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会計制度2018.05.28 収益認識に関する会計基準等の概要④

8.委託販売契約

商品等を最終顧客に販売するために、他の当事者(販売業者等)に引き渡す場合、当該他の当事者が商品等の支配を獲得しているかどうかを判定する必要があります。支配を獲得していないと判断される場合(委託販売契約の場合)には、当該他の当事者に商品等を引き渡した時点では収益を認識しないこととされています。

その契約が委託販売契約であることを示す指標として、以下の3点が例示されています。

 

・販売業者等が最終顧客に販売するまで、または、一定の期間、企業が商品等を支配している。

・企業がその商品等の返還を要求することができること、または、第三者にその商品等を販売することができること

・販売業者等が商品等の対価を支払う無条件の義務を有していないこと

 

9.請求済未出荷契約

企業が商品等について顧客に対価を請求しているが、その商品等の物理的占有を保持する契約のことを請求済未出荷契約といいます。これまでの実務では、「預り売上」と呼ばれていた取引のことですね。

このような取引において、企業がいつ履行義務を充足したか(=収益をいつ認識するか)を判断するにあたっては、顧客がいつ商品等の支配を獲得したかを判断する必要があり、実務指針では以下の4つの要件を満たした時点とされています。

 

・請求済未出荷契約を締結する合理的な理由が存在する。

・その商品等が顧客に属するものとして区分して識別されている。

・その商品等を顧客に移転する物理的な準備が整っている。

・その商品等を使用する能力、または、他の顧客に振り向ける能力を企業が有していない。

 

 

10.顧客による検収

収益認識に関する会計基準が導入されることによって、実務担当の皆さんが一番気にされているテーマではないでしょうか。実務指針では、以下のような議論の整理が行われています。

顧客による財・サービスの検収は、顧客が財・サービスの支配を獲得したことを示す可能性があり、顧客の検収前に収益が認識される場合には、他の残存履行義務があるかどうかを判定する必要がある。

契約において合意された仕様に従っていることにより、財・サービスに対する支配が顧客に移転されたことが客観的に判断できる場合には、顧客の検収は形式的なものであり、支配の時点に関する判断に影響を与えない。

逆に、顧客に移転する財・サービスが契約において合意された仕様に従っていると客観的に判断できない場合には、顧客の検収が完了するまで、顧客はその財・サービスに対する支配を獲得しない。

商品等を試用目的で顧客に引き渡し、試用期間が終了するまで顧客が対価の支払を約束していない場合は、顧客がその商品等を検収するか、試用期間が終了するまでは、その商品等に対する支配は顧客に移転しない。

すべての取引において検収が収益認識に必須の要件とはされていないことが分かりますが、「財・サービスが契約において合意された仕様に従っていることが客観的に判断」できるかどうかという点の議論の整理が難しそうな気がします。

 

 

11.返品権付きの販売

返品権付きの販売とは、顧客に商品等の支配を移転するとともに、その商品等を返品して次のいずれかを受け取る権利を顧客に付与することを指します。

 

・顧客が支払った全部または一部の対価の返金

・顧客が企業に対して負う(予定のものも含む)金額に適用できる値引

・別の商品等への交換

 

返品権付きで商品等を販売した場合には、以下の会計処理を行う必要があります。

 

 

①企業が権利を得ると見込まれる対価の額(返品されると見込まれる対価の額を除く)で収益を認識する。

②返品されると見込まれる商品等については収益を認識せず、その対価の額で返金負債を認識する。

③返金負債の決済時に顧客から商品等を回収する権利を資産として認識する。

 

販売後、決算日ごとに②の返金負債及び③の資産の金額は見直す必要があります。

また、顧客が欠陥のある商品等を正常品と交換するために返品することができる契約については、「財またはサービスに対する保証」の取扱いに従って、会計処理を行う必要があります。