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会計・ファイナンス・監査2025.10.01 新しいリース会計基準について(3)

既にご承知の方も多いと思いますが、2024年9月、企業会計基準委員会(ASBJ)は、「リースに関する会計基準」(企業会計基準第34号、以下「基準」)及び「リースに関する会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第33号、以下「適用指針」)を公表しました。今回は、リース契約後の2つの論点について確認したいと思います。

※新しいリース基準の概要については、こちらもご覧ください。

 

 

1.リースの契約条件が変更された場合


 

リースの契約条件の変更とは、リースの当初の契約条件の一部ではなかったリースの範囲またはリースの対価の変更をいい、例えば、原資産を追加もしくは解約する場合や契約期間の延長もしくは短縮を行う場合が考えられます【基準.24】。

 

このような場合、原則として変更前のリースとは独立したリースとしての会計処理を行うリース負債の計上額の見直しを行うこととされています【基準.39】。

 

 

(1)変更前のリースとは独立したリースとしての会計処理を行う場合

 

リースの契約条件の変更が、以下のいずれも満たす場合には、その変更は変更前のリースとは独立したリースとしての会計処理を行うこととなります【適用指針.44】。

 

・原資産を追加することにより原資産を使用する権利が追加され、リースの範囲が拡大する

 

・借手のリース料が「範囲が拡大した部分に対する独立価格+特定の契約状況に基づく調整額」だけ増額する

 

 

このようなケースでは、独立したリースのリース開始日に、リースの契約条件の変更の内容に基づくリース負債を計上し、当該リース負債にリース開始日までに支払った借手のリース料、付随費用等を加減した額により使用権資産を計上することとなります。

 

 

(2)リース負債の計上額を見直す場合

 

独立したリースとしての会計処理が行われない場合は、リース負債の計上額の見直しを行うこととなります【適用指針.45】。

 

リース債務については、リースの契約条件の変更の発効日に、変更後の条件を反映した借手のリース期間を決定し、変更後の条件を反映した借手のリース料の現在価値まで修正します。

 

また、リース負債の見直しに対応して使用権資産についても以下の会計処理が必要となります。

 

リースの範囲が縮小する場合

リースの解約を反映するように使用権資産を減額し、リース負債の減少額と使用権資産の減少額との差額は損益処理する

 

リースの範囲が縮小しない場合

リース負債の修正額に相当する金額を使用権資産に加減する(リース負債と使用権資産が同額加減される)

 

 

 

 

2.リースの契約条件の変更を伴わないリース負債の見直し


 

リースの契約条件は変更されていないものの、借手のリース期間に変更がある場合、または、借手のリース期間に変更はないが借手のリース料に変更がある場合には、該当する事象が発生した日に、リース負債について当該事象の内容を反映した借手のリース料の現在価値まで修正し、当該リース負債の修正額に相当する金額を使用権資産に加減することとされています【基準.40、適用指針.46】。

 

 

(1)借手のリース期間に変更がある場合

 

借手の統制下にあり、かつ、延長オプションを行使することまたは解約オプションを行使しないことが合理的に確実かどうかの意思決定に影響を与えるような重要な事象または重要な状況が生じた場合には、延長オプションを行使することまたは解約オプションを行使しないことが合理的に確実かどうかについて見直し、 借手のリース期間を変更し、リース負債の計上額の見直しを行うことが必要とされています【基準.41】。

 

この重要な事象または重要の状況の例としては、以下のものが挙げられています【基準.BC51】。

 

・リース開始日に予想されていなかった大幅な賃借設備の改良で、延長オプション、解約オプションまたは購入オプションが行使可能となる時点で借手が重大な経済的利益を有すると見込まれるもの

 

・リース開始日に予想されていなかった原資産の大幅な改変

 

・過去に決定した借手のリース期間の終了後の期間に係る原資産のサブリースの契約締結

 

・延長オプションを行使することまたは解約オプションを行使しないことに直接関連する借手の事業上の決定(原資産と組み合わせて使用する資産のリースの延長の決定、原資産の代替となる資産の処分の決定、使用権資産を利用している事業単位の処分の決定)

 

 

また、借手は、リースの契約条件の変更が生じていない場合で、(過去に借手のリース期間の決定に含めていなかった)延長オプションの行使等により、借手の解約不能期間に変更が生じた結果、借手のリース期間を変更するときには、リース負債の計上額の見直しを行うことが必要とされています【基準.42及びBC52】。

 

 

(2)借手のリース期間に変更はないが借手のリース料に変更がある場合

 

リースの契約条件や借手のリース期間に変更がなく、借手のリース料に変更がある場合の例として、以下のようなケースが挙げられています【適用指針.47】。

 

・原資産を購入するオプションの行使についての判定に変更がある場合

 

・残価保証に基づいて支払うと見込まれる金額に変更がある場合

 

・指数またはレートに応じて決まる借手の変動リース料に変動がある場合

 

 

指数またはレートに応じて決まる借手の変動リース料については、指数またはレートが(実際に)変動し、そのことにより、今後支払うリース料に変動が生じたときにのみ、借手は、残りの借手のリース期間にわたり、変動後の指数またはレートに基づきリース料及びリース負債を修正し、その修正額に相当する金額を使用権資産に加減することとされています【適用指針.48】。

 

一方、適用指針.26に基づき、指数またはレートの将来の変動を見積り、リース料及びリース負債を算定している場合は、決算日ごとに参照する指数またはレートの将来の変動を見積り、見積もられた指数またはレートに基づきリース料及びリース負債を修正し、その修正額に相当する金額を使用権資産に加減する必要があります【適用指針.49】。

 

 

以上のように、リース開始日後も契約条件やリース期間・リース料が変更されていないかどうか留意しておく必要がありますね。

 

(次回につづく)

 

 

 

あすかコンサルティング株式会社

【会計コンサルティング担当】津田 佳典

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