


既にご承知の方も多いと思いますが、2024年9月、企業会計基準委員会(ASBJ)は、「リースに関する会計基準」(企業会計基準第34号、以下「基準」)及び「リースに関する会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第33号、以下「適用指針」)を公表しました。今回は、1つの会社が借手にも貸手にもなる「サブリース取引」の会計処理について確認したいと思います。
1.サブリース取引とは?
「サブリース取引」とは、原資産が借手から第三者にさらにリース(サブリース)され、当初の貸手と借手との間のリース(ヘッドリース)が依然として有効である取引をいい【適用指針.4(12)】、簡単な図にまとめると以下のような状況を指します。

2.サブリース取引の会計処理
(1)原則的な会計処理
サブリース取引については、ヘッドリースとサブリースの契約は一般的に別個に交渉されており、当初の借手(中間的な貸手)にとってヘッドリースから生じる義務は、一般的にサブリースの契約条件によって消滅することはないと考えられることから、原則として、ヘッドリースとサブリースを 2 つの別個の契約として(ヘッドリースの)借手と(サブリースの)貸手の両方の会計処理を行うこととされています【適用指針.89及びBC124】。
このため、当初の借手(中間的な貸手)は、ヘッドリースについては通常の借手の処理を行うと同時に、サブリースについては、ファイナンス・リースに該当するかオペレーディング・リースに該当するかによって、以下の会計処理を行うこととなります【適用指針.89】。
<サブリースがファイナンス・リースに該当する場合>
・サブリースした使用権資産の消滅を認識し、貸手のリース料の現在価値と使用権資産の見積残存価額の現在価値の合計額でリース投資資産(所有権移転外ファイナンス・リースの場合)またはリース債権(所有権移転ファイナンス・リースの場合)を計上する
・リース投資資産またはリース債権の計上と使用権資産の取崩しに伴う損益は、原則として純額で計上する
<サブリースがオペレーティング・リースに該当する場合>
・サブリースから受け取る貸手のリース料について通常の賃貸借取引に準じて収益を計上する
サブリースがファイナンス・リースに該当する場合、原則としてサブリース取引に係る損益は純額で表示することとされていますが、中間的な貸手が財の販売やサービスの提供を行う中でサブリースを組み合わせて利用するようなときに、財・サービスに係る収益とサブリースに係る収益を整合的に計上する観点から中間的な貸手はサブリース取引に係る損益を総額で計上する方が適切な場合があるとされています【適用指針.BC127】。
サブリースがファイナンス・リースに該当する場合、中間的な貸手は貸手のリース料の現在価値と使用権資産の見積残存価額の現在価値の合計額でリース投資資産またはリース債権を計上する必要がありますが、この際に用いる割引率については、以下の①と②が等しくなるような利率を用いることとされています【適用指針.90】。
①貸手のリース料の現在価値と使用権資産の見積残存価額の現在価値の合計額
②当該使用権資産に係るサブリースのリース開始日に現金で全額が支払われるものと仮定した場合のリース料(独立第三者間取引における使用権資産のリース料)
※②を算出するにあたっては、サブリースを実行するために必要な知識を持つ自発的な独立第三者の当事者が行うと想定した場合のリース料とする必要があり、サブリースがヘッドリースのリース期間の残存期間にわたって行われるものと仮定する
ただし、上記の算出が容易でない場合には、ヘッドリースに用いた割引率を用いることも認められています。
また、次のいずれかに該当する場合、中間的な貸手のサブリースは、ファイナンス・リースと判定されます【適用指針.91】。
・(現在価値基準)サブリースにおける貸手のリース料の現在価値が、独立第三者間取引における使用権資産のリース料の概ね90%以上であること
・(経済的耐用年数基準)サブリースにおける貸手のリース期間が、ヘッドリースにおける残りの借手のリース期間の概ね75%以上であること(ただし、現在価値基準の判定結果が90%を大きく下回ることが明らかな場合を除く)
新しいリース会計基準の審議の過程においては、サブリース取引には該当するものの、中間的な貸手がヘッドリースとサブリースを2つの別個の契約として借手と貸手の両方の会計処理を行うことが適切ではない場合がある(例.不動産取引)との意見があり、例外的な会計処理として「中間的な貸手がヘッドリースに対してリスクを負わない場合」と「転リース取引」の取扱いが定められました【適用指針.BC125及びBC128】。
(2)中間的な貸手がヘッドリースに対してリスクを負わない場合
サブリース取引のうち、以下のすべての要件を満たす取引については、貸借対照表においてヘッドリースにおける使用権資産及びリース債務を計上せず、かつ、損益計算書において、サブリースにおいて受け取るリース料の発生時か受領時のいずれか遅い時点で、貸手として受け取るリース料と借手として支払うリース料の差額を損益に計上する(純額表示とする)ことができるとされています【適用指針.92】。
①中間的な貸手はサブリースの借手からリース料の支払を受けない限り、ヘッドリースの貸手に対してリース料を支払う義務を負わない
②中間的な貸手のヘッドリースにおける支払額は、サブリースにおいて受け取る金額にあらかじめ定められた料率を乗じた金額である
③中間的な貸手はサブリースの契約条件(サブリースにおける借手の決定を含む)及びサブリースの借手が存在しない期間における原資産の使用方法のいずれを決定する権利も有さない
ここで、損益の認識時点を「サブリースにおいて受け取るリース料の発生時か受領時のいずれか遅い時点」としているのは、収益費用の認識は発生時に行うことが原則であるものの、上記①の要件を置いたことから、これに合わせる形でサブリースにおいて受け取るリース料の発生時か受領時のいずれか遅い時点を会計処理のタイミングとしています【適用指針.BC131】。
(3)転リース取引の場合
転リース取引とは、原資産の所有者からリースを受け、さらに同一の資産を概ね同一の条件で第三者にリースする取引のことをいいます【適用指針.93】。
転リース取引の取扱いは、現行のリース会計基準において定めがあり、主に機器等のリースについて仲介の役割を果たす中間的な貸手の会計処理として実務に浸透しており、サブリース取引の例外的な取扱いとして、現行リース会計基準の定めが踏襲されています【適用指針.BC132】。
転リース取引の場合、中間的な貸手は、貸手としてのリースがヘッドリースの原資産を基礎として分類する場合にファイナンス・リースに該当するとき、以下のような会計処理を行うことができるとされています【適用指針.93】。
<貸借対照表>
リース債権またはリース投資資産とリース負債の両方を計上する
※原則として利息相当額控除後の金額で計上しなければならないが、利息相当額控除前の金額で計上することも認められる
※リース債権またはリース投資資産から利息を控除する際の割引率は、リース負債の利息を控除する際の割引率を用いる
<損益計算書>
貸手として受け取るリース料と借手として支払うリース料の差額を手数料収入として各期に配分し、転リース差益等の名称で計上する
適用指針.93の規定が、「貸手としてのリースがヘッドリースの原資産を基礎として分類する場合にファイナンス・リースに該当するとき」にのみ適用されるのは、現行リース会計基準における転リース取引の取扱いが、借手及び貸手としてのリース取引の双方がファイナンス・リース取引に該当する取引を対象としており、適用指針においてもこの範囲を踏襲することを意図したためとされています【適用指針.BC133】。
また、現行リース会計基準における「セール・アンド・リースバック取引によるリース物件を、さらに概ね同一の条件で第三者にリースした場合で、当該転リース取引の貸手としてのリース取引がファイナンス・リース取引に該当し、かつ、その取引の実態から判断して当該物件の売買損益が実現していると判断されるときは、その売買損益は繰延処理せずに損益に計上することができる」取扱いについては踏襲されておらず、新リース会計基準におけるセール・アンド・リースバック取引及び転リース取引の規定に従い、会計処理を判断することになるとされています【適用指針.BC134】。
(次回につづく)
あすかコンサルティング株式会社
【会計コンサルティング担当】津田 佳典
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