福利厚生の一環として、使用者(以下、会社)が役員や使用人(以下、従業員等)に対し、勤務時の食事代を補助することがあります。その場合の課税関係について解説します。
給与所得とは、俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与(以下この条において「給与等」という。)に係る所得をいいます。
給料・賞与といった金銭の支給以外に、経済的利益の供与も原則、給与として課税されます。ただし、一定の供与については、その経済的利益はないものとして非課税となります。そのうちの一つが、食事の支給です。
給与等に係わる経済的利益 国税庁HP
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/05/03.htm
① 残業または宿日直における食事の支給(所基通36-24)
会社が残業等をした者に支給する食事は非課税です。ここでいう食事の支給とは、会社が現物で支給するだけでなく、従業員自らが外食またはコンビニ等で食事を購入し、実費精算する場合も同様です。
※ 深夜勤務者に支給する1回300円(税抜き)以下の食事補助も非課税となりますが、こちらは精算不要の渡し切り支給の取り扱いです。
② 通常の勤務時間内における食事の支給(所基通36-38の2)
従業員等に支給する食事は、以下の要件を満たしていれば、非課税となります。
⑴ 従業員等が食事の価額の半分以上を負担していること
⑵ 次の金額が1ヶ月あたり※3,500円(税抜き)以下であること
食事の価額 - 従業員等が負担している金額
※10円未満の端数切り捨て
【具体例】
1ヶ月あたりの食事の価額 5,000円、従業員等が負担している金額 2,000円
5,000円×1/2=2,500円>2,000円 上記②⑴の要件を満たしていない。
→ 5,000円-2,000円=3,000円が給与として課税されます。
① 会社が従業員等に食事代として金銭を支給した。
【具体例】
従業員等が、会社の指定した飲食店を昼食で利用した際に、従業員等がその飲食店に支払った食事代の50%相当額を会社が負担金としてその従業員等に支給(預金口座に振込)した。
→ 【課税】
会社が従業員等に支給するのは食事(現物)ではなく金銭であるため、上記3⃣②の適用はなく、従業員等が受ける食事代負担金は、給与所得の収入金額となります。
② 会社が特定の飲食店との契約により、従業員等の食事代を飲食店に支払った。
→ 【非課税】
食事の「現物支給」と同様の実態が伴うとして、上記3⃣②を満たせば非課税となります。
③ 会社に社員食堂がないため、福利厚生を目的として特定の飲食店のみで使用できる「食事券」を支給した。
→ 【非課税】
その食事券が、チケットショップ等に転売できる商品券と同様に使用できるような場合を除いて、一般的にはその食事券の支給は食事の現物支給と同視できると考えられるため、上記3⃣②を満たせば非課税となります。
①在宅勤務
上記3⃣の要件は、オフィス勤務に限った話ではなく、在宅勤務についても変わりありません。
ただし前提として、在宅勤務下であっても適切な労務時間管理が行われており、通常の勤務時間と、残業等の勤務時間外の線引きが適正に行われていることが必要です。
② インボイスとの関係
他の事業者が経営する食堂を社員食堂として従業員等に利用させる契約を締結し、その従業員等の食事代の全部または一部を会社が支払っている場合、給与課税の有無にかかわらず、その金額は課税仕入れに該当し、他の事業者から受領したインボイスの保存により仕入れ税額控除を適用できます。
ただし、従業員等から一部の代金を徴収し、預り金として処理している場合は、会社が実際に負担した金額のみが課税仕入れの対象となるため、代金の全額がインボイスに記載されていても、会社が負担した金額を基礎に仕入税額控除の適用を受けることになります。
国税庁:インボイス制度の「多く寄せられるご質問」より抜粋
いかがでしょうか?食事補助は福利厚生の一環として、また従業員の健康維持にも役立ちます。
非課税とするには所得税だけでなく、消費税や労務関係についても理解が必要です。
要件をよく理解し、正しく導入しましょう。
あすか税理士法人 藤野 絵美