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国際税務2024.06.05 【国際税務】非居住者(海外居住)が日本の株式(事業譲渡類似株式)を譲渡した場合の取扱い

日本の会社のオーナーが株式を保有したまま海外へ出国し非居住者となるといった相談を多く頂きます。

出国時課税(国外転出時課税)の対象となるかどうかの検討は必須ですが、この課税を受けない方の多くが非居住者となってから株式を売却した場合は日本で課税されないと考えています。

今回は非居住者となった後、自社の株式を譲渡した場合に課税されるか否かを解説したいと思います。

 

1.国内法の取扱い


 

日本の所得税法上、非居住者については次の株式譲渡が国内源泉所得に該当すると規定されています。

 

1)買集めによる株式等の譲渡による所得
同一銘柄の内国法人の株式等の買集めをし、その所有者である地位を利用して、その株式等をその内国法人もしくはその特殊関係者に対し、またはこれらの者もしくはその依頼する者のあっせんにより譲渡をすることによる所得

 

2)事業譲渡類似の株式等の譲渡による所得
内国法人の特殊関係株主等である非居住者が行うその内国法人の一定の株式等の譲渡による所得

一定の株式とは次のものをいいます
譲渡年以前3年以内のいずれかの時において、その内国法人の特殊関係株主等がその内国法人の発行済株式または出資の総数または総額の25パーセント以上に相当する数または金額の株式または出資を所有していたこと。

 

譲渡年において、その非居住者を含むその内国法人の特殊関係株主等が最初にその内国法人の株式または出資の譲渡をする直前のその内国法人の発行済株式または出資の総数または総額の5パーセント以上に相当する数または金額の株式または出資の譲渡をしたこと。

 

3)税制適格ストックオプションの権利行使により取得した特定株式等の譲渡による所得

 

4)不動産関連法人の一定の株式の譲渡による所得

 

5)日本に滞在する間に行う内国法人の株式等の譲渡による所得

 

6)日本国内にあるゴルフ場の株式形態のゴルフ会員権の譲渡による所得

 

 

2.租税条約の取扱い


 

上記1に該当しても各国との租税条約上、日本では課税されないことがあります。

上記1、2)の事業譲渡類似株式についての各国の租税条約をみてみます。

 

1)日本において課税が発生する租税条約
日シンガポール租税条約13条において、「他方の締約国の居住者である法人の株式について、譲渡者が保有する株式(特殊関係者保有分を含む)の数が25%以上であり、かつ譲渡した株式数が5%以上の場合は、他方の締約国においても課税ができる」と規定されています。

つまり、日本非居住者が日本法人の事業譲渡類似株式を譲渡した場合、日本でも課税がされることとなります。

 

同様の事業譲渡類似株式の規定がある国は以下の通りです。
アラブ首長国連邦、イギリス、オーストラリア、オランダ、韓国、サウジアラビア、フランス、ベトナム、メキシコ

 

事業譲渡類似株式の規定はないが、保有割合に関係なく日本で課税できる(源泉地国課税)こととなっている租税条約は以下の通りです。
インド、マレーシア、カナダ、タイ、中国、バングラデシュ

 

2)日本において課税が発生しない租税条約
日米租税条約13条において、事業譲渡類似株式を含む下記以外の資産の譲渡については居住地国でのみ課税できると規定されています。

つまり、事業譲渡類似株式については日本で課税されず、居住する国でのみ課税されて完結します。

なお、不動産、不動産類似株式、金融機関株式、PE帰属資産、船舶・航空機、コンテナーについては本租税条約上で居住地国課税か源泉地国課税かが規定されています。

 

同様の規定により居住地国でのみ課税されることとなっている主な国は以下の通りです。
イタリア、インドネシア、ジョージア、スイス、スペイン、スウェーデン、ドイツ、ニュージーランド、フィリピン、ブラジル、ポルトガル、香港、ルーマニア、ロシア、台湾

 

 

いかがでしょうか。
事業譲渡類似株式の譲渡については居住地国によって取扱がことなります。
譲渡を行う前に租税条約を確認するようにしてください。

 

 

あすか税理士法人

【国際税務担当】街 有帆

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