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国際税務2020.03.18 指摘されてからでは手遅れ!海外出向の源泉徴収漏れ事例トップ5

税務調査の指摘事項で抗弁のしようがないものの一つとして源泉徴収漏れがあります。

その中でも今回は専門家でも見落としがちな海外出向した役員、従業員に対する支払のうち源泉徴収漏れが多い事例を5つ紹介します。

 

1.日本法人が支給する役員報酬

1つ目は役員報酬です。従業員への給与は原則源泉徴収不要のため、同様に考えて源泉徴収を忘れてしまうケースが非常に多いです。

 

日本法人の役員が海外子会社へ出向し(非居住者となり)、海外子会社から給与を受け取りつつ、日本法人からも報酬を受け取る場合。
日本法人から支給する役員報酬は国内源泉所得として20.42%の源泉徴収が必要となります。

 

例外として、当該海外出向による勤務が内国法人の命令に基づくもの、つまり従業員(使用人)の立場で常時海外子会社に勤務する場合については、日本法人から支給する報酬は国外所得として源泉徴収の必要がないという規定が存在します。

イメージとしては平取締役(取締役営業部長のような使用人兼務役員)が会社の命令で出向するような場合は国外所得と判断できる可能性もあります。
例外規定の明確な判断規定は存在しないため、基本的には源泉徴収の必要があると考えてください。

 

なお、役員報酬は日本で課税されますが海外でも同様に課税されることが一般的です。
二重課税になるため、日本で課税された部分は出向している国で外国税額控除の手続きを行うこととなります。

 

2.出国後最初の賞与

2つ目は賞与です。数ヶ月前に出国した従業員へ支払う賞与。国外勤務時の給与は源泉徴収不要のため、賞与についてもいらないでしょ!と思っていませんか?

多くの企業は海外出向した最初の月の給与は最新の注意を払って源泉を計算します。
ですが、以後は日本法人が支払う給与については源泉徴収が不要なため、賞与も同じように考えてしまうケースが多いです。

 

例えば、賞与の計算期間が1月~6月、4月30日に海外出向、7月に賞与支給の場合。
1月~4月は日本居住者、5月~6月は非居住者です。
7月に支払う賞与を日本居住者分と非居住者分に分けて、日本居住者分に対応する部分は20.42%の源泉徴収が必要となります。

最初の賞与支払まで気を抜かないようにしてください。

 

 

3.日本一時帰国時の給与

3つ目は給与です。海外子会社へ出向している社員に日本への一時帰国を認めている企業は多いと思います。

国外勤務時の日本法人支給の給与については原則源泉徴収不要ですが、例外的に源泉徴収義務が生じる場合があります。

例えば、次のうち日本親会社が負担している留守宅手当について源泉徴収義務が発生するのはどれでしょうか。
①正月に1週間休暇のために帰国した
②中国へ出向しているため旧正月に6週間、休暇のために帰国した
③休暇のために1週間帰国し、1日は日本親会社の会議へ出席した

 

A.③です。
非居住者の身分で、日本国内で勤務した場合は国内源泉所得が発生したこととなります。
非居住者へ国内源泉所得の支払いをする者は源泉徴収義務を負います。
従って、留守宅手当のうち会議に参加した日数に係る部分は20.42%の源泉徴収をする必要があります。

 

②は長期の休暇ですが、出向契約で1年以上国外勤務が明らかである場合、目的及び実態が休暇である以上、出向契約が中段したとは言えず非居住者としての身分が継続しているといえます。
つまり、②の場合の留守宅手当は国外源泉所得に該当するため、源泉徴収は不要です。

 

所得税法の日本居住者に該当するか否かの判定は、国内に住所又は1年以上継続して居所を有する個人が原則であり、
住所の有無が判然としない場合は1年以上居住することを通常必要とする職業に就いているか、などの事情により推定します。

 

4.社員所有自宅の借り上げ

4つ目は、家賃です。長期間海外出向する場合、日本の自宅を会社に貸付(会社が借り上げ)、従業員の社宅として利用する場合があります。
この場合に、海外出向した社員へ支払う家賃は国内源泉所得となり、20.42%の源泉徴収が必要となります。

 

不動産所得については租税条約においても、不動産の所在地での課税が認められているため免税とはなりません。

 

なお、不動産所得については源泉徴収で課税が完結とはならず、海外出向した者は日本で確定申告書を提出し、源泉徴収された税額を精算する必要があるので注意してください。

 

5.役員に対する借入金利子

最後は利子です。中小企業では会社が役員から借入を行い、利子を支払っているケースがあります。

所得税法では国内で業務を行う者に対する貸付金の利子は国内源泉所得に該当するとされており、非居住者にこの支払をする者は20.42%の源泉徴収をしなければならないと規定されています。

 

居住者である場合の貸付金利息は源泉徴収の必要がないため、非居住者になった際に源泉徴収を失念することが多いので注意が必要です。

 

なお、租税条約では利子の税率に限度を設けていることが多く、日米租税条約では利子については原則免税となっています。
この条約を適用するためには、支払日までに「租税条約に関する届出書」を税務署へ届出をする必要があり、提出をしない場合は原則通り20.42%の源泉徴収が必要となります。

 

 

以上、税務調査で指摘されるケースベスト5でした。
これ以外にも源泉徴収漏れの事例はたくさんあります。非居住者への何らかの支払がある場合は一度専門家にご相談ください。