


近年、海外子会社を設立し、日本から社員を出向させるケースが増えています。
その際に、実務で必ず問題となる点をいくつかピックアップし、ざっくり簡単に整理していきたいと思います。
出向には、在籍型出向と転籍型出向の2種類があります。
まずはそれぞれの内容を簡単に確認します。
・在籍型出向⇒一般的な出向で、実務上多い
在籍型出向とは、『出向元企業』と『出向先企業』との間の出向契約によって、労働者が出向元企業と出向先企業の両方と雇用契約を結び、出向先企業に一定期間継続して勤務することをいいます。
例)
・日本法人(出向元法人):雇用主
・海外子会社(出向先法人):労務の提供を受ける
日本法人が給与を支給し、その全部または一部を海外子会社へ請求する形になります。
・転籍型出向
転籍型出向とは、「転籍前法人」との雇用関係を継続せず、「転籍後法人」との雇用関係を成立させることをいいます。普通の転職と何が違うかというと、雇用関係の終了と雇用関係の成立が同時に行われる点です。
実務では、在籍型出向が一般的な出向となりますので、在籍型を前提に説明していきます。
給与や賞与は、出向元法人(日本)と出向先法人(海外)どちらが負担すべきなのか。
出向者は、出向先法人(海外)の指揮命令に服し、そこで労働を提供することになることから、出向者の給与は、原則全額を出向先法人が負担すべきです。
しかし、出向元法人(日本本社)が出向先法人との給与水準の違いによる給与較差を補填するために支給した金額(=給与較差補填金)は、日本側の損金に算入することが認められています。
《法人税法基本通達9-2-47》
また、次のような場合も、給与較差補てん金として取り扱われます。
1 出向先の法人が経営不振等で出向者に賞与を支給することができないため、出向元の法人がその出向者に賞与を支給する場合
2 出向先の法人が海外にあるため、出向元の法人が留守宅手当を支給する場合
この給与較差補てん金は、出向元の法人が出向者に直接支給しても、出向先の法人を通じて支給しても同様に取り扱われます。
例1)
・日本給与水準:800万円
・現地給与水準:600万円
・差額200万円を日本法人が補填
この「200万円」を出向元の日本法人が負担をしても、日本でその「200万円」は給与格差補填金として、損金として認められます。
例2)
・日本給与水準:800万円
・現地給与水準:600万円
・現地負担は300万円で、差額の500万円を日本法人が負担
この「500万円」を出向元の日本法人が負担した場合、日本での給与格差補填金は、「200万円」であり、差額の「300万円」は、本来出向先が負担すべき給与であるため、「300万円」に関しては、損金算入が認められず、出向元法人(日本)から出向先法人(海外)に寄附があったものとして取り扱われ、寄附金として損金不算入となります。
賞与については、基本的には同様にお考えください。
①海外赴任旅費(航空運賃・ビザ取得費等)
原則は、出向先法人で勤務するために必要な費用であるため、出向先法人が負担すべきものとなります。
しかし、実務上出向元法人が負担しているケースも多いかと思います。
出向元法人からの要請によるものである場合などで、業務上必要な費用として社会通念上の実費相当であれば、出向元法人が負担をしていても問題となるケースは少ないと考えます。
②支度料
原則は、出向先法人で勤務するために必要な費用であるため、出向先法人が負担すべきものとなります。
しかし、こちらも①と同様、実務上出向元法人が負担しているケースも多いかと思います。出向元法人の要請による場合には、赴任時は、出向元法人負担、帰任時は、出向先負担とするなど、事前に取扱いを決めておくことが重要です。
①出向契約書の整備
海外勤務規程や出向契約書で、どちらがどの費用をどれだけ負担するのかという、出向元・出向先の費用負担関係を明確に示しておく必要があります。
実際、どの程度の金額まで負担しても問題がない(損金算入が認められる)のかといった明確な基準はありませんので、経営状況等を鑑みて個別に判断することとなります。
出向先法人(海外)の経営状況に応じて、費用負担割合はその都度見直すことをお勧めします。
②現地給与水準の妥当性
現地採用の従業員の中で同程度の職位の従業員の方がいる場合には、その方の給与水準が一つの目安になるかと思います。
同じ職位のスタッフがいない場合には、現地国内の同じような業種で同程度の役職の方の水準を参考に検討するのも一つです。
③出向者の所得税
出向者は海外現地で所得税の申告・納税を行う必要があります。
日本からのお給料が出向先法人から合算して支払われず、別途日本払いであったとしても、勤務している出向先法人の国で申告・納税が必要です。
いかがでしたでしょうか。
今回は、海外への出向者の給与の取扱いとその注意点について簡単にまとめてみました。
出向契約書の作成は大変重要となります。
参考になれば幸いです。
あすか税理士法人
【スタッフ】渋谷優果