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国際税務2019.10.23 タックスヘイブン対策税制の判例(2)~実態基準&管理支配基準~

適用除外基準

タックスヘイブン対策税制の適用除外要件として以下の基準があります。
1.事業基準
2.実態基準
3.管理支配基準
4.所在地国基準or非関連者基準

これらすべての要件を満たすことでタックスヘイブン対策税制の適用を回避できます。

前回のブログでは「事業基準」が争点となった判例から、事業基準の実務的な判断について解説しました。

今回は「実態基準」並びに「管理支配基準」が争点となった判例を紹介いたします。

 

実態基準・・・(対象子会社の)本店所在地国に、主な事業を行うために必要な事務所、店舗、工場などの固定施設を有していること。

 

管理支配基準・・・特定外国子会社等がその本店所在地国で事業の管理、支配、運営を自ら行っていること。

 

 

東京高裁平成25年5月29日判決

 

【前提】

  • E社はA(個人)により設立されたシンガポール法人

 

  • AはE社の発行済株式の99.98%保有(7,799株/7,800株)

 

  • E社の事業は受注発注という形態による小規模な卸売業

 

  • E社はF社(シンガポールに本社及びレンタルオフィスを設置)のレンタルオフィススペース(机1台分)、G社の倉庫スペースを賃借

 

  • E社の取締役はシンガポール在住のB。専用執務室あり(他社の役員も兼務しているためそのための執務にも使用されていた)

 

  • 経営上の重要な意思決定はB及びC(営業担当者)らにより行われていた

 

  • 課税庁は適用除外要件の充足は納税者に立証責任があると主張

 

  • 課税庁は課税庁にとって、国外に所在する子会社等の実態を把握することは困難であり、納税者は容易と主張

 

  • 課税庁は賃借権等の正当な権原に基づき固定施設を使用しているというためには、使用することができる場所や施設が特定され、排他的かつ独占的にその施設等を継続的に使用することができる権原を有することが必要であり、E社はどの要件も満たさないと主張

 

  • 課税庁はBが多数の会社の役員を兼務していることから、E社のすべての業務を担当することは不可能であり、新規顧客開拓を担当していたともいえず、E社の仕入れ販売はAが日本で行った包括的な意思決定によりCらが行っていたにすぎないため、管理支配基準を満たさない。また、BはE社から役員報酬を得ていないため資金管理権原を有していたとも考え難い。

 

【裁判所の判断】

  • タックスヘイブン対策税制の考え方の根底が、子会社が配当を全く又はわずかしか行わず、所得を留保し税の回避を推認し得るとしても、「別個の法人格の所得を株主の所得に参入する措置そのものが極めて異例といえる」と評されていることから、納税者の適用除外要件の主張立証の必要性に結びつくものではない。

 

  • 国外に所在する子会社等の実態把握については、税金訴訟では、納税者側の事情が主張立証の対象となることが多いことから、課税庁のいう証拠への近さはあまり重視すべきでない

 

  • 租税条約により、情報交換条項が定められており、本件においても情報を収集していることから国外に所在する子会社等の実態を把握することが困難とはいい難い。

 

  • E社の机1台分のスペースが特定されていない、あるいは排他的かつ独占的に当該スペースを使用することがないという事実をうかがわせる証拠はない。

 

  • 役員が複数社の役員を兼務することは禁じられていないため、執務室が物理的な場所として一つであったとしても、その部屋で各社の業務を独立して行っているとみることができる限り、それぞれの執務室としても性格を持つと見るべき。したがって、当該執務室は排他的独占的に使用されていたと認定できる。

 

  • 対象年度において、G倉庫について、請求書よりE社はGを乙仲として利用していることから製品を保管していたと認められる。

 

  • E社の各製品の利益率は大きなバラツキがあり、取引条件については営業担当が直接取引先と交渉を行っており、対象年度においては合計69件の仕入れがあることから多数の販売取引があったことを意味する。また、同時期において多種の不良品・クレームが発生し、営業担当が処理に当たったと推認できることから、当然これを指揮監督する人物を必要としたと考えられ、これはB以外に考えられない。以上から、Bが現地にて営業担当の指揮監督、クレーム対応、売上債券の督促・回収を行っていたと認定できる。

 

  • BがE社の経理や銀行取引等の資金管理、各種支払いの承認をしていた事実もあることからも、多数の会社の役員を兼務しているからといってBがE社のすべての業務を担当することが客観的に不可能とはできず、役員報酬の有無は当該認定に影響を及ぼすものではない。

 

【まとめ】

今回の判例は、1.実態基準における固定施設の考え方が明示されたこと並びに2.管理支配基準における管理支配の具体的な内容、他社の役員を兼務している場合や役員報酬がない場合における一定の判断がなされた有用な判例と考えられます。