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会計・ファイナンス・監査2025.05.28 東京証券取引所 「2024年度の不適正開示の発生状況等について」を公表

東京証券取引所は「2024年度の不適正開示の発生状況等について」公表しました。

 

 

1.不適正開示とは?


 

不適正開示については、以下のように整理されています。

 

開示漏れ・遅延・・・重要な会社情報を直ちに開示しなかった事例

 

✔ 開示内容不備・・・事後に開示内容の重要な訂正が生じた事例、または投資者に誤解を生じさせる開示を行った事例

 

先行開示・・・TDnetを利用した開示の前に自社のHPなどで開示内容を公表した事例

 

 

 

2.不適正開示の傾向


 

開示件数全体に占める不適正開示の割合は、0.5%程度とのことですが、年々増加傾向にあります。また、上記の3つの不適正開示の中でも、開示遅れ・遅延に関するものが大きな割合を占めています。

 

また、不適正開示に繋がりやすい開示項目として、以下のものが挙げられています。

 

その他の決定事実・発生事実(バスケット条項)

→特に、決定事実では「資金の借入」「有価証券の売却」、発生事実では「子会社からの配当金」「補助金・助成金収入」の開示漏れが生じやすいとのこと

→バスケット条項に限らないが、決定事実は業務執行を決定する機関による決議・決定が行われた時点、発生事実はその発生を認識した時点で開示を行う必要があることに留意が必要

 

主要株主または主要株主である筆頭株主の異動

親会社、親会社以外の支配株主、その他の関係会社の異動

→新株予約権の行使や株式の発行、自己株式の取得・処分により、総株主の議決権の数が変動し、主要株主の異動が生じていたものの、その確認が漏れてしまっていた例が多く見受けられるとのこと

 

定款の変更

開示時期に関して、株主総会で決議された時点で開示すれば良いと誤認していた例が見受けられるとのこと(正しくは、株主総会に付議することを決定した時点です)

 

子会社の異動を伴う株式・持分の取得・譲渡及びその他の子会社等の異動を伴う事項

 

災害に起因する損害または業務遂行の過程で生じた損害

 

発行する株式・処分する自己株式・発行する新株予約権・処分する自己新株予約権を引き受ける者の募集または株式・新株予約権の売出し

→募集株式数の変更、資金使途の変更、割当先による第三者への新株予約権の譲渡など、過去に開示した内容に変更が生じた場合や開示すべき経過事項が生じた場合にはその旨の開示が必要であるとのこと

 

 

3.不適正開示を防止するための対応


 

いずれの項目も頻繁に生じる事象ではないものだけに、該当する事象が生じた時に、開示項目や開示時期に関する理解不足によって不適正開示に繋がっているケースが多いようです。

 

東京証券取引所からも、以下のような点が重要とのコメントが出ています。

 

適時開示要否を判断する際の運用プロセスに問題がないかなど自社の適時開示体制について再確認すること

 

適時開示に係る業務知識について十分に通じた開示担当者を常設できるよう、適時開示に係る業務知識のアップデートを図ることや開示担当者の変更時の十分な業務引継ぎを行うこと

 

※「主要株主または主要株主である筆頭株主の異動」については、開示要否の確認体制不備が不適正開示の理由の多くを占めています。株主(議決権)状況の把握は総務部門の方が実施されることが多いと思われますが、そこから必要な開示が適切に行われる体制が整っているかどうか確認が必要と思われます。

 

 

あすかコンサルティング株式会社

【会計コンサルティング担当】津田 佳典

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