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会計制度2019.11.13 不正会計について考える(3)【不十分な子会社管理】

不正会計が起こる主な原因の1つに不十分な子会社管理が挙げられます。

 

 

【事例】食品メーカーのB社のケース

 

B社の子会社(東南アジアの某国に所在)は、日本等で販売される製品の一部を製造するとともに、現地での販売も行っていた。しかし、その売上高は連結売上高の1%を占めるに過ぎなかった

 

また、この子会社は、当初合弁会社として設立されていたが、数年前にB社が完全子会社化した。そのため、内部管理体制については、従前の管理体制が維持(継続)されており、完全子会社化する以前からの経理担当者が経理部長として経理業務全般を取り仕切っていた。

 

ある時、B社の監査役がこの子会社の財務諸表を確認し、棚卸資産の残高が売上に対して過大であるとの認識を持った。監査役が管理部門に対して調査を依頼したところ、経理部長が棚卸資産を不正に過大計上していたことが発覚した。

 

 

にわかには信じられないケースかもしれませんが、この事例は子会社管理に関するいくつかのキーポイントが示されていたケースと言えます。

 

①親会社側で子会社のモニタリング(管理)に責任を持つ部署は明確になっているか?

 

この事例では、現地のマネジメント(取締役会)、親会社の海外事業部門や経理部門からも、在庫金額の異常性が指摘されていたにもかかわらず、最終的には子会社の経理部長の説明を信じてしまった(鵜呑みにしてしまった)という経緯があります。

 

それだけに、子会社のモニタリング(管理)の担当部署は、その職務にきちんと責任を持ち、異常に対しては徹底的に原因追及を行う姿勢が必要であると考えられます。

 

 

②重要性の低い子会社のモニタリング(管理)はどうしているか?

 

この子会社の売上高は連結売上高の1%程度、すなわち重要性の低い子会社として認識されていたことが想像されます。重要性の低い子会社に対して管理の手をかけるというのは、費用対効果の観点で問題がありそうですが、最近、このような重要性の低い子会社や主要な事業以外の事業を営む子会社で不正会計の事案が増えている傾向があります。

 

そのような子会社には他からの目が十分に行き届かないというのが実態なのでしょうが、そのことが不正会計の「機会(チャンス)」を生み出してしまっているという点は認識しておく必要があるでしょう。

 

 

③子会社の管理体制(内部統制)の十分性は確認されているか?

 

企業買収(M&A)によって、子会社となるケースも増えてきています。このようなケースでは、既に会社としての体制ができあがってしまっているため、「管理も適切にできている」と思い込みがちですが、ここに落とし穴があります。

 

企業買収(M&A)の際には、デューデリジェンスと呼ばれる買収調査が行われ、財務・税務・法務・ビジネス内容等様々な視点から買収対象となる企業の調査が行われますが、その1項目として内部統制を加えておくことの重要性が指摘されています。買収後の統合作業(PMI)においても有用な情報が入手できるとされています。

 

買収してしまった後に、「こんなはずではなかった…」というようなことがないようにしたいですね。

 

 

余談ですが、不正会計を行った子会社の経理部長にその動機を確かめたところ、「会社が赤字続きで、このままでは会社が閉鎖され、自分が職を失うかもしれなかったから」と答えたそうです。子会社の経営者は、現地スタッフの雇用に責任を持つという当たり前のことを忘れてはいけないと感じました。