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国内税務2020.01.08 2020年税制改正を先取り!?

 

先取りとはいかないのですが、2020年税制改正大綱が発表されました。

 

税制改正大綱とは毎年12月中旬に与党が翌年度以降にどのように税制を変えるべきかを話し合ってとりまとめ、通常国会に提出されるものです。

現在は衆参ともに与党が過半数を占めているため何事もなければこれから詳細を詰めた上で可決される見込みです。

原文は全117ページにもわたる超大作ですのでその中で影響の大きいものをピックアップしてご紹介します。

 

 

1.子会社配当と株式譲渡を組み合わせた租税回避への対応【法人税】

ソフトバンクグループがアームホールディングス株式を使って行った節税策の封じ込めです。節税スキームは下記のとおりです。

 

① 外国子会社株式の取得

子会社株式 500 / 現金預金  500

② 外国子会社から配当を受領

現金預金  300 / 受取配当金 300

③ 配当により時価の下がった外国子会社株式を譲渡

現金預金  200 / 子会社株式 500

株式譲渡損 300 /

 

受取配当金と株式譲渡損が同額のため所得がないように見えますが、外国子会社からの配当金は一定の要件のもと95%が税金計算上収益から除外されますので、

 

受取配当金300

-収益除外分285

-株式譲渡損300

所得  △ 285

 

というふうに意図的に欠損を捻出することができました。

改正後は税務上以下のような処理になると思われます。(まだ具体的な方法は確定していません)

 

① 外国子会社株式の取得

子会社株式 500 / 現金預金  500

② 外国子会社から配当を受領

現金預金  300 / 受取配当金  15

/ 子会社株式 285

③ 配当により時価の下がった外国子会社株式を譲渡

現金預金  200 / 子会社株式 215

株式譲渡損  15 /

 

結果的に受取配当金と株式譲渡損が同額になるため欠損を捻出することができなくなります。

適用開始時期は未定です。

 

ソフトバンクグループが2018年3月期に行った節税策ですので比較的早い対応だと思います。

法の抜け道をついたという理由ですが包括的租税回避否認規定ではなく、個別に対応してきた形ですね。

これからこういった規定がどんどん増えて・・・いかなければいいのですが・・・

 

2.国外中古建物の不動産所得に係る損益通算等の特例【所得税】

個人を中心に普及していた海外不動産を利用した節税策の封じ込めです。

海外の不動産は土地よりも建物の価値が大きく値崩れしにくいため、中古の不動産を購入して賃貸し、簡便法により算出した見積耐用年数で償却することにより意図的に欠損を捻出することができます。

改正後は海外中古不動産に係る損失のうち減価償却費部分については生じなかったものとして他の所得と相殺できなくなります。

譲渡時の取得費(必要経費)の計算については生じなかった償却費部分をプラスすることになるようです。

適用開始時期は2021年分以降の所得税からとなります。

 

結構前から問題視されており、改正されるのでは・・・と噂されていた事案です。

ついに改正が入りますがなぜか一年タイムラグが設けられています。

かといってその一年のために海外不動産を購入することはおすすめできませんが・・・

 

3.低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除【所得税】

都市計画区域内にある低未利用土地等の譲渡で譲渡対価が500万円以下であることなど一定の要件を満たす場合には発生した所得から100万円控除される制度が新設されます。

低未利用土地等の定義はまだはっきりしていませんが、空き地などは対象になると思います。

適用開始時期は土地基本法等の改正日と2020年7月1日のいずれか遅い日からとなります。

 

近年空き家対策の税制が整備されてきていますがその一環だと思います。

相続したが更地のままだ・・・売ったら税金かかるしなぁ・・・という人に対する救いの手だと思いますがいかんせん金額が低すぎます。都心部の土地では使うことは難しいでしょう。

 

4.国外居住親族に係る扶養控除等の見直し【所得税】

扶養控除の対象者から国外に居住する親族のうち30歳以上70歳未満の者が除外されます。

ただし、留学で国外居住している者、障害者、その人から生活費などで38万円以上援助を受けている者は一定の要件の下引き続き扶養控除の対象となります。

適用開始時期は2023年分以降の所得税からとなります。

 

要は38万円以上援助をしろよと決められる形ですね。今までは特に決まりがなかったので・・・

 

5.居住用賃貸建物の取得に係る仕入税額控除の見直し【消費税】

居住用賃貸建物取得時に金地金などの売買を繰り返すことで意図的に課税売上を発生させ、課税売上割合を引き上げることで居住用賃貸建物に係る仕入税額控除を受けることができていました。

改正後は明らかに住宅用の建物の取得について仕入税額控除の対象から除外されます。

適用開始時期は2020年10月1日以降に取得した分からとなりますが2020年3月31日までに契約した分については改正前の取扱いとなります。

 

10年ほど前に自販機スキームが流行っていましたが封じ込められました。

その後金地金スキームが流行りましたが封じ込められます。

いたちごっこです。次は何が流行るのかなぁ・・・

 

6.法人に係る消費税の申告期限の延長の特例【消費税】

法人税の申告期限を3ヶ月に延長している法人についても消費税には申告期限の延長の制度がないため、原則どおり2ヶ月以内に申告納付が必要となっています。

実務的に法人税と消費税の申告期限が違うことによる事務負担を軽減するために消費税にも申告期限の延長制度が新設されます。

適用開始時期は2021年3月31日以降に終了する事業年度の末日の属する課税期間からです。

 

待ってました!!今までこのズレのために消費税だけ早く仕上げていましたが決算が固まってないんですよね・・・一回概算で出してその後更正の請求・・・なんてことがなくなります。嬉しいです。

 

7.所有者不明土地等に係る固定資産税【地方税】

市町村は、登記簿上の所有者が死亡している場合など所有者不明の土地建物について、一定の調査を尽くしても所有者が一人も明らかとならない場合には、その土地建物の使用者に通知した上で、固定資産税を課税することができるようになります。

適用開始時期は2021年度以降の固定資産税からとなります。

 

税収確保のためですね。急に固定資産税払えと言われたらびっくりすると思いますが、住んでる人多分地代払ってないので・・・相続登記はちゃんとしましょう。

 

8.検討事項

検討事項としてカジノから生じる所得についてどのように扱うのか、自己株対価TOBについて組織再編税制等も含めた整理の必要性について挙げられています。

カジノについては諸外国ではどういった取扱いになっているのか気になります。おそらくそれに追従する形になるのでしょうか。源泉徴収とかは難しいと思いますし・・・

自己株対価TOBは昨年度の税制改正で国の許可をもらえば課税の繰延べがされるようになりましたが使い勝手が悪いので組織再編税制の枠内に入れてしまおうということだと思います。諸外国では活発にされているスキームですので日本も整備されたらもっと利用されるようになるのではないでしょうか。