


海外の子会社や関連会社との取引価格に適用される「移転価格税制」や軽課税国に存在する子会社の利益を合算課税される「タックスヘイブン対策税制」。 これらの税制の適用対象となる「国外関連者」に該当するかどうかの判定にあたっては、資本関係(持株割合)だけでなく、「実質支配関係」があるかどうかも重要な判断基準となります。
では、具体的にどのようなケースがこの「実質支配関係」に該当するのでしょうか。 今回は、形式的な持株割合だけでは判断できない、実質的な支配関係の要件について解説します。
移転価格税制、タックスヘイブン対策税制の対象となる「国外関連者」とは、法人と「特殊の関係」にある外国法人を指します。
一般的には、日本居住者(内国法人を含む)と以下のいずれかの資本関係がある場合が該当します。
1. 直接・間接の持株関係:一方が他方の発行済株式等の50%以上を保有している関係
2. 同一の者による支配:同一の者によって、それぞれの発行済株式等の50%以上を保有されている関係
しかし、持株割合が50%未満であっても、法人の事業の方針の全部または一部につき実質的に決定できる関係にある場合、「実質支配関係」として特殊の関係に含まれることになります。

どのような場合に「実質支配関係」があるとみなされるのでしょうか。
具体的には、以下のいずれかの事実が存在し、一方の法人が他方の法人の「事業の方針の全部または一部につき実質的に決定できる関係」にある場合が該当します。
1)人事による支配
• 役員の2分の1以上、または代表権を有する役員が、他方の法人の役員もしくは使用人を兼務している(または過去にそうであった)場合。
• 日本本社から社長や主要な役員を送り込んでいるケースなどが該当します。
2)事業活動による支配
• その法人が、事業活動の相当部分を他方の法人との取引に依存して行っている場合。
• また、事業活動の基本となる著作権、特許権、技術ノウハウ等を他方の法人から提供され、それに依存して事業を行っている場合も含まれます。
3)資金調達による支配
• その法人が、事業活動に必要とされる資金の相当部分を、他方の法人からの借入れ、または他方の法人の保証を受けて調達している場合。
これらの要件は、移転価格税制における「特殊の関係」の判定と同様の視点であり、資本関係が希薄でも、人・物・金・技術の面で依存していれば「実質的に支配している」とみなされます。
移転価格税制においては、外国関係会社とみなされた場合は適正価格を算定し、適正価格との差異が課税対象となります。
タックスヘイブン対策税制においては通常は持分に応じた課税となりますが、実質支配関係のみなされた場合には以下の金額が課税対象となるとされています。
その内国法人が直接及び間接に有するその特定外国関係会社又は対象外国関係会社の株式等の数又は金額につきその 請求権の内容を勘案し又はその内国法人とその特定外国関係会社又は対象外国関係会社との間の実質支配関係の状況を勘案して計算した金額 に相当する金額
これは、議決権や配当請求権の内容、そして「実質支配関係」の状況を加味して、実質的にその内国法人に帰属すべき金額を算出することを意味しています。
以上、持株割合が50%未満(例えば40%など)であっても、役員の構成や、技術・資金の依存度によっては「実質支配関係」ありとみなされ、課税の対象となる可能性があります。
実務においては、資本関係がない、あるいは薄いからといって安易に「関連者ではない」と判断せず、取引の実態や支配の状況(人事、技術、資金)を慎重に確認する必要があります。
あすか税理士法人
【国際税務担当】街 有帆

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