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国際税務2021.03.31 【新型コロナウィルス関連】移転価格執行ガイダンス~国税庁HP掲載仮約~

新型コロナウィルス感染症(以下「COVID-19」とします)の影響により、国際税務の世界は実に様々な問題が発生していますが、「移転価格」もその一つです。

 

2020年12月18日、OECDはCOVID-19の世界的感染拡大に関する移転価格執行ガイダンスを発表しました。

Guidance on the transfer pricing implications of the COVID-19 pandemic, OECD Policy Responses to Coronavirus (COVID-19), © OECD 2020,

 

そして、2021年2月24日に国税庁ウェブサイトに当該ガイダンスの仮約が掲載されましたので、今回はその内容をご紹介したいと思います。

 

 

1.総論


 

このガイダンスには『コロナ禍において移転価格はどのように考えるのか?』が書かれていますが、明確に方向性を示している部分もありますが、大部分は想像通り(?)具体性には少し乏しい注意喚起をする内容になっています。

 

移転価格については「独立企業原則」が有効に機能しており、それはコロナ禍においても同様です。

しかし、コロナ禍により前例の無い経済状況及び各国政府の対応により、独立起業原則をどのように適用すべきかという実務的な課題が生じているのが事実です。

 

ガイダンスでは特に下記四つの優先的課題を取り上げています。

・比較可能性分析

・損失及びCOVID-19特有の費用の配分

・政府支援プログラム(補助金等)

・APA(事前確認制度 Advance Pricing Agreement)

 

以下、それぞれのテーマに沿ってガイダンス内容を確認してみましょう。

 

 

2.比較可能性分析


 

(1)実務的アプローチと裏付けとなる情報源

関連者取引の適正価格を検討する際に、入手した第三者間の過去取引データを用いていた場合、COVID-19によりその過去データの信頼性が低下する恐れがああります。

その場合は、差異調整などの実務的なアプローチの検討が必要になる場合があります。

ガイダンスでは、COVID-19による影響を推定することにより、比較可能性分析の裏付けとなる情報源として下記を例示しています。

・COVID-19影響下における売上高の変化の状況

・設備稼働率分析

・COVID-19追加費用分析

・政府支援を受けた場合の定量化、支援種類及び会計処理の特定

 

また、予算と実績数値の乖離をもってCOVID-19の影響を見積り、その影響部分を関連者間でリスク負担を加味しながら分配することも実務的なアプローチ例だとされています。

 

そして、第三者間の同時期情報を入手することが実質的に出来ないことについては、「合理的かつ適切なデューデリジェンスの実施と、現在入手可能な最善の市場情報の証拠を文書化するべきだ」としています。

つまり、第三者情報をリアルタイムで取ることは困難だろうけど、出来うる限り分析しその証拠となる書類等を文書化しておこう、ということです。

 

(2)その他のアプローチ

事後に入手可能な情報(つまりCOVID-19影響を加味した情報)に基づいた税務申告等の修正、価格調整メカニズムをの導入、複数の移転価格算定方法を適用等も有用だよねと綴っています。

 

なお、COVID-19による影響を鑑みるため、リーマンショック時のデータを利用することは重大な懸念を生じさせる恐れがあるとされています。

そして比較可能性分析を行った結果、比較対象として赤字の会社の採用が適切となることもある、と結んでいます。

 

 

3.損失及び新型コロナウィルス感染症特有の費用の配分


 

(1)COVID-19関連の特別損失の負担割合

COVID-19により生じた例外的かつ非経常的な損失を誰が負担するのか、ですが、これは「リスク分析」による事業上のリスク配分に応じて配分されるべきだとされています。

 

コロナ禍では無い状態においても、移転価格を検討する場合「リスク分析」は重要なファクターの一つで有り、そのリスク分析に基づいてCOVID-19特別損失の負担を考えましょう、ということです。

「COVID-19前後でリスクに変動が生じた」と主張する場合には、変動が生じたことを裏付ける関連証拠の取得、文書化が必要となります。

 

(2)COVID-19に伴う契約条件変更は可能か

例えば販売会社Xが関連企業Yから製品を購入し、第三者Zへ販売していたとして、COVID-19の影響により第三者Zが当初約定の30日以内に支払が出来ない状況を鑑みて、販売会社Xは関連企業Yに対して仕入代金支払条件の再交渉を試みたとします。

この場合、XとZとの独立企業間取引による契約変更を合理的な証拠として、XとYとの契約変更が可能となる可能性があります(文書化は必要)。

 

(3)テレワーク費用は特別損失なのか?

COVID-19に伴い、テレワーク費用やリモートワーク施設費用が発生した場合、必ずしも特別損失となるわけでは無いですよね、とガイダンスには記載があります。

すなわちCOVID-19を契機に在宅勤務が一般的になれば、これらの費用は恒常的な費用と考えられるため、上記(1)の特別損失とは異なる視点から、誰が負担すべきかを検討する必要が出てきます。

 

 

4.政府支援プログラム(補助金等)


 

(1)政府支援プログラムとは

政府支援とは、交付金、補助金、返済免除条件融資等のような直接的又は間接的な経済的利益を提供する金銭的又は非金銭的プログラムを言います。

これらのプログラムの利用可能性、内容、期間及び利用率は移転価格に影響する可能性があります。

 

ただし、比較対象候補が受け取った政府支援の性質等を確定することは用意ではありません。

従って、政府支援の受取が、関連者間取引に対して重大な影響を及ぼす可能性が小さい状況では、政府支援の具体的な特徴の詳細な分析は必要とされないだろう、とガイダンスに記されています。

 

(2)政府支援の受取が関連者間取引の価格に影響するか

注意深い比較可能性分析を実施しないで、政府支援の単なる受取が関連者間取引の価格に影響する、と結論づけることは独立企業原則に反するとされています。

 

例えば、取引単位営業利益法(TNMM法)により移転価格算定を行っている場合、詳細な分析を行わずに特定の機械的なアプローチ(例えば、政府支援による費用削減部分をマークアップ時に費用から控除する、政府支援を特別利益として認識する等)を採用することの無いよう、留意する必要があります。

 

 

5.APA(事前確認制度 Advance Pricing Agreement)


 

(1)既存APAへの影響

原則として、APAの取消又は修正に繋がる状況(重要な前提条件への抵触等)が発生しない限り、既存のAPA及びその条件は尊重、維持、指示されるべき(つまりCOVID-19による影響下にあっても既存APAに拘束される)とされています。

 

COVID-19による変化が「重要な前提条件への抵触」にあたるかどうかはケースバイケースで分析されるべきとしつつ、期間中の単なる企業業績の変化は基本的に「重要な前提条件への抵触」には該当しないと記されています。

 

仮に「重要な前提条件への抵触」に該当すると判断された場合は下記三通りの結末に分かれることとなる。

・改定:改定前後で異なる条件が適用されるが、提案された全期間においてAPA便益享受可能

・取消:APAは取消の日まで有効なものとして取り扱う

・撤回:遡及してAPA締結が無かったものとして取り扱う

 

(2)交渉中のAPA

申請開始を躊躇する可能性があるが、将来の税務紛争を防止する上でAPAの果たす役割を認識し、上手に活用しようとされています。

 

具体的には、次のような対応策が例示されています。

・COVID-19の影響を受ける期間の短期間APAと、COVID-19後の期間を対象とする別個のAPA合意を取り付ける

・全期間にわたるAPAを締結し、COVID-19の影響を毎年報告した上で適切な場合には遡及的にAPAを改定する条件を付ける

 

 

如何でしたでしょうか。

日本語訳が分かりづらい部分が多いのですが、雰囲気を掴むために少しでも有効な情報になっていれば幸いです。

 

 

あすか税理士法人

【国際税務担当】高田和俊

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