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国際税務2024.05.08 【国際相続】海外居住と小規模宅地の特例

弊社のクライアントでも外国人(日本国籍以外)の方と結婚されているケースが増えています。

配偶者(外国人)が亡くなった時に海外に居住していたとしても、死亡日以前10年以内に日本に住所があった場合は国外の財産についても日本の相続税が課税されます。

 

では海外に所有する自宅については小規模宅地の特例を受けることができるのでしょうか。

 

1.海外の自宅は小規模宅地の特例の対象か


 

小規模宅地の特例は被相続人(亡くなった人)の居住用や事業用に使用していた土地を相続人が相続(遺贈含む)した場合に土地の相続税評価額が50%~80%に減額される制度です。

 

租税特別措置法69条の4において、「個人が相続又は遺贈により取得した財産のうちに、当該相続の開始の直前において、当該相続若しくは遺贈に係る被相続人又は当該被相続人と生計を一にしていた当該被相続人の親族の事業の用又は居住の用に供されていた宅地等で~以下省略~」と定められています。

この規定上、国内に所在するものに限るといった要件がないことから国外の不動産も対象になります。

 

例えば配偶者が被相続人が居住していた海外の宅地を相続した場合、土地の総面積のうち330㎡以下の部分については宅地の相続税評価額は80%減額することが可能となります。

なお、配偶者は居住地、国籍、申告期限までの継続保有要件がありませんので、日本、海外のどこに居住していても適用が可能です。

 

2.海外居住の相続人(家なき子)が国内居住の被相続人の自宅を相続した場合


 

相続のタイミングで被相続人(親)と同居していない海外居住の親族(子)が日本の自宅を相続した場合、小規模宅地の特例の適用はできるのでしょうか。

 

結論として、次の要件をすべて満たせば海外居住であっても適用可能です。

①被相続人に配偶者がいないこと

 

②相続開始の直前に被相続人と同居していた親族である相続人がいないこと

 

③該当の宅地を取得する親族が相続前3年以内に自身の3親等以内の親族やその特殊関係人の所有する日本国内の家屋に居住していないこと

 

④該当の宅地を取得する親族が相続する宅地を所有したことがないこと(過去に保有→被相続人に所有権移転→相続というケースはアウトです)

 

⑤相続税の申告期限まで継続保有すること

 

⑥無制限納税義務者又は日本国籍のある非居住制限納税義務者(日本国籍があれば要件クリアです)

 

 

例えば、子ども(日本人)の海外在住中に親が亡くなり子が自宅を相続するような場合、親の配偶者がすでに亡くなっている・子は海外の賃貸物件に居住などの条件が揃えば小規模宅地の特例が受けられます。

なお、保有継続要件はありますが、国外から帰国し居住する必要がない点もポイントです。

 

 

3.諸外国との相続税条約


 

国際間の二重課税の排除について所得税・法人税については150カ国以上の国と租税条約を締結しています。
一方で相続税・贈与税については日・米相続税条約のみとなっています。

 

日米相続税条約の詳細は次回以降で解説しますが、租税条約と同様国内法に優先して適用されます。
相続人が日本居住、被相続人が米国居住といったケースで本条約が有効となります。
また、対象税目は日本は相続税及び贈与税、米国は連邦遺産税及び連邦贈与税です。州税については適用されない点に注意してください。

 

いかがでしょうか。
弊社に移住に関する相談、外国人配偶者に関する相談が増加傾向にあることから今後国際相続についても増加していくことが予想されます。
国外に財産がある、海外に居住している、配偶者や子どもが外国籍であるといった方は早めに専門家に相談することをお勧めいたします。

 

 

 

 

 

 

あすか税理士法人

【国際税務担当】街 有帆

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