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国内税務2026.03.25 非上場株式の評価~②法人税・所得税における評価~

前回のBlogで、非上場株式の相続税法上の評価方法について確認しました。

今回は法人税法・所得税法における評価方法について確認したいと思います。

 

 

1.非上場株式は一物多価


 

非上場株式は頻繁に売買されるケースは稀で、誰の目から見ても明らかな取引価格は基本的には存在しづらい特徴があります。
不当に高く(又は安く)売買等をすることで課税逃れが生じると公平性を損なうために、税法では計算方法を定めています。
各税法ごとに前提とする考え方が異なるため、評価額は一致しないケースがあります。
更に税法を離れると、例えばM&A等を実施する際は対象会社の収益力を数値化するなどして株価を算出する場合もありますが、それも非上場株式の株価の一つと言えます。
非上場株式という一つの財産に複数の価額が存在するため「一物多価(又は一物二価)」と言われる所以です。

 

前回のBlogで説明した非上場株式の評価は相続税法に基づく評価方法でした。
相続は突然予期せずやってくる相続を要因として財産に課税されるため、納税者の担税力等も考慮して比較的評価額が低くなる評価方法になっています。評価会社が解散した場合の財産価値を計算するイメージで、含み益がある場合に法人税等相当額を控除して評価額が計算されるのもそのためです。

 

 

2.法人税法上の時価


 

法人が絡む株式譲渡については法人税法を確認する必要があります。
法人税法においては、売買する際の株価について直接規定された法律等はありません。
一方で、評価損を計上する際の時価計算については法人税法基本通達が定められており、実務はこの規定を考慮しつつ株価評価を行います。
読みやすくするために一部編集した通達は次の通りです。

法基通9-1-13(抜粋)
市場有価証券等以外の株式につき法第33条第2項《資産の評価損の損金不算入等》の規定を適用する場合の当該株式の価額は、次の区分に応じ、次による。
(1) 売買実例のあるもの 当該事業年度終了の日前6月間において売買の行われたもののうち適正と認められるものの価額
(2) 公開途上にある株式で、当該株式の上場に際して株式の公募又は売出し(以下9-1-13において「公募等」という。)が行われるもの((1)に該当するものを除く。)金融商品取引所の内規によって行われる入札により決定される入札後の公募等の価格等を参酌して通常取引されると認められる価額
(3) 売買実例のないものでその株式を発行する法人と事業の種類、規模、収益の状況等が類似する他の法人の株式の価額があるもの((2)に該当するものを除く。) 当該価額に比準して推定した価額
(4) (1)から(3)までに該当しないもの 当該事業年度終了の日又は同日に最も近い日におけるその株式の発行法人の事業年度終了の時における1株当たりの純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額
法基通9-1-14(抜粋)
法人が、市場有価証券等以外の株式(9-1-13の(1)及び(2)に該当するものを除く。)について法第33条第2項《資産の評価損の損金不算入等》の規定を適用する場合において、事業年度終了の時における当該株式の価額につき「財産評価基本通達」の178から189-7まで《取引相場のない株式の評価》の例によって算定した価額によっているときは、課税上弊害がない限り、次によることを条件としてこれを認める。
(1) 当該株式の価額につき財産評価基本通達179の例により算定する場合 (同通達189-3の(1)において同通達179に準じて算定する場合を含む。)において、当該法人が当該株式の発行会社にとって同通達188の(2)に定める「中心的な同族株主」に該当するときは、当該発行会社は常に同通達178に定める「小会社」に該当するものとしてその例によること。
(2) 当該株式の発行会社が土地(土地の上に存する権利を含む。)又は金融商品取引所に上場されている有価証券を有しているときは、財産評価基本通達185の本文に定める「1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)」の計算に当たり、これらの資産については当該事業年度終了の時における価額によること。
(3) 財産評価基本通達185の本文に定める「1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)」の計算に当たり、同通達186-2により計算した評価差額に対する法人税額等に相当する金額は控除しないこと。

上記二つの通達を要約すると次の通りになります(売買実例が無く、公開途上でもなく、かつ類似会社が無い株式に限る)。

・一株当たりの純資産価額をベースに評価
・相続税法の評価(財産評価基本通達に基づく評価)がベース
・自社が中心的な同族株主(前回のBlog参照)に該当するときは「小会社」として評価
・評価対象会社が土地・上場株式保有するときは期末時価評価
・含み益に対する法人税等相当額を控除出来ない

 

なお、財産評価基本通達の178から189-7について、概略は下記のとおりです。

 

通達 内容
178 評価区分規定(大会社・中会社・小会社)、同族株主以外の株主は財基通188又は189にて評価する
179 原則的評価規定(評価区分毎の評価方法)
180 類似業種比準価額について
181 類似業種の選び方
181-2 評価会社の事業が該当する業種目
182 類似業種の株価
183 評価会社の一株あたり配当金額、利益金額、純資産価額の計算方法
183-2 類似業種の一株あたり配当金額、利益金額、純資産価額の計算方法
184 類似業種比準価額の修正
185 一株あたり純資産価額の計算方法
186 一株あたり純資産価額の計算方法(負債)
186-2 評価差額に対する法人税等控除
186-3 評価会社が有する株式等の純資産価額計算
187 株式割当等の権利がある場合の株価修正
188 同族株主以外の株主が取得した株式(配当還元方式)
188-2 配当還元方式の計算方法(配当還元>原則評価、なら原則評価でOK)
188-4 議決権数を有しない株式があるときは、当該株式の議決権数をゼロとして財基通188を考える
188-5 種類株式(一部無議決権株式)は財基通188の考え方
188-6 投資育成会社が株主であるときの財基通188の考え方
189 特定の評価会社の定義(比準要素数1、株式OR土地保有特定会社、開業3年未満、開業前・休業中、清算中)
189-2 比準要素数1の会社の評価
189-3 株式保有特定会社の評価
189-4 土地保有特定会社・開業3年未満の会社の評価
189-5 開業前又は休業中の会社の評価
189-6 清算中の会社の評価
189-7 189-2~189-5で評価する場合に株式割り当て等の権利が発生していれば価額修正する

 

3.所得税法上の時価


 

個人と法人間で株式売買する際には所得税法を確認する必要がありますので、所得税の取り扱いについて説明します。
ちなみに個人対個人のときは相続税法(贈与税)を確認します。

所基通59-6(抜粋)
法第59条第1項の規定の適用に当たって、譲渡所得の基因となる資産が株式である場合の同項に規定する「その時における価額」は、23~35共-9に準じて算定した価額による。この場合、23~35共-9の(4)ニに定める「1株又は1口当たりの純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額」については、原則として、次によることを条件に、「財産評価基本通達」の178から189-7までの例により算定した価額とする。
(1) 財産評価基本通達178、188、188-6、189-2、189-3及び189-4中「取得した株式」とあるのは「譲渡又は贈与した株式」と、同通達185、189-2、189-3及び189-4中「株式の取得者」とあるのは「株式を譲渡又は贈与した個人」と、同通達188中「株式取得後」とあるのは「株式の譲渡又は贈与直前」とそれぞれ読み替えるほか、読み替えた後の同通達185ただし書、189-2、189-3又は189-4において株式を譲渡又は贈与した個人とその同族関係者の有する議決権の合計数が評価する会社の議決権総数の50%以下である場合に該当するかどうか及び読み替えた後の同通達188の(1)から(4)までに定める株式に該当するかどうかは、株式の譲渡又は贈与直前の議決権の数により判定すること。
(2) 当該株式の価額につき財産評価基本通達 179の例により算定する場合(同通達189-3の(1)において同通達179に準じて算定する場合を含む。)において、当該株式を譲渡又は贈与した個人が当該譲渡又は贈与直前に当該株式の発行会社にとって同通達188の(2)に定める「中心的な同族株主」に該当するときは、当該発行会社は常に同通達178に定める「小会社」に該当するものとしてその例によること。
(3) 当該株式の発行会社が土地(土地の上に存する権利を含む。)又は金融商品取引所に上場されている有価証券を有しているときは、財産評価基本通達185の本文に定める「1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)」の計算に当たり、これらの資産については、当該譲渡又は贈与の時における価額によること。
(4) 財産評価基本通達185の本文に定める「1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)」の計算に当たり、同通達186-2により計算した評価差額に対する法人税額等に相当する金額は控除しないこと。
所基通23~35共-9(抜粋)
令第84条第3項第1号及び第2号に掲げる権利の行使の日又は同項第3号に掲げる権利に基づく払込み若しくは給付の期日における同条第3項本文の株式の価額は、次に掲げる場合に応じ、それぞれ次による。
(1)~(3) 省略(上場株式等)
(4) (1)から(3)までに掲げる場合以外の場合 次に掲げる区分に応じ、それぞれ次に定める価額とする。
イ~ハ 省略(売買実例のある株式、公開途上株式、類似業種株価がわかる場合)
ニ イからハまでに該当しないもの 権利行使日等又は権利行使日等に最も近い日におけるその株式の発行法人の1株又は1口当たりの純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額
(注)1 上記ニの価額について、次によることを条件に、「財産評価基本通達」の178から189―7まで((取引相場のない株式の評価))の例により算定している場合には、著しく不適当と認められるときを除き、その算定した価額として差し支えない。
① 当該株式の価額につき財産評価基本通達179の例により算定する場合において、当該株式を取得した者が発行法人にとって同通達188の(2)に定める「中心的な同族株主」に該当するときは、発行法人は常に同通達178に定める「小会社」に該当するものとしてその例によること。
② その株式の発行法人が土地(土地の上に存する権利を含む。)又は金融商品取引所に上場されている有価証券を有しているときは、財産評価基本通達185に定める「1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)」の計算に当たり、これらの資産については、権利行使日等における価額によること。
③ 財産評価基本通達185の本文に定める「1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)」の計算に当たり、同通達186-2により計算した評価差額に対する法人税額等に相当する金額は控除しないこと。
2 その株式の発行法人が、種類株式を発行している場合には、その内容を勘案して当該株式の価額を算定することに留意する。

上記二つの通達を要約すると次の通りになります(売買実例が無く、公開途上でもなく、かつ類似会社が無い株式に限る)。

・一株当たりの純資産価額をベースに評価
・相続税法の評価(財産評価基本通達に基づく評価)がベース
・本人が譲渡直前に中心的な同族株主(前回のBlog参照)に該当するときは「小会社」として評価
・評価対象会社が土地・上場株式を保有するときは課税時期における時価評価
・含み益に対する法人税等相当額を控除出来ない

 

 

4.個人が法人へ株式を低額譲渡した場合


 

以下のケースは譲渡人である個人に譲渡所得税が課税されるので注意が必要です。この場合の時価は所得税法上の時価となります。
・個人から法人への贈与
・個人から法人への遺贈(遺贈:被相続人が遺言により法定相続人以外の者に無償で財産を移転すること)
・個人から法人へ著しく低い価額(時価の2分の1に満たない金額)での譲渡

 

如何でしょうか。法人税と所得税における評価方法はほぼ一緒ですが、相続税(贈与税)の評価方法とは異なる部分があるので注意が必要です。

 

次回は株式譲渡や贈与等の取引種類ごとの課税関係について確認したいと思います。

 

 

あすか税理士法人

【国際税務・国内税務担当】代表社員税理士 高田和俊

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3月27日 14:33