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会計制度2018.04.23 収益認識に関する会計基準等の概要②

企業会計基準委員会は、収益認識に関する会計基準等を公表し、平成33年4月1日以降開始する事業年度(平成34年3月期)から適用されることとなりました。前回は、この基準の大きな流れとなる5つのステップでの収益認識について触れましたが、今回と次回にわたって、適用指針の中で明示されている特定の状況・取引における取扱いについてまとめてみたいと思います。

 

1.財・サービスに対する保証

約束した財・サービスに対する保証が合意された仕様に従っているという保証のみである場合には、(製品保証)引当金として処理することとされています。

一方で、合意された仕様に従っている保証に加えて顧客にサービスを提供する保証(保証サービス)を含む場合、この保証サービスは履行義務に該当するものとされています。

また、合意された仕様に従っている保証と保証サービスを区分して合理的に処理できない場合は、両者を単一の履行義務として取り扱うこととされています。

 

2.本人と代理人の区分

本人か代理人かの問題は、認識する収益(売上高)の金額に関わる問題であるため、売上高を重視する企業(業種)においては、非常に重要な問題となる可能性があります。

顧客との約束が財・サービスを企業自らが提供する履行義務であると判断される(企業が本人に該当する)場合には、企業が権利を得ると見込む対価の総額を収益として認識します。

一方、顧客との約束が財・サービスを他の当事者によって提供されるように企業が手配する履行義務であると判断される(企業が代理人に該当する)場合には、企業が権利を得ると見込む報酬(手数料)の金額を収益として認識します。

実務指針第42項によると、企業が本人であるのか代理人であるのかの判断は以下の手順で行うこととされています。

 

①顧客に提供する財・サービスを識別する(顧客に提供する財・サービスが、他の当事者が提供する財・サービスに対する権利である可能性があるため)

②財・サービスが顧客に提供される前に、当該財・サービスを企業が支配しているかどうかを判断する

 

3.追加の財・サービスを取得するオプションの付与

既存の契約に加えて追加の財・サービスを取得するオプションを顧客に付与する場合、当該オプションが既存の契約を締結しなければ受け取ることができないような重要な権利を顧客に提供する場合にのみ、当該オプションから履行義務が生じることとされています。

この重要な権利を提供する場合の例示として、「顧客が属する地域や市場における通常の値引きの範囲を超える値引きを顧客に提供する場合」が挙げられています。

重要な権利を提供する(履行義務が生じる)場合は、通常受けられる値引の金額や当該オプションが行使される可能性を考慮して、独立販売価格を見積り、取引価格を配分する必要があります。そして、将来財・サービスが移転する時点あるいは当該オプションが消滅する時点で収益を認識することとなります。

 

4.顧客により行使されない権利(非行使部分)

将来財・サービスを移転する履行義務について、移転前に顧客から支払を受けた場合には、その金額で「契約負債」を認識することとなります。

しかし、前払を行った顧客のすべてが権利を行使する訳ではないため、権利行使されない部分は「契約負債」として残り続けることとなります。この残った「契約負債」の取扱いをどうするかという論点です。

企業が将来において権利を得ると見込む場合(非行使部分の金額を合理的に見込める場合?)には、顧客の権利行使のパターンと比例的に非行使部分を収益認識することになります。

一方、企業が将来において権利を得ると見込まない場合(非行使部分の金額を合理的に見込めない場合?)には、顧客が残りの権利を行使する可能性が極めて低くなった時点で収益を認識することとなります。

 

<次回につづく>