額の決定を受けた場合で、期限後申告等のあった日の前日から起算して5年前の日までの間に無申告加算税もしくは重加算税を課されたことがある場合は更に10%加算
○税務調査において、帳簿への記載が本来記載すべき金額の3分の2未満の場合は5%加算、帳簿の不提示や帳簿への記載が本来記載すべき金額の2分の1未満の場合は10%加算
○次の要件を全て満たす場合には課されない
・期限後申告が法定申告期限から1ヶ月以内に自主的に行われていること
・期限内申告をする意思があったと認められること(期限後申告に係る納付すべき税金の全額を法定納期限までに納付/過去5年間無申告加算税や重加算税の適用無し)
こちらも条文の主要な部分を確認すると次の通りです。
国税通則法第六十七条
【第一項】
源泉徴収等による国税がその法定納期限までに完納されなかった場合には、税務署長又は税関長は、当該納税者から、納税の告知に係る税額又はその法定納期限後に当該告知を受けることなく納付された税額に百分の十の割合を乗じて計算した金額に相当する不納付加算税を徴収する。ただし、当該告知又は納付に係る国税を法定納期限までに納付しなかったことについて正当な理由があると認められる場合は、この限りでない。
【第二項】
源泉徴収等による国税が納税の告知を受けることなくその法定期限後に納付された場合において、その納付が、当該国税の調査があったことにより・・・当該告知があるべきことを予知してされたものでないときは・・・不納付加算税の額は、同項の規定にかかわらず、当該納付された税額に百分の五の割合を乗じて計算した金額とする。
【第三項】
第一項の規定は、前項の規定に該当する納付がされた場合において、その納付が法定納期限までに納付する意思があったと認められる・・・かつ、当該納付に係る源泉徴収等による国税が法定納期限から一月を経過する日までに納付されたものであるときは、適用しない。
不納付加算税についてまとめると次の通りです。
◎源泉徴収した所得税を期限内に納付しなかった場合に課されるペナルティ
○原則、納付すべき税額の10%課税
○ただし、自主的に納付した場合は5%へ軽減
○次の要件を全て満たす場合には課されない
・法定納期限から1ヶ月以内に納付していること
・法定納期限までに納付する意思があったと認められること(期限後申告に係る納付すべき税金の全額を法定納期限までに納付/過去税務署長かから納税の告知を受けていない)
2~4を前提に、重加算税の条文も確認します。
国税通則法第六十八条
【第一項】
過少申告加算税の規定に該当する場合・・・において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、かつ、その隠蔽し、又は仮装したところに基づき納税申告書又は・・・更正請求書・・・を提出していたときは、当該納税者に対し・・・過少申告加算税に代え、当該基礎となるべき税額に百分の三十五の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する。
【第二項】
無申告加算税の規定に該当する場合・・・において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、かつ、その隠蔽し、又は仮装したところに基づき法定申告期限までに納税申告書を提出せず、又は法定申告期限後に納税申告書若しくは更正請求書を提出していたときは、当該納税者に対し・・・無申告加算税に代え、当該基礎となるべき税額に百分の四十の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する。
【第三項】
不納付加算税の規定に該当する場合・・・において、納税者が事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、かつ、その隠蔽し、又は仮装したところに基づきその国税をその法定期限までに納付しなかったときは、税務署長又は税関長、当該納税者から・・・不納付加算税に代え、当該基礎となるべき税額に百分の三十五の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を徴収する。
重加算税についてまとめると次の通りです。
◎2~4の加算税に該当する場合で、さらに事実の隠蔽や仮装があった場合に、2~4の加算税に代えて課されるペナルティ
○過少申告加算税の基礎となる税額の35%課税
○無申告加算税の基礎となる税額の40%課税
○不納付加算税の基礎となる税額の35%課税
今回はまずそれぞれの加算税の適用要件について、条文を確認しました。
過去の申告・納付状況や、自主的あるいは指摘を受けてからの納税か、それぞれ会社の状況によって課される税率が異なり複雑であることが分かると思います。
これらのペナルティを極力抑えるために、適正な申告・納付ができていないと気が付いた時には出来る限り早急に適正な申告・納付を行う事が望ましいです。
また、2~4の加算税と比べ重加算税は課される税率が非常に高いですが、「事実の隠蔽や仮装」の有無という人の判断が加わる部分が大きいため、重加算税の適用可否については国(税務署)と納税者が紛糾することが想定されます。
次回のブログでは、重加算税の適用可否につい私見を述べたいと思います。
あすか税理士法人
【スタッフ】中村麻侑子